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料理に興味が一切ない俺が、味覚が狂った異世界に転生した  作者: 弐屋 丑二
北の果てに向かって

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67/200

接触

真夜中に起きてしまう。

恐らく四時間か五時間は寝られたと思うが

洞窟の中には、遠くの入口からの吹雪が吹き込む音が

聞こえている。寝袋に入ったまま

暗闇の中、ボーっとしていると


"新たなる食王候補よ……告げることがある"


頭の中に低い男の声が響く。

ああ、とうとう俺もおかしな世界での

ストレスに延々と晒されて、頭がおかしくなったかと

目を閉じて、即座に寝ようとすると


"さあ、外へと出てくるのだ……"


声はさらに響く。

「あーうるせえ!」

思わず激しく叫ぶと

「うるさいのは貴様だにゃ!ねにゃさい!」

ペップに怒られて、ビクッとなる。

「なんなだにゃ……せっかく魚の……エラを……ぐー」

ペップはすぐにまた寝入ってしまった。


"急げ……食王候補よ……出てこい……時間が無い……"


……あああああああもうめんどくせえええええ!

出ていってやらあああああああ!ああああああああああ!

心の中ではブチ切れつつ、心の外では

ペップにまたブチ切れられないようにビビりながら

出来るだけ厚着をすると、俺はゆっくりと

テントから出ていき、カンテラを手に

寒い洞窟の中を外へと向かっていく。


……向かってはいったが

入口は五割ほど雪で埋まっていた。

「出られないだろ……」

呼びかけるならせめて出口ぐらい整備してけよ……。

やっぱり幻聴かよ……ちょっと数日、休養が

必要かもしれないな。


テントへと戻りかけると

雪が一気に何か大きなものによって

除けられる。

驚いて入口まで走って行くと

綺麗に雪が除けられた辺りには

吹雪かれながら立っている、いくつもの巨大なシルエットが

俺を取り囲んでいた。何だこいつら

もしかして昼間の岩の巨人の仲間たち……

呆然として見上げていると

その中の一つがゆっくりと跪いて


"新たなる食王候補よ……我ら、食王のしもべなり

 我ら、世界の形を変えるものなり"


せ、世界の形を変える?頭の中で何が何だか

分からずにパニックになっていると


"味覚とは……つまり、最も鋭敏な感覚の一つなり

 その味覚制する者こそ、知覚世界の勝者であり

 世界の形を変えるものである"


どういうことなんだ……。

さらに声は語り続ける。


"前食王は……世界を悪意で染め上げた……。

 お主は、どう創りかえるこの世界を……"


どう作り変えるとは言われても……寒くなってきた。

とりあえず、吹雪を止めて欲しい。


"了解した"


思考を読んだかのように

ピタッと吹雪が止まって、空が晴れると月明かりに照らされて

俺の周囲に、高さ数十メートルの様々な形状の

ゴーレムたちが並んでいるのがはっきりと見えてくる。

微笑みを讃えた女性的な造りの

羽根を生やしたゴーレムから、二足歩行する角が生えた獣のような

形状のものまで、九体ほどの巨大な岩でできた

ゴーレムから俺はずっと遠巻きに取り囲まれていたようだ。


よくわからないが、吹雪が止んで喋れそうなので

「せっ、世界を創り替えるってどこまでできるんだ!」

ゴーレムたちに叫ぶと、目の前で跪いている

苔むした岩で髭を生やした長老のような形状のゴーレムが


"未だ前食王が握る、味覚に始まる知覚世界以外の全て"


堀の深い顔で俺を見下ろして、頭の中へと言ってくる。

「……」

それが本当なら大変な話である。

物理的なことなら何でもできると言っているように俺には聞こえる。

地形から、そして今吹雪を止めたように

天候まで変えられるということらしい。


ただ、そんな旨い話には、必ず裏が付き物である。

俺はまっすぐに信じられない質だ。

跪いているゴーレムを見上げて

「なんかペナルティがあるんだろ!?」


"好きなように創りかえれば、必ず意図せぬ別のところに歪みが出る。

 それが世界の仕組みだ"


「やっぱりな……」


"そして我らは、味覚に始まる知覚世界を支配はしておらぬ。

 つまり前食王の気分次第で、如何様にもひっくり返される"


「……前食王に引導を渡して、引退させないと

 お前らは力が出せないと……」


"その通り……必要なことは伝えた。時間だ"


「ゴルダブル様!」

洞窟からバムが駆け出てくるのと同時に

再び吹雪が辺りに荒れ狂いだして

ゴーレムたちは、立ち去っていく。


「大丈夫ですか!?」

心配そうなバムから肩を叩かれて、我に返る。

「ああ、説明する……何があったか」

バムから手を引かれて、洞窟へと俺は戻っていく。

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