味方
「あのにゃーゴルダブル。
神聖なる修行を思い出せにゃ?
師匠は、お前をそんなナンパな人間には
育ててないにゃよ?」
いきなりペップから、上から目線で説教される。
「いつ師匠になったんだよ……」
「ハイキャッター拳の師匠だにゃ」
しまった確かにそうだった。
気付かないうちにマウントを取られてしまっていたようだ。
バムは微妙な顔で俺を見つめながら
「あの……そんなに……女の子の水着とか
好きなんですか?」
と尋ねてくる。
「嫌いと言ったらウソになるけど……」
「エッチなのはダメだにゃ!」
ペップからビンタされて
俺は意識を失った。
次に目を覚ますと
地下牢の中だった。
「……」
いや待てよ。なんだよこれ。
唖然としていると、鉄格子の向こうで
椅子に座ってウトウトしていたバムが
ハッと起き、こちらを見つめて
「あ、起きられたんですね?」
と尋ねてくる。
「いや、何だよこれ。何で捕まってるの?」
バムは説明に困った顔で
「あの後、皆で話し合った結果
ゴルダブル様には大人しくしてもらって
その間に旅券の発行と、跡継ぎ探しを
する方がいいことになりました」
「バムが見張り役?」
「はい。私が……あの……実は……」
バムは顔を真っ赤にしている。
「どしたの?」
「あの、本当は二人きりになりたくて……」
「……え?」
バムはそう言うと鉄格子の扉の鍵を
取り出して開けると、中へと入ってくる。
「……ゴルダブル様は、私の事……
どう、思ってますか?」
「……」
もしかして、きた?
きてる!?これはきたんじゃないの!?
だが焦るとろくなことは無いので
平静を装いつつ、しかし正直に
「好きだよ」
と言うと、バムは一瞬口を大きく開けて
驚いて、そして耳まで真っ赤になりながら
「私も……です……」
と言ってきた。
もうこれは、完全にいったわ。
ここで朝まで二人きりでもうあれだ。
もう何もかも脱ぎ捨ててあれだわ。
そりゃあれだろ。
バムをゆっくりと抱きしめると
バムも抱きしめ返してきた。
頬にキスをすると、唇に返してきた。
きたな……意外とくるべきときは
あっさりだな。と胸は高鳴りながらも
何となく冷静にバムと抱き合って
彼女の服に手をかけようとしたその時
「エッチなのはダメだにゃ!」
といきなりピグナを背負った
ペップが牢の前の通路に走り込んでくる。
ピグナは眉間に皺を寄せた顔で
ペップの背中から降りると
「ずっとさあ、なーんかおかしいと思ってたんだよねぇ」
そう言って、ペップと共に
ガチャリと牢の扉を開けて
中へと入ってきた。
「な、何かおかしいって俺が!?」
い、いやおかしいのは確かだ。
北の果てでは幻覚を見たかもしれないし
もしかしたらそれをピグナに気付かれたのか。
と一人で心中焦りまくっていると
ピグナは俺に抱き着いたままのバムを指さして
「バムちゃんさあ。あんた、ゴルダブルの味方じゃないでしょ?」
といきなり言い放った。
俺の脳みそはまだこの超展開についてこない。
バムが味方じゃない?な、何をいってるんだ?




