第7話 初めてクエストを受注した
昼食を食べて元気モリモリな俺は再びゲームの中に戻ってきた。
さて、これから何をしようか。
レベル上げ……という気分ではない。
今は未知への探求心が勝っているな。
というわけで町の中を探検しようと思う。
町の中は大通りから外れると途端に迷路のように入り組んだ道になった。
「いいね。探検のし甲斐があるぞ」
地図を持たないぶらり旅というのも悪くない。
街角1つ曲がるだけで新鮮な光景が飛び込んでくる。
「ん?あれはなんだろ?」
ふと目に映った看板がある。
それはハンマーと金床の絵が描かれた看板であった。
「これは……鍛冶屋か。こんな場所に鍛冶屋とかないわ……」
運営はもっと利便性を考慮しろよ。
こんな辺鄙なところにあったら誰も気が付かないだろ!
と、突っ込むのはこのくらいにしておきますか。
そうだ、鍛冶してるのはどんな人かな?
イメージだとお髭もじゃもじゃのおじいさんがやっているんだよな。
でもここは敢えて綺麗なお姉さんであってほしい。
果たして結果や如何に!?
「お邪魔しまーす」
「あん?若造がなんのようじゃい」
ああ、綺麗なお姉さんはいなかったよ……。
夢は夢でしかなかったわ。
じゃ、見るもんは見たしさっさと撤収するか。
「あ、すみませーん。間違って入っちゃいましたー。すぐ出ていきますねー」
「冷やかしか。全く……ん?ちょっと待て」
あれ?引き留められちゃった。
俺、なんかしたっけ?
「その腰に下げてる物……キーナイフじゃな。ちょっとわしに見せてみろ」
えーいきなりそんなこと言われてもなー。
このキーナイフは俺の大事な武器だしー。
どうしても貸して欲しいなら態度を改めてどうぞー。
「なにしとる!早く見せんか!」
「あ、はい」
神速の域でキーナイフを腰から引き抜いておじいさんに、はいどうぞ。
だって厳ついおじいさんに怒鳴られたら従うしかないだろ!
俺は怖いものが怖いんだよ!
「ほう……これは……ふむ」
キーナイフをいろんな角度から見てるけど何が解るんだ?
NPCだしそれっぽいことしてるだけかも。
「このキーナイフ……いや、機械騎士をどこで手に入れた?」
舐める様にキーナイフを見ていたおじいさんがいきなり質問してきた。
どこで手に入れたかって?
レガルライゼファーは初期装備だし、どこで手に入れたと言われてもねぇ。
強いて言うなら運営から貰った、かな?
「俺の機械騎士は天から授かりました」
それっぽいことを言って誤魔化しておく。
NPC相手ならこんな感じで言っておけば充分でしょ。
「なるほどな……どうやらお前さんは見込みがありそうじゃ」
マジで?
適当なこと言ったのに話が進んじゃったよ。
AIの判定ちょっと緩いんじゃないかな。
もしかしたら「ああああ」とか言っても話が進んだりするのかも……。
「お前さんにちょっとした頼みがある。やる気があるならそこで待っとれ」
おじいさんは、キーナイフを俺に投げて返すと――危ないだろうがこの野郎――部屋の奥に行っちゃった。
これって何かのイベントなのかな?
それともクエストってやつ?
ちょっと気になるから待ってみよう。
「……待っとったということはやるということじゃな?」
まあ、はいそうですね。
肝心の何をやるのかは聞かされていませんけどね。
『クエスト【騎士の魂】を受注しました』
あれ何か頭の中にアナウンスが……。
これイベントじゃなくてクエストの方だったか。
「これからわしと一緒に騎士の墓場という場所へ行くぞ」
騎士の墓場?
それは一体どこにあるんですかね?
ちょっと尋ねてみますか。
「騎士の墓場っていうのはどこにあるんですか?」
「騎士の墓場は絶海の孤島にある。行くにはこの転移の巻物を使う」
なるほど、クエスト専用のエリアですね。
理解しました。
「お前には島にいる間、わしの護衛を頼みたい。……行けばしばらくは戻れんぞ。覚悟しておけ」
……そういうことはクエストを受ける前に予め言っておくべきでしょ。
これは酷い罠だ。
「では行くぞ」
おじいさんが転移の巻物を広げた。
すると足元に魔法陣っぽい何かが現れた。
俺とおじいさんはその魔法陣に飲み込まれていく。
さて、騎士の墓場ってのは一体どんなところなんだろうな?