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料理に興味が一切ない俺が、味覚が狂った異世界に転生した  作者: 弐屋 中二
北の果てに向かって

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63/200

岩の巨人

気付いたら寝入っていて

そしてバムが再び揺さぶられて起こされる。

「ゴルダブル様!起きてください!

 吹雪が弱まりました!」

慌てて起きて寝袋から出ると、バムが温かいスープと

干し魚などを差し出してくる。

朝食らしい。頷いて食べる。


食べ終わると俺たちは

片付け、テントを畳んで

荷物に入れて洞窟の外へと出る。

外は貼れた日差しに照らされた

一面の銀世界だった。

雪原が陽光に照らされて反射し輝いている。


見惚れていると、バムが俺の手を取って

すぐに進みだす。

「自然の機嫌は、人間を待ってはくれません」

「そ、そうか。そうだよな」

確かにまた吹雪になったら進むどころではない。

バムに手を引かれて、雪原を歩いていると

高い岩山が目前に姿を現した。


「昨日見た山だよな?」

「そうです。今日中に頂上まで登ります」

「ゴーレム居ないな」

「確かに不思議ですが、気にしている暇はありません」

バムは真剣な顔でそう言って

少し歩みを速めだした。慌てて歩調を合わせる。


山の麓まで辿り着くと、

どうやら人が通る道らしきものは

あると分かりホッとする。

ただ、相当に険しい。

見上げると、途切れている個所もあるようだ。


ただ戸惑っている暇は無い。

バムと共に、とにかく山道を登り始める。

大半が雪に埋もれているので

足場を確認しながらだ。数十メートル進むのに

かなり時間をかけながらも

何とか昼前には、中腹辺りまで無事に登ることができた。


「お昼にしましょう」

というバムに同意して、火を起こし

スープを温める。干し飯や、干し魚などを

齧りながらスープを飲んで、中腹から見える

陽光に煌く雪原を眺めていると

「遠くに来ましたね……」

急にバムが呟く。


いや待て、ここはチャンスなんじゃないのか?

こういう所で女子に優しい言葉をかけていく

これこそがむしろ親しくなる近道なんじゃないのか?

そう俺は下心つきで思いつつ

「バムと一緒に居られたから、あっという間だったよ」

と言うと、バムは少し顔を紅潮させ微笑んで

「私もですよ」

と恥ずかしそうに言ってくれた。


きたああああああああああ!

作戦が当たったわああああああ!

心の中で小躍りしつつ、次の言葉を探していると

いきなり身体が宙に浮く。

「は?……えっ?」

「ゴルダブル様!」

叫んでいるバムが遠ざかっていく。


恐る恐る後ろを向くと

何と、コートのフードを

巨大な黒い岩で出来た巨人の

右手がつまんでいて、その緑色の左右の眼球のついた

厳めしい顔で俺を見つめていた。


あ、死んだ……これ遠くに投げられて死ぬやつだ……。

一瞬で死を覚悟するが、巨人は俺をつまんだまま

何と残った左手で山をよじ登りだした。

いや、待て待て待て待て待て、いっそ一思いに

ぶん投げてくれた方が、こっちも覚悟がつくのに

これでは物理的な衝撃ではなく

恐怖に殺されそうである。


岩の巨人はそのまま頂上までよじ登ると

俺をそこら中に虹色の鉱石が輝いている山頂へと静かに降ろす。

そして岩で出来たその口を開けて


「ゴシュジンサマ……ワレラ、ゴキカンヲ、オマチシテオリマシタ……」


低く唸るような声を出しながら

何と深く頭を下げてきた。

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