第31話 妹と友達におねだりする
「お願いします!俺にお金を貸してください!」
大衆の面前で俺は土下座している。
恥ずかしくないのかだって?
プライドは愛犬のポピーに食わせたので問題はありません。
「お、お兄ちゃん恥ずかしいよ!早く頭を上げてよ!」
シオンは顔を真っ赤にしてる。
やだ、可愛らしい。
「お金のために土下座するなんて……ドン引きだわ」
マリちゃんは俺を見下すような目で見てる。
そ、そんな目で俺を見るのはよせ!
「カイトはまだ私達にお金を返していないでしょ」
「それは重々承知しております」
「私達にお金をねだるならまずは借りた分を返してからにして」
「それじゃ週末のイベントに間に合わないんだよ!」
俺はマリちゃんの足にガシッとしがみつく。
「頼むよーお金貸してくれー」
俺はマリちゃんの脚をすりすりしながらおねだりする。
あ、柔らかいなこのふともも。
すべすべしてるし触り心地もいいわ。
「この変態!私の脚に顔をすりすりするのはやめなさい!」
しまった!
つい欲望を優先してしまった!
「もう怒った!カイトには二度とお金は貸さない!」
「ちょ、ちょっと待って!今のは少しだけ欲に目が眩んだというか……」
「悪いと思っているなら何でまだ私のふとももを撫でてるのよ!」
「ああ!手が勝手に!この手が悪いんですぅ!許してくださーい!」
「ひゃあ!どさくさに紛れてどこ触ってるのよ!」
「げふっ!」
マリちゃん渾身の拳骨が俺の頭に炸裂した。
これは痛い。
体力ゲージが半分くらい吹き飛んだかも。
「もう知らない!」
そう言うとマリちゃんはどこかに行っちゃった。
あーあ、あんなにぷんぷん怒っちゃってさ。
これは当分の間、口を利いてもらえないパターンだわ。
「今のはお兄ちゃんが悪いと思うよ」
そう言ってシオンは俺の頭をなでなでしてくれる。
妹の優しさで痛いの痛いの飛んでったー。
「そもそも何でお金が必要なの?」
シオンは首を傾げながら俺に尋ねた。
「明日、機械騎士乗り限定のバトルロイヤルがある」
「そうなんだ」
「バトルロイヤルを勝ち抜くには今のレガルライゼファーじゃ力不足なんだ」
「そうかな?」
「だからレガルライゼファーの改造費用が欲しい」
「ふむふむ」
「でも明日まで時間が無いから悠長にお金稼ぎする暇がない」
「だからお金を借りようとしたんだね」
「その通り」
だからお金を貸してくれ。
シオンなら分かってくれるはずだ。
お兄ちゃん信じてるぞ。
「うーん、貸してあげたいけど、私の財布空っぽなんだよね……」
「何でだよー!何でお金持ってないのー!」
どうしよう……。
当てが外れてしまったぞ。
これは由々しき事態だ。
このままじゃレガルライゼファーが改造できない。
「むむむ……どうすればいいんだ」
悩んだところでお金は湧いてこない。
くそ、諦めるしかないのか……?
「あ、カイトさんだ」
「ん?」
俺をさん付けで呼ぶのは1人しかいない。
こんなところで会うとは奇遇ですな。
「ワダエルコじゃないか。久しぶりだな」
「久しぶりって……前に会った日から何日も経っていませんよ」
ワダエルコは俺のボケに苦笑で返した。
「お兄ちゃんその人は誰なの?」
「あーそういえばシオンには言っていなかったな。彼女は俺の……」
「俺の……?」
「……カイトさん?」
いたー!
お金借りることのできそうな人いたー!
「ワダエルコ!」
「は、はい!?なんですか!?」
「今から俺は土下座する。心して受け止めてほしい」
「え?え?」
「いくぞワダエルコ!」
見よ!
これが俺の土下座だ!
そして聞け!
我が心の叫びを!
「ワダエルコ!俺にお金を貸してください!!」