第23話 イベント中に知り合いと出会う
イベントが始まって30分くらい経っただろうか。
俺は順調に逃げ延びて――げふん、げふん、戦って生き残っているぜ!
『まもなく安全地帯の縮小を行います』
あー不味いな。
また安全地帯が狭くなるのか。
そろそろ他のプレイヤーと行動範囲が被っちゃう。
「ここからが大事だな」
気を引き締めて、いざ後半戦――。
「危なっ!?」
それは咄嗟の行動だった。
足元に俺以外の影を見つけた瞬間、俺は頭を低くしたんだ。
我ながらよく反応したと思うよ。
そうしたら、さっきまで俺の頭があった場所を何かが風を切りながら通った。
「斧!?」
俺の頭を掠めたのは巨大な斧だった。
「ちっ外したか」
巨大な斧を振るったのは金髪青眼のマッチョマンだった。
厳つい顔からは凶暴さが見え隠れしている。
やだ、怖いんですけど……。
「次は外さねえぞ。俺から逃げられると……」
ん?
なんだよ急に俺の顔をまじまじと見つめて。
そりゃ俺はイケメンだけどさ。
男に見つめられても嬉しくないんだからね!
「……お前さ。もしかして立華海斗か?」
「へ?」
いきなり身バレしちゃったんですけど。
こいつ、何で俺の名前まで分かったんだ?
まさか超能力者か!?
「やっぱりお前海斗だな!俺だよ俺!」
いや誰だよ。
俺はお前みたいなバーバリアンに知り合いはいないぞ!
「俺だって分からないのか?お前の幼馴染の布井地和也だよ!」
「和也……?」
本当に和也なのか?
アバターの見た目がリアルと全然似ていないんだが……。
「ほんとに和也なら何か証拠見せてみろよ」
「証拠?疑り深いな。うーん、そうだなぁ……」
目の前の和也と名乗っている男性プレイヤーは考え込む。
そして、何か思いついたのかニヤリと笑うと話し始めた。
「じゃあ、昔話でもしよう。昔、お化け屋敷に入った海斗は盛大に――」
「よっ!和也じゃんか!その話はするなって前に言っただろ?」
「人を試すようなこと言うからだよ」
和也はにっこりと笑うと俺の肩を叩いた。
そのアバターの顔で笑うと怖いんですけど。
あと、肩を叩く力が強い。
ダメージ食らいそう。
「しかし、海斗もファンタジーなゲームやってたんだな」
「そういえば、和也には話してなかったっけ」
「そうだよ。言ってくれればすぐ遊びに誘ったのに」
「そりゃ悪かったな」
……ってほのぼのとしてる場合じゃなかった。
今は生きるか死ぬかのサバイバルをしている最中だったわ。
「和也はまだ俺と戦う気あるの?」
「ん?そうだなぁ……」
おいおい、考え込むなよ。
警戒しちゃうだろ。
「いや、やめとくわ。海斗だって分かっちゃったしな。戦うより協力しようぜ」
「おー流石、俺の幼馴染だ。どっかの薄情な妹とは違うぜ」
「ん?詩音がどうかしたのか?」
「いや、実はだな……」
俺がイベント開始前の出来事を話そうとしたその時――。
「お兄ちゃん発見!」
俺は妹に見つかった。




