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料理に興味が一切ない俺が、味覚が狂った異世界に転生した  作者: 弐屋 中二
ワールド料理カップへ向けて

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82/200

帝国の成り立ち

調理器具を引っ張り出して

周辺の廃墟から枯れた木片など

燃えそうなものを集めてきて

火を点ける。いけそうだ。

とりあえず、冷凍された肉や野菜の塊を

解凍すべく、ピグナの指示に従って

ジワジワと火で炙って溶かしていく。


一時間以上かけて大量の肉と野菜を溶かして

そして大きめのフライパンに油を敷いて

野菜炒めを作ることにする。

勿論味付けは塩と胡椒頼りで、普通の味である。

体長三メートルはある竜の子供用のモノなので

作っては鍋に放り込んで

作っては別の鍋に放り込んでを繰り返して

大量に野菜炒めを作った。

味見もしたが、十分に美味しい。

ファイナは匂いに顔を顰めていたが。


全ての食材を使い切ると

ピグナが汗をぬぐいながら

「よし、これで持って行ってみよう」

俺とペップが手分けして

幾つもの鍋に満載になった野菜炒めを

親竜と伏せて寝ている虹色の子竜の前へと

持って行く。


子竜はすぐに目を覚ますと

両手を使って器用に鍋の一つを

口の前に持ってきて、中の野菜ためを

口に放り込んで

「おいしい!」

と叫んで、次々に他の鍋も空にした。


俺ですら作ったことがある

単純な料理だが、これでいけるなら

この子の食べ物を作るのは

そんなに難しくは無いなと安心しながら

「残り持ってくるからね」

次々に残りの鍋をペップと共に

子竜の前へと持って行く。


親竜も伏せたまま、チラッと目を開けて

その様子を見守っている。

全ての鍋の中身を子竜が平らげると

親竜が首を伸ばして

「坊や、満足したかい?」

と尋ねて、子竜は大きく頷いた。


「よろしい。専属コックの試験は合格だ」

全員で胸を撫でおろしていると

「あの、氷室は、何故かここに置いてあって

 時おり、私たちの食料貯蔵のために使うのだよ。

 扉は重くなかったかね?」

「ファイナの召喚魔法で開けたよ」

ピグナがそう言うと、親竜は

「君は悪魔だろう?何故、彼らに付き従っているのかね?」

ピグナは照れた顔で

「惚れた弱みかなぁ……」

と俺を見てくる。俺は見ないふりをする。


子竜が食事後の昼寝をしている間に

親竜からボースウェル帝国の成り立ちを

俺たちは聞かされることになる。

その内容はこうだ。


数百年ほど前に、勇者ボースウェルが建てた帝国は

この廃墟群のような、古代文明の利用をして

栄えた。審査で見たロボットもその一つで

帝国の使っている古代のテクノロジーの一つである。

そんな帝国が、さらに栄えることになったのは

四十年前に、マリアンヌと呼ばれる女帝が

皇位を継いだことに始まった。


マリアンヌ帝は、文化的発展に熱心で

武術からスポーツ、芸術に至るまで

様々な大会を開いていて、大会での優秀者には

国籍から、賞金まで多種多様な特典を与え

自国の発展に利用した。

竜の優遇政策もその一環である。

竜にも国籍を与える代わりに法律を守らせて

帝国内に居る時は

人も竜も安全に過ごせるようにしたのだ。


「あにゃーすげー女が居たもんだにゃー」

ペップが舌を巻く。親竜は

「連れ去られた彼の当てを探したいのならば

 ここから北西に五十キロ行った場所に

 バーグマンという大きな街がある。

 そこの近くまで連れて行っても良いが

 その後は、君たちの足で探索して欲しい。

 私と坊やが帝国内を好きに跳び回ると、色々と噂になるからね」

そこで言葉を切って

「もちろん、坊やがお腹を空かしたら

 こちらから訪ねていく。その時はここに戻ってもらうがね」


ピグナが即座に了承して

「それでいいよ。とにかくバーグマンまで

 連れていってよ」

親竜は頷いて、寝ている子竜を起こし

しばらく待っているように伝えると

俺たちを背中に乗せて

先ほどエレベーター状になって降下してきた場所まで

飛んでいく。同じ位置に親竜が乗ると

地面が四角く切り開かれて、先ほどとは逆に

上昇し始めた。

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