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料理に興味が一切ない俺が、味覚が狂った異世界に転生した  作者: 弐屋 中二
ワールド料理カップへ向けて

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88/200

十日間の筋トレ

とりあえず話はついたのだが

その夜が大変だった。

夕食後に突如宿泊室に襲来した二十体の

トレーナーパイセンたちから

俺たちは厳しいトレーニングメニューの開始を言い渡される。


ペップは朝まで瞑想

ピグナは腹筋千回。

そして俺とファイナは小刻みに休憩を入れながら

朝まで腹筋背筋腕立てなどありとあらゆる

トレーニングメニューである。


トレーナーパイセンたちから

指示をされながら、朝日が昇るまで

延々狭い部屋の中で

各自トレーニングをして

気付いたら全員気を失うように

床で眠っていた。


昼過ぎに起きて全身筋肉痛に苦しんでいると

死にそうな顔で起きだしてきたファイナが

「あ、明日も来るとか言っていましたわね……」

「ほんとか……」

ピグナは床にうつ伏せに横たわって身動き一つせずに

ペップはベッドの上で座禅を組んだまま固まっている。


結局夕暮れころに二人は動き出して

みんなで夕食を食べた。

「しっ、しばらくはこんな感じで

 身体を鍛えないといけないと思うよ」

ピグナが恐ろしいことを言ってくる。

「体力もつのかな……」

「私はまだいけるにゃ。新しい境地に辿り着けそうだにゃ」

ペップは顔をひくひくさせながら強がって

ピグナは俯いた。後悔しているようだ。


翌日、今度は早朝から襲来したトレーナーパイセンたちに

日が暮れるまで体を鍛えられる。

夕方に死にそうになりながら

食材の買い出しに行ったりして

そして寝るとまた……といった感じのことが

十日ほど続いて、ようやく俺たちは

地獄の筋肉トレーニングから解放された。


本当の意味で、精魂尽き当てて

殆ど何もできることが無い状態で

全員で宿泊室で一日寝ていると

夜中に扉がコツコツと叩かれて

下から手紙が差し入れられる。


ピグナが床を這いながら取りに行って

開けて読むと

「……う……メルレンゲ侯国の国籍取得と

 代表メンバー交代に……成功した……」

と呟いて、ばったりその場に倒れ込んだ。

「おう……」「うぅ」

などと俺たちも呟きでしか反応できない。

そのまま俺は床で寝た。


翌朝起きると、部屋には誰も居なかった。

書置きがテーブルに置いてあって

「みんなでお風呂屋に行って来ます」

と書いてある。筋肉痛だらけで

悔しさも沸かない。


とりあえず俺も、宿の従業員に

風呂屋の場所を聞いて

向かうことにする。

ここ数日風呂に入る暇すらなかったので

いい加減汚い。


風呂屋へとたどり着いて、料金を払い

脱衣場で服を脱いでいると

近くでマッチョな男たちが

「今回の優勝候補は、チャ・ソヤ国のヤンチームだな」

「いや、モルズビックのキクカも侮れないぞ」

「そうかぁ?今年こそやる気を出すのかな」

「俺は信じてる」

などと何かの大会の話をしている。


「しかしなあ、皇帝陛下の味覚が悪いのがなぁ」

「そうだな。せっかくの優勝チームの

 料理を食べられないとはお気の毒だな」

どうやら料理大会の話をしていたらしい。

しかし、皇帝が味覚が悪いとはどういうことだろうか。

首を傾げながら、洋風の大浴場へと入っていく。

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