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料理に興味が一切ない俺が、味覚が狂った異世界に転生した  作者: 弐屋 中二
ワールド料理カップ

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96/200

クェルサマンの話

競技場から

こっちに来てから一か月ほど泊っている宿泊室へと戻ると

ピグナが提案してきた。

「今からホテルに移らない?メルレンゲ侯国の人たちと同じ

 フロアのスイートルームが空いたみたいなんだけど」

全員疲れていたのもあるので

即座に賛成して、ずっと泊まっていた

安宿をチェックアウトして出ていく。


まずピグナはスーミルオン鉱石のかけらを

魔法の用具などを売っている店で

大金に換金する。そして

以前一度来たことのある高級ホテルへと

赴くと、汚らしい格好の俺たちを訝しがる

カウンターの従業員に、大枚をポンッと渡して

「ワールド料理カップが終わるまで

 五階のスイートルーム借りたい」

と言って、慌てて案内させる。


エレベーターで五階のスイートルームへと

四人で入ると、ピグナはすぐに

「ちょっと侯国の人と話してくるね」

部屋を出ていった。

俺たちは寝室が二つあるその部屋の

ベッドを誰が使うか話し合うことにした。


「女子三人と男一人で、一部屋ずつだと

 不平等だにゃ」

「また寝袋で寝ろと……」

「わたくしは思うのですが……」

「ファイナちゃん、言いたいことは分かるけど

 エッチなのはダメだにゃ……」

試合で服が破裂した後なので、ペップも何となく元気がない。


「じゃあ分かった。俺とペップが同じ部屋で

 あとはファイナとピグナ。これでいいだろ?」

ペップとファイナは顔を見合わせて

少し考え込むと

「それでいいにゃ。私はゴルダブルには男としての

 魅力を微塵も感じてないにゃ。問題ないにゃ」

「いや、はっきり言いすぎだろ……」

気付いてはいたが。まあお互い様である。


その夜はファイナはピグナと共に

侯国の人たちと街へと会食へ出かけ

俺とペップは部屋で夕食を取ることになった。

「大変な試合だったにゃ……」

「そうだな。三日後にまたあれが起こるのは

 嫌だな……」


二人でそう言いながら食べていると

いきなり近くにふくよかな機嫌の良さそうな

禿げあがった紳士が立っていた。

「お、お前、誰だにゃ!?」

ペップが椅子から立ちあがって

戦闘態勢を取る。


男は冷静な顔で頭を深く下げてお辞儀をして

「メルレンゲ侯国代表団の守護をさせて頂いています。

 天使のクェルサマンと申します。

 ピグナさんから、顔合わせを要請されて

 こちらへと参りました」


「て、天使なんですか?」

「はい。力はピグナさんと同格です。

 そしてピグナさんと話し合った結果

 合同でゴルダブルさんたちを守護することにしました。

 彼女の眼がこちらに無いときは私が

 私がこちらに居ない時は、彼女が

 常にあなたたちを守護します」


「い、いいんですか?」

「はい。契約による代表団の守護期間が

 まだ残っておりまして、暇をしておりましたところ

 ちょうどこの話が。渡るに船でござました」

クェルサマンは上品に笑う。


「な、なんとなくですが分かりました。

 これからよろしくお願いします」

俺が立ちあがって頭を下げると

クェルサマンはニコニコと笑い

「私、あなたたちには元々興味がありました。

 あまりに大きな運気のお二人と

 極大の使命を背負ったゴルダブルさん

 そして、一般的な悪魔であるピグナさん。

 失礼ですが、不釣り合いなのですよ」


「えっ……」

「どういうことでにゃ?」

「いえ皮肉や戯言ではありません。

 例えばペップさん、あなたは偉大なる王侯になられる運気があります。

 そしてファイナ嬢は大魔道士に既になりかけています。

 ゴルダブルさんは言うまでもありません」


「た、確かに王様にはなったにゃ……臨時だけどにゃ」

「ふふ。ピグナさんが一人で背負うにはあまりに重いのですよ。

 さらに言いますと、あなたたちが深く関わった別のお二人は

 さらに重いです。片方は人ですらありませんがね」

クェルサマンは苦笑いして手で口を覆うと

「喋りすぎるのが、私の悪い癖です。

 どうか今の話はお忘れになりますように」

深く頭を下げると、スッと消えた。


「よくわかんにゃいが、ピグナちゃんが

 普通で私たちが皆特別だって、言ってた気が

 するにゃ……」

「逆じゃないのか?」

「私もそう思うんだけどにゃ……」

俺たちはとりあえず、残った夕食を食べて

ピグナたちが中々帰ってこないので

寝室で二人で寝てみることにした。


寝室に入るとすぐに

いきなりバッと服を脱ぎ捨てて下着になった

ペップに目のやり場を困っていると

「じゃあっちのベッドで寝るにゃ。

 ゴルダブルはこっちのベッドで寝ろにゃ」

ペップはまったく気にしない顔で

向こうのベッドへと飛び乗ってそのまま寝てしまう。


本当に異性として欠片も意識してないんだな。

良いからだしてるのに……。

とちょっと残念な気持ちになりそうなのを

打ち消して、俺も服を脱いで寝ることにする。


朝起きると、ペップが抱きついていた。

「……あの……」

鼾をかくペップは怪力で俺を抱きしめていて

身動きが出来ない。まあしかし背中に

柔らかいものが当たっているのは悪い感触ではない。

柔らかい二の腕と太ももも俺の身体に絡みついている。


まあいいか二度寝するかと目を閉じると

「……なっ、なんだにゃこれ……」

耳元で焦ったペップの声がする。起きたらしい。

「いや、寝相が悪すぎたんじゃないか?」

「えっ、えっ……エッチなのはいけないにゃああああ!」


俺は次の瞬間にはペップから

寝技をかけられて、口から泡を吹いて

気絶していた。

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