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料理大会開始

それから二日ほど、同じ宿屋に泊まり

二人で街を探索して小規模なカジノで遊んだり

街の名所もめぐり終わったころに

料理大会の当日がやってきた。


俺は何度もバムに大会への対策を立てた方が

いいんじゃないかと尋ねたが

「大丈夫です。私も従者として登録しましたし

 サポートしますから」

そればっかりで、ひたすら遊んでいた。


意外とこの娘、のん気なのかな。

田舎育ちだからかなぁ。と思いながら

俺も何となく流されて

気付いたら当日になってしまった。


ちなみに遊んでいる二日間、

何度もいけそうだなと思ったのだが

結局、男女の関係にはならなかった。

もう一度言うと、男女の関係にはならなかった。

……そう、ならなかったのだ……。


「一回戦、Aブロック選手入場!」

の審判たちの掛け声とともに、一斉に二百人ほどの人たちが

大歓声に迎えられて

コロシアムの巨大な円状の舞台のそれぞれ割り振られた

小さなテーブルの前へと立つ


食材はテーブルの上下に大量に置かれている。

俺の隣に居るバムは

「うわっ、ひどいなぁ。これ腐りかけてますよ。

 これなんて臭いが……もう……」

食材に文句をつけ続けている。


「開始!制限時間八十分!持ち込みは禁止です!」

審判の一人が笛を吹いて、料理コンテストの

一回戦は始まった。


「な、なあどうしたらいいんだ?」

バムは自信満々に

「ゴルダブル様が、今までで一番酷いと

 思った生ゴミを思い浮かべて、再現してください」

「生ゴミですか……」


とにかく言われた通りに

実家の庭のコンポストに、たまに捨てていた生ごみを

思い出して再現しようとする。

卵の殻は必須だよな。あと謎の粘り気も

それから、色はこう、汚らしくなるように……。


さらに臭いはもうできるだけ酷い感じで

腐りかけていたり、不味そうな食材たちを

さらに不味そうにぐちゃぐちゃと

できるだけ汚らしくなるように

混ぜ合わせていく。


「隠し味も必要ですよねー」

バムはなんと、テーブルの下に落ちていた

小石をかき集めてパラパラと上にまぶした。

「さっ、さすがに腹壊すんじゃないのか?」

「いえ、この世界のグルメたちを、侮らない方がいいですよ」


「制限時間終了!これより審査に入る!」

審判たちの掛け声と共に警笛の音を合図に

コロシアム中に緊張が走り、舞台の入り口から

金の刺繍をした豪華な服を着たイケメンたちや

キラキラとしたドレスを着た美女たちが

次々に出てくる。


よく見ると短髪で耳を出しているイケメンたちは、

全員、人間より耳が上に長い。

「あれがこの国を支配するエルフです。くれぐれも失礼のないように」

バムが姿勢を正しながら小さな声で教えてくれる。

俺も慌てて姿勢を正す。


直立不動状態の俺たちの席の

その前に来た長身で金髪の美女は

大皿にグチャリと盛られて

バムにさらに小石をまぶされた

俺のつくった生ゴミを見た瞬間に


「ちょ、ちょっと、アネット!ビオラ!

 来てごらんなさいな!」

周囲で、審査をしていた煌びやかな美女を呼び寄せる。

エルフの美女たちは興奮した顔で

俺のつくった生ごみにスプーンを伸ばして


なんとそのまま口に入れた。

そして満足そうに頬張ると

「うーん、知られていない天才って居るものねぇ」

「二回戦も頑張って」「期待してるわ」

そう、俺たちに華麗にウインクをして

別の席へと去って行った。


いや、なんだこれ………。

おい、高そうな服を着た美女たちが

小石のまぶしてある生ゴミ、満足そうに食べて行ったぞ。

固まったままバムを目で見ると

彼女はため息を吐いて

「やっぱり、こんなの間違ってますよねぇ……」


悲しそうな顔で、俺のつくった生ごみと

腐りかけている食材を近くに用意されていたゴミ捨て用の

大きなバケツの中へと放り込んだ。

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