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料理に興味が一切ない俺が、味覚が狂った異世界に転生した  作者: 弐屋 中二
ワールド料理カップへ向けて

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83/200

バーグマンの街

竜の背に乗って飛び続けると

摩天楼が立ち並ぶ巨大な街が見えてきた。

数十メートルくらいはありそうなビル群である。

「……時代がおかしい」

つい呟いてしまう。

あのロボットたちは古代のテクノロジーで

中世程度の文明レベルのはずである。

しかしその疑問は近づくほどに

解消されていった。


ビルの廃墟のようだ。

そこに垂れ幕やらがかかって

宣伝に利用されている。

廃墟の屋上で遊んでいる子供たちも見える。

「古代の建築物がそのまま保存されていてね。

 それを再利用している街なんだよ」

親竜が解説してくれる。


親竜は堂々と街の人々が行きかう入口近くへと着陸すると

俺たちを背から降ろした。

通行人たちはチラッとこちらを見ると

興味を失ったかのように、それぞれの

行き先へと急いでいく。


「ここらの人は竜を見慣れてるんだにゃ……」

「だろうねぇ。じゃ竜さん、また後で」

ピグナが声をかけると、親竜は頷いて

飛び去って行った。

俺たちは人波に紛れて

バーグマンの街の中へと入っていく。


大通りの左右は露店で溢れかえっているのに

その左右の頭上には摩天楼が聳え立っているという

何ともアンバランスな光景を見ながら

街の中を歩いていく。

ピグナはしばらく進んだ後に

近く閑散としたビルの廃墟の入口に入っていく。


俺たちも続いて中へと入ると

一階のホールの中では住民らしき老婆たちが

思い思いの椅子に腰かけて

談笑している最中だった。

ピグナはその光景は無視して

そのまま奥の階段へと進んで行く。


壁などにひび割れが多いが

階段自体はかなりそのままである。

昇っていくピグナに

「どこに行くんだ?」

と尋ねると

「人探しできそうなやつの所。

 悪魔センサーで見つけたから」

と答えて、さらに上を見つめる。


ピグナと共にビルの十五階まで登り

所々コンクリートがひび割れた通路へと出て

ボロボロの木製の扉の前へと立つ。

「ここ?」

「そうだよ。居るみたい」

ピグナは軽くノックした。


すぐに怪しげなアフロでサングラス姿の男が

顔を出してくる。

「なんだぁ、あんたら。仕事なら

 知り合いを通してくれ。直接は……」

嫌そうに扉を閉めようとしてきた男に

ピグナが

「マクネルファーって知ってる?」

と言うと、男の顔色が変わった。


「どこでそれを知ったんだ?」

「知り合いだよ。そうだよね?」

ピグナは振り返って尋ねてきて、俺たちが頷くと

「……嘘じゃねぇようだな。入んな」

男は部屋の中へと俺たちを招き入れた。


資料や本だらけで

散らかった居間へと通されると男は

ボロボロのソファに座るように勧めてくる。

俺たちが座ると、テーブルを挟んで反対側の椅子へと

男も座り、サングラス越しに真剣な顔で

「……売るのか?そいつを」

といきなり訊いてきた。


「売る?」

「ああ、身柄確保なら十億ボース。

 情報提供だけなら十万ボースだ。毎年のように

 バルナングスの研究施設を爆発炎上させているという

 情報が帝国に入っててな。律儀にも全部買ってるって噂だ」

「おいさん、私らマクネルファーの知り合いだにゃ。

 そんなにあのじいさんは重要人物なのかにゃ?」

男は声を潜めて


「何でも、昔マリアンヌ帝に重罪を働いたとかで

 皇帝自らが、長年、血眼で情報を欲していたらしいぜ」

「そのお話、何かおかしいですわね?」

ファイナが俺たちを見る確かにおかしい。

「マクネルファーさんは、ずっとミルバスの研究施設を

 爆発炎上させていて有名人だったから

 いつでも捕まえにいけたんじゃないか?」

男は真面目な顔で頷いて


「噂ではバルナングス共和国との間でひと悶着あったらしくてな。

 長年、マクネルファーの引き渡しを帝国側は願っていたらしいが

 バルナングスを長年支えてきたナルアド家が

 うちの跡取りだったマクネルファーは死んだ。そいつは偽物だと

 ずっと取り合わなかったらしいんだよ」

「わけわからんにゃ……とにかく、じいさんは

 複雑な事情に助けられて長年無事だったわけだにゃ?」


「そういうことだろうな。で、あんたらどんな情報を持ってんだ?

 一枚かませてくれよ。役人の知り合い紹介するぜ?」

「……えっと、ついさっき捕まった。機械人間に連れていかれた」

ピグナがそう言うと、男は驚いた顔になり

「おい、つまり、連れてきたマクネルファーを

 帝国のロボットに連れていかれたのか?

 そりゃあ、もったいないことしたなぁ。

 事前に連絡していれば、十億儲かったのに」


「捕まったらどうなるか分からないですか?」

俺が尋ねると

「そうだな。帝都へと連れていかれるだろうな。

 そこで裁判で開かれて、まあ、良くて死刑。悪くて死刑だろうな。

 なんせ陛下の深い恨みを買ってるわけだから」

ピグナがギラリと目を光らせて

「ここからは、どうやって帝都へ?」

「汽車で向かえよ。すぐにつくぜ」


男への話はそれで終わり、別れ際にピグナが

荷物からスーミルオン鉱石の大きな欠片を一つ渡す。

「お、おい、これ……まさか」

「闇市で売れば高値が付くよ。悪いけど汽車賃くれない?

 この国のお金持ってなくて」

「あ、ああ……」

男は必死な顔で頷いて、ポケットに手を突っ込み

有り金を全て俺たちに渡してきた。


ビルから降りて、街へと出ると

ピグナの先導で大通りを進んで行く。

しばらく進むと、木造の大きな駅らしき建物が見えてきた。

ちょうど汽笛を鳴らして、

蒸気機関車が入ってきている様子も見える。

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