目的地と移動手段
翌朝、起きたマクネルファーも交えて
全員に、昨夜の話を伝えると
ペップが提案してくる。
「漁師連合国のマサカの街から
ワールド料理カップがあるボースウェル帝国へと
向かえばいいにゃ!たぶん船賃ただだにゃ!」
その言葉を聞いたピグナが
ニヤリと笑おうとして咄嗟に口を抑え
ペップが残念そうな顔をする。
ピグナは真面目な顔に戻ると
「竜に乗っていこう。その方が早いし安全だよ」
「確かにな。竜に頼めばいい話だよな」
「わしも行くのか?」
首を傾げるマクネルファーに
「爺さん、ほっといたら危ないにゃ。
来いにゃ。悪いようにはしないにゃ」
ペップが肩を組む。
「そ、そうか……しかし冷静になると
心配させてすまんかった。あと建物もな……」
「気にしないでください」
「そうですわ。建物はまた建てれば良いのです。
でも今度は、爆発させないようにしてくださいね?」
「爺さん、禁酒だにゃ!」
「お、おう。そうするわい」
「私の悪魔センサーによると、あの親子は
まだ竜の巣に居るよ。
でも、急いだ方がいいかもね」
「さっそく旅立つにゃ!」
ペップが右手を掲げて、ハイタッチを要求してきたので
全員で不器用ながら、タッチを返す。
その一時間後半後には、朝食含む全ての準備を終えて
俺たちは、ミルバスの街を南に向け出発する。
そして街を出て、足早に四時間ほどで
竜の巣までたどり着く。
体力の無いマクネルファーとファイナが、へたったら
交互にバムが背負ってくれた。
本当にバム様様である。
休息も兼ねて昼食を食べると
すぐに登山を開始して
中腹の竜の巣の穴までたどり着く。
「おーい、ちょっと頼みがありますのー!」
ファイナが呼びかけると、穴の中から竜が顔を出して
「ああ、ちょうど良かった。うちの子の新たな食糧を
作って貰いに行くつもりだった」
その言葉は予想していたので
バムが予め作っておいた大量のサンドイッチや
おにぎりを取り出すと、竜は嬉しそうに
虹色の鱗を持つ、自分の息子を呼びに行き
そしてまずは、食べさせ始める。
嬉しそうに子竜が食べ始めると
さりげなく俺とバムが近寄って進み出て
愛おしそうに子竜を眺める青い親竜に
「海の向こうのボースウェル帝国に行きたいんですけど
ちょっと手伝って貰えませんか?」
と頼んでみた。
親竜は俺とバムの顔を交互に眺めると
「ああ、良いよ。あそこには別荘がある。
少し、季節には早いが、うちの子の専属コックである
君たちが行くのならば、私も付き合おう」
いつの間にか竜の専属コックにされていたらしいが
それは問題ない。とりあえず目的は達成できそうである。
「で、さっそく行くんだね?その格好からすると」
「ええ。お子さんが食べ終わったら
できればすぐ、向かって欲しいんです」
「分かった。そうしよう。
ところで、旅券の類はあるのかね?
見た所、彼女は悪魔の様だが
まやかしは通用しないぞ?」
そう近くでマクネルファーと雑談しているピグナを見ながら
竜は言ってくる。見破っていたようだ。
「無いと捕まりますかね?」
「そうだろうな。我ら親子はボースウェル帝国から
竜としての認可を受けているから問題ないが……」
バムが真剣な顔で
「どこに行けば旅券は発光して貰えますか?」
と尋ねると、竜は微笑みながら
「ああ、バルナングスの最西端にある
リングルハムの都で申請すれば良いはずだよ。
まずは、そこまで連れて行こうか?」
親切な申し出に感謝して
一度仲間たち話し合うことにする。
ピグナは苦い顔をしながら
「そっかあ、旅券は誤魔化せないか……。
確かにあそこの守護神は、やばいからなぁ」
「そんなことはいいにゃ。
むしろ、私としては、そのリンリンハムとかいう所で
また何かあるんじゃにゃいかと思うんにゃが……」
「リングルハムですわ。
バルナングスの首都で、花の都ですわね」
ファイナは嬉しそうである。
「とにかく行くしかないんじゃろ?
迷うことないんじゃないのか?」
マクネルファーの言葉に皆で同意して
竜にとりあえず、リングルハムまで連れて行ってくれと頼む。
「ああ、心得た。郊外の森に滞在するので
旅券の発行に時間がかかっても
構わないが、坊やに定期的に食事はさせてやってくれ。
それでいいか?」
「分かりました。よろしくお願いします」
ちょうど子竜が食べ終わったので
俺たちは親竜の背中に乗せてもらい、
さっそく、リングルハムへと向かう。




