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料理に興味が一切ない俺が、味覚が狂った異世界に転生した  作者: 弐屋 丑二
ワールド料理カップへ向けて

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76/200

バム

バムはゆっくりと俺から両手を離すと

ピグナをジッと見つめる。

ピグナはその眼差しに多少たじろいで

ペップの背後に隠れながら

「あ、あのさ、わ、私もここで

 バムちゃんとやり合う気はないんだ……。

 まだ冥界に帰りたくないし……」


バムはまだ黙ったままピグナを見つめている。

ペップは仁王立ちして腕を組んで

俺たちをジッと睨む。俺は固まったままだ。

しばらくその状態が続いて

バムが大きく息を吐き


「……仕方ありませんね。

 ゴルダブル様、あなたを好きだと言ったことは

 本当です。一緒に旅出来て、とても楽しかったです」

と寂し気にいうと

「私を排除したからには

 きちんと責任をもって、ボースウェル帝国まで

 この人を連れてきてくださいね。待ってますよ」

と言うと、バムは身体ごといきなりその場から消えた。


「え?は?」

俺は辺りを必死に見回す

ピグナも恐る恐る辺りを伺ってから

「よ、よし消えた。もう戻ってこないはず。

 周囲数十キロにバムちゃんの気配は無い。あー怖かった」

「あ、あの……一体何だったんだ?」

二人に尋ねるとペップが自信満々の顔で

「私にもわからにゃい。ピグナが説明するにゃ」

とサッと横に避けた。


ピグナはまだ周囲を恐々と見回しながら

「あ、あのね……ゴルダブルはさ

 魔法が一切効かないとか、どう考えても

 次の食王候補として、この世界が召喚した人間でしょ?」

「う、うん」

「でもさ、前食王はまだ

 ワールドイートタワーに居るんだよね。

 そこで全世界の狂った味覚を未だに握ってるわけ」


「そ、そうだな……」

「でさ、神や悪魔が色んな国や人を守護してるのは聞いたよね?

 現にあたしは、あんたたちを契約に基づいて一応守ってる」

「それもそうだな……」

「つまりさ……」

ピグナはそこで言い辛そうに言葉を切る。

ペップと固唾を飲んで見守っていると



「前食王にも強力な神や悪魔が守護に

 ついてるってことなんだよ。それも超強力な」



「にゃ、にゃんだってー!」

ペップが物凄いオーバーリアクションで驚いて

俺はむしろそっちにビビッてのけ反る。

「……で、それが消えたバムと……あ……そうか」

さすがに気づいてしまった。


ピグナは頷いて

「よく考えてみてよ。あたしが来る前のバムちゃんの話を

 本人やファイナとかから色々と聞いたんだけどさ。

 あの子、全部やってたよね?

 本来ならゴルダブルが苦労して、自分で工夫して乗り越えるようなことも

 あの超人的な肉体能力と、幅広い知識で

 すべてこなしてた。つまりね……」


「つまり……?なんだにゃ」

「ゴルダブルの成長をずっと阻害してたんだよ。

 そしてさりげなく、ゴルダブルがワールドイートタワーに

 向かうための道筋を潰していってたでしょ?

 一度も料理大会優勝しなかったんだって?

 優勝しないどころか、犯罪者にもなったんでしょ?

 終いには、漁師連合国で無駄な時間を潰させて

 マクネルファーを酒浸りにさせ、暴走させて

 完成しかかってたはずの、味覚の妥協点を探る機械を破壊させたでしょ?」


「あ、あれもバムの目論見だと言うのか?」

そうだとは思えないが。

「バムちゃんが、超強力な神や悪魔だと考えれば

 その超広い視野で、ゴルダブルをさりげなく

 誤った方向に導き続けることなんて簡単なんだよ?」

ペップが真剣な顔で

「つ、つまり、世界は滅亡するってことなのかにゃ?」

とピグナに尋ねて、首を横に振られる。


「いや、そうじゃなくてね。

 召喚されて来たゴルダブルを待ち構えて

 憑りついて、食王にさせないようにしてたのが

 バムちゃんってことなんだ。

 前食王の命令でね」

「い、いくらなんでも、無理やりじゃないか?」

こじつけが過ぎるような気がする。

バムはかわいくて、頼りになって

俺の大事な仲間で、両思いの恋人候補だ。

そんな、彼女が俺を邪魔していたとか

信じられるはずがない。

さっきもすごくいい感じだったし。

何か消えたけど……。


「ま、信じなくてもいいけどね。

 今後はあたしとか、ペップや他の皆が

 ゴルダブルを導いていくから」

ピグナはそう言って、牢から出ていった。

「あ、そうだにゃ。候補者選びも終わってるにゃ。

 旅券も明日には発行されるにゃ」

「う、うん」

釈然としないまま、ペップから手を引かれて

俺は牢を出ていく。

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