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なん...だと!?



ごきげんよう、アニス・ノア・アイスター 5歳です。


昨日は残念だったが、今日は近衛騎士団の見学だ。

近衛は精鋭中の精鋭だ。 これは期待していいだろう。

顔がニヤニヤしてしまうが、なんとか堪える。


が、朝食のときに双子の兄に「今日は御機嫌だね、何かあったの?」と聞かれてしまった。

わたしの表情筋よ、仕事しろ。

「特に何もありません、いつも通りの朝です。しいて言うならお兄様たちと朝食を一緒にいただけて嬉しいです」

わたしは、そう言って、にこっとしておいた。

皇族は子供も忙しい。勉強があるし仕事もある。

だから朝食に両陛下、兄3人、わたし の全員が揃うとか、なかなかない。

双子の兄、ライム・ノア・アイスター(次男) と ジルリアン・ノア・アイスター(三男) は15歳

ちなみに長男はレスター・ノア・アイスター 17歳 だ。

3人は全員第一女性陛下の子供で、わたしとは腹違いの兄たちだ。

でも、皆、わたしに甘々だ。我儘になっちゃうぞ。ならないように気を付けるけど。

わたしが5歳熱を発症したときは城中が暗かったらしい。

だから、わたしのこんな言葉に2人ともデレデレだ。チョロイ、チョロ過ぎる。

だが、2人して仕事を何とかして、わたしと一緒に過ごそうと言い始めて焦る。やめてくれ、騎士たちを見てニヤニヤしてるところなんて恥ずかしくて絶対来てほしくない。

仕事に一生懸命なお兄様が素敵だから見たい♪などと言って、なんとかかわす。お陰で兄たちの執務室に後から行くことになってしまったが、まぁいい。それよりも近衛騎士だ。



さて、近衛騎士団の見学に行きますか。

でへへへへ。






撃沈。




なんでだよう。近衛には醜い者はなれないなんて聞いてない。


近衛は昨日の陽光騎士団よりブサイクと能面度が高かった。

さすがに全員、腕が立つんだろうな、というのが素人目にもわかる騎士たちだったが目が楽しくない。

昨日と同じで団長が傍で騎士たちの特徴なんかを教えてくれたが団長だけは団服を着ていて2割増しイケていた。能面だったけど。

(陽光騎士団の団長は、ぼちゃっとしていたせいか団服を着用していたのにイマイチだった)

今日は傍仕えの女性が全員いる。昨日はアイリだけだったのに。

わたしの傍仕えの女性は3人いる。この世界では女性は貴重なため男性に守られるように生活している人が多い。そのため一人で働くような仕事をしている女性は城くらいにしかいない。平民の娘が結婚相手を探す目的で来ているのがほとんどだ。城では使用人とは言え、女性は厳重に守られている。平民の守る力のない家庭にいるよりも安全なのだ。

その彼女たちが、全員ここにいる。どういうことかわかるよね。

彼女たちのお喋りと少しの質問で大体わかってしまった。


  近衛には貴族の子弟が優先的に入団できる。

  入団テストにパスできる強さも必要だ。


ここまではいい。皇族を警護するのだ。当然とも言えるだろう。

だが、次の2つがいけない。


  貴族の推薦状が必要である。

  見目麗しい者である。


え!? これって必要か!?

貴族の推薦なんてなくても身元確かな者なら良くない!?

それに容姿って警護に関係ある?容姿より大事なことあるでしょう。警護対象と自分をも守る力とか、判断力、統率力とか、他にもいろいろ!

近衛騎士たちの訓練を見学しながら、この不要なルールをどう撤廃させるか考えていた。


で、見学後、すぐに謁見を申し込み、父陛下に直談判に来ている。


安直だって?いいんだよ、わたし5歳だし。何が撤廃の障害になるのかも把握できていないし。

「お父様、近衛には見目麗しい者でなければ入団できない、と聞きましたが何故ですか?」

お父様は、わたしの頭をなでなでしながら聞いている。

わたしは、お父様の応接室に入るなり膝の上に抱っこされている。

なでなでして、時折、わたしの頭に頬擦りしていて、なんだか残念な人に見えるが一応、賢帝と言われている。

部屋には執事がいて微笑みながらも生暖かい目で見ている気がするが気にしたら負けだ。


「皇族警護や城の警護が主な任務になる近衛だから礼儀正しく見目麗しい方がいいだろう?他国からの賓客の目もある」

「それはそうかもしれませんが、見目麗しい者で揃える必要性はないのでは?容姿よりも、その者の力量を見るべきです」

「アニスはお利口さんだねぇ」

「貴族の推薦状が必要なことと、容姿の優れた者、この2つを撤廃してはいかがでしょう?」

お父様はなでなでしていた手を止めて、わたしをじっと見る。

わたしも見つめ返した。

「アニスは5歳熱が治って格段に大人っぽくなったようだね」

内心ドキドキするが、黙ってお父様を見る。

わたしは、元々5歳にしては大人っぽい言動をしていた。今、思うと、かなり生意気な女の子だったと思う。

5歳熱から復活して家庭教師もついた。家庭教師からは神童と報告があがっているそうだ。そりゃそうだ。前世の大人な記憶があるんだもの。語学や、歴史、マナー、しきたりなど初めて学ぶことも多いが大人な認識もあるせいで理解が早い。おまけに子供の柔軟な頭は吸収も素晴らしい。ごめんね、お父様、大人になったら普通の人です。


「確かに少しくらい容姿の悪い者がいても大丈夫なはずだ。だが貴族院の承認は得られないだろう。貴族院の中には貴族至上主義の派閥もある、長い歴史の中で守られていた決まりを無くすことに抵抗のある者もいるだろう。特に問題があると認識されていないところで、わざわざ決まりを改変する意味はなんだ?」

わたしは自分と同じ緑色の目を見つめ返す。

「問題はあります。実力のある者が正しく評価を受けられていません。いえ、実力のある者だけではなく、実力がないのに評価されている者がいる可能性もあります」

「それは他で言ってはいけないよ。評価した者がいる、ということだからね」

「はい」

「では、どうするか。わたしに勅命を出してほしいか?」

わたしは、うーん、と考えてみる。確かに陛下の勅命なら早い。貴族院の承認も必要ない。

だが貴族の反発や容姿の悪い者を毛嫌いする世の中では得策ではない。ましてや賢帝と言われている父陛下にさせることではない。

「いいえ、お父様にそんなことはさせられません。少し考えてみます。時間をください」

「あぁ、いくらでも」

お父様は、わたしを抱きしめて額にキスをする。

前世の感覚だと少し恥ずかしい。おそらくだが、わたしは前世で父親にキスなんてされたことはない。

お父様は少し恥ずかしそうにしているわたしを見て笑みを深めて更にキスしてくる。

「お父様!もう離して!」

足をジタバタするが大人の男の腕から逃れられるわけがない。

お父様は、ついに笑って、わたしを下ろしてくれた。


さて、どーすっか。





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