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第一回練武会



今日から練武会が始まる。朝早くから、わたしの準備に傍仕えの3人娘の他にも女性の筆頭傍仕えと他にも2人のお世話係がついて、わたしを磨いてくれている。

7歳児に、こんなにやることある?と思うが雰囲気的に言い出せない。多分、言っても無駄だろう。黙っているのが無難だ。

筆頭傍仕えの女性は母陛下より年上の人で、結婚したことで一度は仕事を辞めたのだが家にじっとしているのがつまらない、という理由で復職し妊娠、出産で休職、復職を繰り返した教育係も務めている女性だ。よって女性の使用人たちは誰も彼女に頭が上がらない。

それに、人を見た目で判断しない、女性らしい我儘もあまりない、この世界では、かなり珍しいタイプの素敵な女性なのだ。


そして、朝からの苦行も終わりが見えてきた。もう既に疲れた。

今日のわたしは真っ白だ。ヴェールがあれば結婚衣装だな。この世界では結婚式のドレスに定番の色などないが。トレーンが、やや長めなので気を使う。

わたしが主役ではないはずなのだが...。


「大変お似合いでいらっしゃいます」

筆頭傍仕えのクロエが褒めてくれる。

「皇女様は美少女でいらっしゃいますからねぇ」

「お母上様も美しくていらしたから」

「まだ7歳ですのに妙な色気があって末恐ろしいですわ」

などと他の人たちも褒めてくれる。

「大袈裟ね。そこまでじゃないわ。でも、ありがとう。みんなのお陰ね」

と言っておく。


うん、ありがとう。けどなー...。

今まで男性の美醜についていろいろ言ってきたが、自分のことはほとんど、というか全く触れなかった。


...それはね、わたしの感覚では傍仕え3人娘の方が綺麗なんだよ。


わたしは、というと純日本人顔。前世日本人のまぁ可愛いと言っていいだろう、という感じかな。

色の白い人種だったし、お嬢様生活のせいで肌だけは白いが。

そして銀髪、緑目。顔に合わねぇ...。だいぶ慣れたが5歳で目覚めたときは違和感半端ない。女性も能面タイプが美しい、とされるが、そこまでの能面は見たことない。女性でいるのかな、そんなタイプ。

もし、ここに平安女性がいたら絶世の美女、と評されるのだろうか?


はて、下膨れタイプは美女なのか?男性ならモテるのは確実だが下膨れでないタイプと下膨れタイプでは、どちらがモテるのだろう。

わたしは、こちらの感覚がわからないので何とも言えない。

それより、せっかく銀髪、緑目なんて色に生まれたのだから、それに合う顔が良かった。でも、この世界では、それは美人とは言えない。てか、はっきり言ってブサイクに分類されてしまうから良かった、と思うべきなのか...。わたしの主観の問題なんだけど、それって一生ついてまわるじゃん。

つまり、わたしは、この世界では、かなりの美少女らしい。嬉しいけど嬉しくない。


なんてことを考えていると周りは、わたしの評価を更に上げてくる。

「皇女様くらい美しいと傲慢になるのが普通ですのに」

「皇女様のような美しさを持ちつつ謙虚な方なんて他に知りませんわね」

「本当よね、あの金髪の公爵令嬢の態度ったら!以前の夜会での騒ぎ、まだ解決していないみたいよ」

「あれは酷い例の代表ね。なのに好物件な婚約者が4人もいるのよ」

「何か理由があるのよ」

「美しさも身分も皇女様より劣るくせに」

「早く皇女様に社交界デビューしていただいて、あの令嬢を黙らせてやりたいわ」

「皇女様なら求婚の列が凄いですよ、きっと」

「他国の素敵な王子様だって夢じゃないわ」

「わたしに皇女様の美しさの半分、いえ、ほんの少しでもあれば、高位貴族の夫も望めたかもしれないのに」


「そこまでよ!皇女様にお聞かせするには品がなさすぎます」

クロエに一喝され大人しくなる。

「いいのよクロエ。彼女たちのお話は、とても楽しいのよ。いい気晴らしになるの」

「そうやって皇女様がお許しになるから、この子たちが反省できないのです。皇女様には、もう少し厳しくなっていただかないと。皇女様は我儘らしい我儘もないので傍仕えとして彼女たちは大変幸運な方に付きました。それを理解しなくてはね」

「はい、もちろん、それは理解してますぅ」


3人娘は泣きそうだ。きっと、この後、キツめの注意を受けるのだろう。




今日はいい天気でハレの日にふさわしい青空だ。

開会式は滞りなく執り行われた。

参加する騎士たちは、それぞれ団服を着用していて大変カラフルである。もちろん、わたしのユーリセンサーは仕事をして、すぐにユーリを見つけることができた。

壇上からは丸見えである。カッコ可愛いとは、このことか。ありがとうございます。


会場、さらに会場周辺は大盛況だった。

いろいろな店が出店され、騎士たちを紹介するボード、トーナメント表、そして賭けの申し込み窓口の前は大変な混雑だ。

実は早く開催することを優先したため、会場は既存の各種イベントなども開催される広場を使用している。ちゃんとした競技場は、次の練武会(練武会は2年毎に開催されることになったので、更に2年後)には完成する予定だ。


わたしは休憩室でトーナメント表を眺めていた。

トーナメントは5つあり、各優勝者、準優勝者が十傑となる。

ユーリのいるトーナメントでは勝ち進むと準決勝でガイと当たるだろう。ガイはアレでなかなか強いから。その前にも近衛騎士と当たるだろうから、やはり決勝までいくのは難しいか。まぁ、いきなり十傑に入れるとは思っていないが、ユーリの試合は全て観戦する予定だ。

あぁ、できることならわたしもユーリに賭けたい。エイダンにこっそり...、いやいや、会長が率先してそんなことをしていたら示しがつかない。

大会関係者の賭けへの参加は、わたしが禁止にしたのだから。関係者どころか会長本人が賭けたりしたら...。うん、やっぱダメだ。


「皇女様、そろそろユーリの試合があります。移動しましょう」

エイダンに言われ、わたしは移動するが3人娘はアイリしかついてこない。ちっ。

ユーリの最初の対戦相手は陽光騎士団の騎士だ。少し濃い眉、タレ目のややブサ(この世界ではややイケメン?)ボッチャリさんだ。

観戦客は少ないが、わたしが現れたことで、ややざわめく。

ユーリと目が合って会釈してくる。わたしは控えめに手を振っておいた。更にざわめく。

試合は木剣で行われる。相手は明らかにユーリに対して油断している。これは勝てるのでは?と思った。

わたしの予想は半分当たって半分外れた。

油断もあったのだろうが、まるで相手にならなかったのだ。

ユーリが勝った。

秒で。


ん?もう終わったの?というのが感想だ。


気を取り直して、わたしが忘れていた拍手をしようとした瞬間、少ない観客から罵声が飛んできた。

どうもユーリの対戦相手に賭けていたようだ。

この場合、罵るのは対戦相手に対してでは?ユーリを侮って油断したのはユーリのせいではない。

エイダンが「こんな汚い言葉、耳に入れないでください」と、わたしの耳を塞ぐが完全には遮断されない。

わたしは怒鳴りつけてやりたいのを堪えて拍手をすることにした。もちろんユーリに。

わたしの周りについていた者たちも拍手する。


ユーリは、わたしに向かって最敬礼をする。

まずは、初戦突破おめでとう。

もちろん怒鳴っていたヤツは静かになった。




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