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皇族の責務



お父様に呼ばれて応接室に行く。

呼びに来たお父様の傍仕えの様子がおかしい。

なんと表現すればいいのか...重苦しい、というか悲しみを堪えている、というか...。

なんだか嫌な予感がする。

これは悪い話が待っていそうだ。


傍仕えがノックして「皇女様をお連れしました」と言うと中からドアが開けられる。

お父様の向かいに座るように促される。

お茶も出されるが、やはり空気が重い。

一体、何を言われるのだろう。

婚約者を決められた、とか? にしても重過ぎる。


やがて、お父様が口を開いた。

が、溜息をつくと、また口を閉じてしまった。

なんなんだ。


とうとう、焦れて、わたしから聞くことにした。

「お父様。大丈夫ですから仰ってください」

伏せていた目を上げて、わたしを見るお父様。

びっくりした。こんな顔、初めて見る。

哀しそうな切なそうな。もしかしたら今にも泣くのではないかというような...。


「そうだな...。アニス」

「はい」

「皇女としてダイナチェイン王国の王太子との婚姻を命ずる」

.....は?

なんだって?

お父様を見つめたまま思考停止してしまう。

婚姻?わたしがダイナチェイン王国の王太子と?

ダイナチェイン王国の王太子というのは、あの悪名高い影とも言われている人のこと?

命ずる。

皇帝の命令だ。是、しか返答の選択肢はない。

「かしこまりました」

わたしは座ったまま頭を下げた。

顔を上げるとお父様の泣きそうな顔が横を向く。

「許せ」

わたしは雰囲気を変えるべく、にっこり微笑んで明るい声で言った。

「とりあえず経緯をお話いただけますか?」




要するに、こういうことだ。

陛下はレスター兄様と共にダイナチェイン王国と、それに関係する国と水面下で交渉しつつ調査していたらしい。

ダイナチェイン王国はアイストリア皇国の隣国にあたるツァオラン国の更に隣の国と交渉に入ったかもしれない、とエイダンからの報告書で知ったが、ダイナチェイン王国の属国となることで戦争を回避、王族もダイナチェイン王国に従うことで国王の引退、第二皇子、第三皇子のダイナチェイン王国への留学のみで済んだようだ。

国力に差があり過ぎる。

これがかの国の決断だった。

その報告が陛下のところに入るより早く、陛下のところにダイナチェイン王国より密使がきたらしい。

それがダイナチェイン王国王太子殿下とアイストリア皇国アニス皇女殿下との婚姻による同盟だった。

マジかー。

そして、これが受け入れられないときはダイナチェイン王国とは相容れないものと受け取る、と。

つまり戦争だな。

同盟国となるべく話し合い、どころか属国にもならない。

国の滅亡だ。

こりゃ王太子との婚姻を飲むしかない。

ダイナチェイン王国とアイストリア皇国では国力に差があり過ぎる。

ダイナチェイン王国は大きくなり過ぎた。

制御できているのか他人事ながら心配になる。

いや、王太子と結婚するのだから他人事ではなくなるのか。


「はぁ。エイダン。今日の、この後の予定はなんだったかしら。いえ、何でもいいけどキャンセルできるものはキャンセルしてくれない?」

「...かしこまりました。全てキャンセルいたします」

「ありがとう。じゃぁ部屋に戻るわ」

別に部屋に戻ったところで何をするでもないのだが、さすがに何も考えられなかったし周りの空気が重すぎて1人になりたかった。

ガードのガイも傍仕えの女性たちも全員、部屋を出てもらった。

ソファに足も上げて横になる。

お行儀が悪いが、どうせ誰もいない。

ぼーっと天井を見つめる。

フェルナンドとの婚約もユーリとの婚約も白紙になった。

まだ2人には知らされていないだろうけれど決定事項だ。

成人したことでフェルナンドとの結婚式は日取りの候補日まで決まってきていたのに。

ドレスは前世の感覚から絶対、白。これは譲れない、と言ったらフェルナンドは自分も合わせて白にする、アニス様は絶対綺麗だろうから隣に立つ自分は引き立て役になります、なんて言っていた。

ユーリとの結婚式もドレスは白にするから、と言うとユーリも、それなら自分も白にする、白に銀と緑を入れることにする、て。

お父様が皇族籍を抜けないでほしい、と言うので身分はそのまま、住まいを離宮に移すことにして改装工事も始まっている。

これもナシだ。

わたしが、そこで暮らすことはなくなったのだから。


涙が出てきた。

フェルナンドとの結婚も意外と楽しみにしてたんだ、わたし。

3人で離宮に暮らすことも気に入っていたんだ。

こんなに胸が苦しくなるなんて。

「う...くっ。.....ふ...」

堪えようとしても嗚咽を止められない。

でも、どうしようもない。

この話を蹴っても、いいことなんてない。

戦争になれば負けるだろう。

そうしたら皇族であるわたしは死ぬか戦争捕虜となるか、どちらかだ。

捕虜の扱いで王太子の愛人になるくらいなら同盟国からの正式な妻の方がいい。

でも、怖い。

会ったこともない、見たことすらない、悪い噂しか聞かない王太子。

この世界基準のブサイクだから、きっとイケメンなんだろうけど中身が悪ければ差し引きマイナスだ。

暴力的な人だったら?傲慢な人だったら?サディストだったら?変態だったら?

ネガティブなことは、いくらでも沸いて出る。

涙も後から後から出る。


今日だけ。

今日だけ、ただの女の子として哀しませてほしい。

明日からは皇女として考えを切り替えるから。


ユーリ。

会いたい。けど会いたくない。

でも無性に抱きしめてほしい。

ユーリ、フェルナンド、ごめんね。

振り回すだけになっちゃった。


ごめんね...。




御安心ください。キーワードに「ハッピーエンド」とありますよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] いつも楽しく読ませていただいています! 今回の話は結構心臓にきました。笑 最後の一言が無ければもう絶望でした、、、 これからどうなるのか楽しみです! これからも更新頑張ってください!応援して…
2021/04/19 11:03 退会済み
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