第12話 新しい友達ができた
町の広場に到着した。
さてシオンはどこかなっと。
「あ、お兄ちゃん発見!」
おや?
この愛らしい声は聞いたことが――って前にもやったなこれ。
「急に呼び出してどうしたんだ?」
「実はね……お兄ちゃんに紹介したい人がいるんだ」
な、なんだと……。
いつの間に紹介したい人なんてできたんだ?
お兄ちゃん許しませんよ!
「じゃあ、摩理子ちゃんこっちに来て」
シオンに呼ばれてやってきたのは1人の女性プレイヤーだった。
手に杖を持ち、ローブを羽織ったその姿はまさに魔法使い。
個人的にはミニスカートから覗く生足が実にグッドだぞ。
「はじめまして。真田摩理子です。ゲームではマリと呼んでください」
ほう、なかなか礼儀正しい挨拶だ。
キリッとした顔立ちのせいで「この子もしかしたらきつい性格してるかも」って思っちゃったけどそんなことはないのかも。
……で、この子とシオンはどういった関係なんですかね?
「シオン。説明求む」
「摩理子ちゃんは私の友達なの」
「なるほど」
「いろんな経緯があって摩理子ちゃんは失恋しちゃったの」
「へー辛いじゃん」
「だから失恋を乗り越えるためにこのゲームをオススメしたんだよ!」
「どうしてオススメしちゃったの?」
「私が言ってた急な用事っていうのはね。摩理子ちゃんとゲームを買ってたの」
「ねえ、質問に答えて」
「これから一緒に摩理子ちゃん……いやマリちゃんと遊ぼうね!」
「マジで?」
「説明終わり!」
シオンの丁寧で分かりやすい説明が終わったわけだが……。
どうやらこれからは3人でパーティを組むことになるようだ。
まあ、俺としては両手に花でいいんだけどね?
「これからよろしくねカイト」
マリちゃんもうタメ口だし俺のこと呼び捨てだし……。
いや、シオンの友達ならつまり俺と同年代なわけだし別にいいけど。
同年代に敬語で話されたらムズ痒くて仕方ないだろうし。
「ああ、よろしくなマリ!」
だから俺も敬語は使わないし呼び捨てでいくぜ。
これから仲良くやっていくんだからフレンドリーに接しないとな!
「あ、呼び捨てはなんか馴れ馴れしいわね。ちゃん付けでお願い」
あ、駄目だこれ。
まだ結構、溝あるわ。
当分はギクシャクした関係が続きそう。
「……じゃあ、改めてよろしくマリちゃん」
いつかは呼び捨てすることを許可してくれよなマリちゃん。
「よし!お互い挨拶は済んだことだし、次はフレンド登録を済ませよう!」
シオンがそう言うので俺はマリちゃんとフレンド登録した。
ついでに3人でパーティ結成もした。
「それじゃ、早速レベル上げに行こう!」
シオンは俺とマリちゃんの手を握ると町の外へ向かって引っ張り始めた。
いや、待って。
今の俺はレガルライゼファー持ってないんですけど。
「待った。今の俺は戦闘力が半減しているんだ」
「そうなの?」
「だから行くなら2人で行ってきて。俺はここで待ってるから」
「大丈夫!お兄ちゃんレベル高いしへーきだよ!」
「ははは、妹が話を聞いてくれない」
俺はシオンに引きずられながら町の外へと向かった。
△ ▼ △ ▼ △
「ひいいいい!」
ゴブリン超怖ええええ!
ちょっとこのモンスター凶悪すぎでしょ。
よだれ垂らしながら棍棒片手に襲い掛かってくるとかやべえ奴じゃん。
こんなのレガルライゼファー無しで戦えるわけないだろ!
攻撃を避けるので精一杯ですよ!
助けてシオン!
「そりゃー!」
やったぜ!
シオンが助けに来てくれたぞ!
ありがとうシオン!
お兄ちゃんは信じてたぞ!
「お兄ちゃん大丈夫?」
「なんとか無傷で済んだぜ……」
ふう、やれやれと汗を拭う。
「ちょっとカイト。前衛がそんなことでいいの?ヘタレすぎでしょ」
マリちゃんから痛いご指摘をいただきました。
言い訳させていただきます。
「俺の本来の戦闘スタイルは生身で戦うことじゃない」
「機械騎士に乗らないと戦えないってわけ?」
「そういうことです」
「やっぱりヘタレね」
「うぐっ」
マリちゃんズバズバ斬り込んでくるタイプだな。
そんな子がなんで魔法使いなんてしてるの?
マリちゃんも剣を持って戦えばいいと思うわ。
「お兄ちゃんは敵の注意を引き付けてるから前衛の役目は果たしてるよ」
ああ、シオンの優しさが目に沁みますねぇ。
いい子だなぁ……。
「シオンはカイトに甘いのよ。前衛ならガンガン斬り込んでいくべきだわ」
マリちゃんアグレッシブすぎない?
もっと俺みたいにお淑やかになった方がいいよ。
「とにかく!カイトは戦い方を考えた方がいいわ。今のままじゃ絶対だめよ」
「……りょーかい」
うーん、生身での戦い方か……。
言われなきゃ考えもしなかったな。
仕方ない。
ちょっと考えてみますか。