使いよう
中世と機械文明が混ざったかのような
不思議な街の中を歩いていく。
道路は舗装されていないが
その上をロボットや洋服を着た通行人
そして蒸気自動車が走って行っている。
その間を結構な数の兵士や警備員が
縫うように歩いていく。
「やっぱまずは宿だよね」
ピグナはそう言うと案内していく。
「世界は広いにゃー。なんだこの街は」
「そうですわね……何とも金属臭いというか」
俺からするとそうでもないが
中世文明で生きてきた二人にはそう見えるらしい。
レンガ造りの四階建ての宿へとたどり着いて
そこの三階に一室を取る。
皆で入って、とりあえず休憩していると
「トレーナーパイセンの襲来楽しみだにゃー」
ペップが無邪気に言ってくる。
ファイナが困った顔で
「あの、ピグナさん、どうするおつもりですの?」
と尋ねると、ピグナは真面目な顔で
「まあ、そのうちわかるよ。何でも使い方次第だよ?」
そう言ってきた。
とりあえず金を払って調理場を借りて
夕食を作ることにする。
ピグナと一緒なので、レシピには苦労しないが
一切手は出してこないので
全て自分の手で作り上げていく。
「本当はさーゴルダブルが宿探しから
次の目的選定まで全てして欲しいんだけど
今は緊急事態だからねー」
ピグナは腕を組んで俺の料理っぷりを
見つめながら言ってくる。
「マクネルファーはどうなったんだろうな……」
「ここには居るみたいだね。
だけど他の悪魔とか神が妨害してるのか
位置までは分からないけど」
「居るのか……まだ死んでないんだな?」
「もし死刑になるにしても裁判はあるでしょ?
そんなに急がなくてもいいよ」
「わかった。焦らない様にする」
二種類の味の料理を作り上げて
宿泊室へと持って行くと、ファイナとペップが
喜んでくれた。
そして、恐怖の夜中がやってきた。
食べ終わり、食器の片づけや
荷物の整理などを皆でしていると
いつのまにか、部屋中に
二十体のトレーナーパイセンたちが
すし詰め状態で立っていた。
「トレーニングせんね」
代表の一体が言ってくる。
ピグナが立ちあがり、その一体に
「ちょっと外でやらない?ここじゃ狭いよね?」
とニヤリと笑って告げた。
外へと出ると、夜も深くなってきたので
人通りは既に少なくなっていた。
しかしぞろぞろと俺たちについてきた
トレーナーパイセンたちは、この帝都では目立つ。
という目立ちすぎる。
すぐに俺たちは兵士や警官に囲まれて
そして尋問をされはじめた。
「なんだね?この魔法生物たちは」
「知らないのー?トレーナーパイセンだよ?」
すっ呆けながら答えるピグナの背後では
トレーナーパイセンたちがヒソヒソ話し合って
「また明日くるばい。忘れたらいけんよ」
代表の一体がそう言うと二十体全員がスッと消えた。
そして俺たちはとりあえず不審な集団で逮捕ということになり
手錠をかけられて、駆け付けた
警察の蒸気自動車に乗せられていく。
いや、ちょっと待て。何だこの展開。
隣に乗ったピグナに目で抗議すると
「まずはこれでいいんだよ」
とニヤリと笑った。




