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料理に興味が一切ない俺が、味覚が狂った異世界に転生した  作者: 弐屋 中二
ワールド料理カップへ向けて

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バルナングス共和国首都リングルハム

飛んでいる竜の背中に乗って

バルナングス共和国を西へと進んで行く。

「何度乗っても良い眺めですわ!」

ファイナはとても楽しそうである。

「そんなにリングルハムに行きたかったんですか?」

バムが尋ねると、大きく首を縦に振って

「この大陸の文化の中心地ですわ!

 何度行きたいと思ったか知れません!」

「まあ、そんな大したことないよ。

 ボースウェルの首都のが凄いんじゃないの?」

ピグナがニヤリと笑ってそう言った瞬間に

ペップが羽交い絞めにして

「……待っていたにゃ……この瞬間を!」

とこちょぐり始めた。


ピグナが笑い死にそうになっているところを

横目に俺たちは、いかに

リングルハムが憧れの都なのかという

話を延々と聞かされ始めて

それにうんざりしてきたころに

竜はゆっくりと下降し始めた。


眼下には西への巨大な港を備え、城壁に広大な街が囲まれた

都市が左右に延々と広がっていた。

何十万人住んでいるのか想像もつかない。

下手したら、百万人近く住んでいる可能性すらある

異常に広い街並みである。


「やっぱり!聞いた通りのバルナングスの首都ですわ!」

ファイナが飛び跳ねて、竜の背中ら落ちそうになり

バムが素早く支える。

座ったまま黙っていたマクネルファーが

「久しぶりじゃなあ。まだ実家はあるんかのお」

と呟いて、ファイナから詰め寄られ

「ま、まさか!この都出身なのですか!?」

「ああ、そうじゃよ。あの辺りだな」

と街の中心部の、ひと際、華美で敷地の広い屋敷が並ぶ

一角を指さした。


「ルマンシェル地区……も、もしかして

 マクネルファーさんは……」

「いやいや、家出してもう五十年以上経つからのう。

 とっくに潰れとるか、立ち退いとるだろうて」

マクネルファーは苦笑して右手を左右に振る。


しばらく飛んでから

親竜は街から少し離れた所にある

人けの無い森の中へと着地した。

ずっとついてきていた子竜も

同時にその隣に寄り添うように

着陸する。


「では、定期的に坊やの食料を頼むよ。

 できれば、夕方には欲しいかな」

微妙に無茶を言ってくる親竜に

バムは神妙な顔で頷いて

「任せてください。では、皆さん

 まずは街で宿を探さないと」

俺たちはいそいそと森を抜けて

リングルハムの東に聳え立つ

凄まじい数の通行人が行き交う

巨大な城門へと向かう。


とくに身分証の検査も無く

フリーパスで街の中へと入れた。

こちょぐられすぎてぐったりしているピグナが

ペップに背負われながら

「ほんと、自由だよね。入るのは大変だけど

 入ったあとはフリーパスっていうか」

「関所はあったな」

ファイナとバムと三人で通った覚えがある。


バムが街の活気ある大通りを見回して

宿屋外への入口を見つけて

俺たちを誘っていく。

全員で、宿屋外を見回って

良さそうな大きめで清潔そうな宿に決め

宿泊室をとって、一旦休憩する。

バムはすぐに

「竜さん達の食料を作ってきます」

と調理室を借りに食材を抱えて出ていった。


そろそろ夕方なので

本来の目的を探すのは明日にすることにして

今日は二手に分かれ、俺とマクネルファーとファイナは

マクネルファーの実家の様子を見に行き

ピグナとペップは、バムと合流して

竜への食糧を届けに行くということになった。


ワクワクしているファイナに引っ張られるように

俺とマクネルファーは、街の中心部の高級住宅街へと

連れていかれる。

煌びやかな庭園に囲まれた華やかな屋敷を

通り過ぎるたびにファイナはうっとりとして

「ああ……夢が一つ、叶いましたわ」

などと言って、マクネルファーに苦笑されている。


マクネルファーは時折首を傾げながら

実家のあるところへと俺たちを連れて行く。

「この辺り、だったんじゃがなあ……」

と彼は、高級住宅街のさらに中心の

小さな城のような屋敷の前で立ち止まった。


強面の黒服の門番二人が訝し気に

「何者だ。我が家では押し売りは受け付けていないぞ」

ときつめの視線と共に言ってくる。

マクネルファーは禿げた頭を掻きながら

「いやーわしは、マクネルファー・ドラル・ナルアドと

 言う者なんじゃが、ナルアド家の屋敷なんかね。

 ここは?」

黒服たちはいきなりきつめの顔になり

「マクネルファー様は五十四年前に死んだ。

 おい、乞食のジジイ、下手なことを言うと

 憲兵を呼ぶぞ!」


「なっ、このわしを乞食とは失礼な!

 わしの弟子であるファイナ嬢と、ゴルダブル君が

 黙っとらんぞ!」

「あ、あの……わたくしたち弟子になった覚えは……」

ファイナにすら呆れられたマクネルファーに

「帰ろう?揉め事になるわけにはいかないだろ?」

と諫めると、正気に戻った顔になり

「そ、そうじゃな。どうやらナルアド家は

 わしの知っている家ではもうないようじゃ」

大きなため息を吐いて、後ろを向いて

俺たちと共に立ち去ろうとする。


その瞬間、いきなり門がギギギと開いて

腰の曲がった質素な格好をした老婆が、杖を突きながら出てきた。

周りには、数人のメイドが付き従っている。

老婆は、皺皺の顔でマクネルファーを見つめると

「ドラルなのですね……」

潤んだ瞳で両手を震わせて広げる。

マクネルファーは数秒固まった後に


「お、お母さま……」


と呟いた。

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