第30話 草原で黄金のスライムを見た
「黄金のスライム?」
「ほらいるじゃん。あの辺に金ぴかのスライムがさ」
「そんなスライム見当たらないけど……」
いるって絶対いる!
マリちゃん頑張って見つけて!
俺とシオンは嘘ついてないよ!
「……あっ、見つけた。本当に金色のスライムなのね」
ふふふ……おめでとう!
マリちゃんもこれで俺達と同じだぞ!
「あのスライムは何なのかしら?」
「それは……分からん!」
「分からないことを胸張って言わないでよ」
さて困ったな。
正体不明のモンスターを前に俺達は右往左往するばかり。
こういう時はどうすればいいのだろうか。
「とりあえず戦ってみればいいんじゃないかな?」
シオン……お前天才かよ。
そうだよ。
困った時は殴ればいいんだ!
△ ▼ △ ▼ △
「シオンそっちにいったぞ!」
「あわわわ!このスライム速過ぎるんだよー!」
「ファイアボルト!くっ、当たらない!」
なんということだろうか。
俺達3人が1匹のスライム相手に苦戦している。
「なんて速さだ!攻撃がまるで当たらない!」
苦戦の理由は簡単だ。
この黄金のスライム……すごく動きが素早いのだ。
通常のスライムの数倍は速いんじゃないかな。
そのせいで攻撃が全く当たらん。
俺のレガルライゼファー。
シオンの名剣レイディール。
マリちゃんの魔法。
どの攻撃も黄金のスライムの前には無力とか笑えないぜ。
「おりゃー!」
シオンがまた黄金のスライムに斬りかかる。
でも黄金のスライムはシオンの足元をするりとすり抜けていく。
「ファイアボール!」
シオンの攻撃を避けた黄金のスライムにマリちゃんの魔法が迫る。
だが残念ながら黄金のスライムには当たらなかった。
「うーん、このままじゃ埒が明かないな。何か良い手はないものか……」
シオンとマリちゃんが戦っている光景を見ながら俺は思案する。
どうすればこのすばしっこいスライムを倒すことができるのか。
悩めば名案が思い浮かばないかな?
「何サボってるのよ!カイトも戦いなさい!」
いつの間にか俺の足元にやってきたマリちゃんから怒られた。
「いや、俺はサボっているんじゃなくて名案をだね……」
俺はマリちゃんに言い訳をしようと――。
「あっ!スライムが逃げた!」
「なんだって!?」
見れば黄金のスライムは猛スピードで逃げている。
あの速さで逃げられたら追い付くのは不可能だ。
俺達3人はただ呆然と逃げる黄金のスライムを見ていた。
「ああ、もう!カイトのせいで逃げられたじゃない!」
マリちゃんは腹いせにレガルライゼファーの足を蹴った。
そういうのはやめてよね。
レガルライゼファーが可哀想でしょ。
「俺のせいじゃないって。きっと臆病なモンスターだったんだよ」
「適当なこと言って私を煙に巻くつもりね!」
「ソンナコトナイヨー。オレヲシンジテー」
「ふざけないで!」
俺は極めて論理的な言い訳でマリちゃんを言い包めようとしたが失敗した。
これは後でマリちゃんのご機嫌取りをしなければ……。
あっ、だからレガルライゼファーを蹴るのはやめてよぉ!
△ ▼ △ ▼ △
後日、あの黄金のスライムについてネットで調べてみた。
あの黄金のスライムは、草原に極稀に出現するそうで、倒すことができれば大量のお金が手に入るそうだ。
「逃がした魚は大きかった……!」
と、俺は思うのであった。




