北の果てへ
参加不可……。まさか、こうなるとは思わなかった。
祭りを始めてから今まで全て、上手く行っていたし
これからもそうなると思っていた。
ほぼ全員でうな垂れていると
ピグナがニヤニヤしながら
「まあ、こうなるよねぇ……ワールド料理カップは
大国間の代理戦争みたいなもんだし、
急造の弱小連合国家の要請なんて
そりゃ、一蹴するでしょ」
「お、おう……」
頭の中が真っ白になっていると
バムが無理やり笑顔を作りながら
「皆さん、とりあえず!竜さんの
背に乗って北へと向かいましょう!」
そう提案してくる。
「そ、そうだな……マクネルファー
もう二十日くらい待たせてるもんな……。
早く、鉱石取ってこないとな……」
「ミ、ミスリル鉱石でしたっけ?」
ファイナが尋ねると、ピグナが嫌らしく笑いながら
「スーミルオン鉱石だよー?
まちがえないでねー?」
悪魔の余裕にむかついていると
「も、もう我慢ならんにゃ!
よくわからんけど何か嫌な感じで
笑ってるからお仕置きだにゃ!」
ペップがいきなり、ピグナの両脇をこちょぐりはじめて
俺も含めた他三人も、それに加わって
足裏や首などを、ピグナが笑い泣きして
許しを請うまで、こちょぐった。
ぐったりしたピグナをバムが背負って
みんなで改めて、親竜に乗せてもらう。
「坊や、おいで、飛ぶよ」
青い親竜は、そう言うと青空に舞い上がった。
虹色の子竜も翼をはためかせて上昇していく。
「この大陸の北で良いのだね?一年間真冬だが
その格好では寒いのではないか?」
飛び始めてようやく気づく。
慌てて、元の砂浜に戻って貰い
マサカの街の服屋まで走り込み
コートやブーツや
厚着するための長そでを買い込んで
布袋に全員で詰め込み、
そして全力疾走で、竜の背中まで戻る。
改めて出発である。
空へと俺たちは舞い上がっていく。
「食料は良いのかね?スーミルオン鉱石のある場所は
私たちでも長時間留まっていられない。
それに冷えた坊やの体力回復もせねばならぬから
三泊くらいするつもりで居て貰わないと」
まだ元の砂浜に戻って貰って
慌ててマサカの街に残していった
テントなどが入った大きなリュックを
手分けしてもってきて、さらに食材などを買い込んで、
今度こそ完全に準備が終わっただろということで
竜の背中に乗って、空へと舞い上がっていく。
「……何度もすまないが
見た所武器が、その剣しかないようだが
それでは心もとないのではないかね?
ゴーレムたちの棲家だぞ?」
確かにバムの腰に提げられた
マクネルファーから貰った剣しかない。
また慌ててマサカの砂浜に戻って貰って
武器や防具を並べている鍛冶屋に駆け込んで、
ペップはナイフを買い込み
護身武器の一番必要なさそうな
ファイナは何故か木製の棍棒を買い込んで
一応俺も、鉄のボウガンみたいなものを買った。
バムは鎖帷子を全員分買っていた。
もうさすがに必要なものはないだろ……。
というか気安く行こうとし過ぎたな……。
と皆で反省しながら竜の背に乗ると
「良さそうだ。行こうか」
と目で微笑んだ親竜は俺たちを乗せて
大空へと舞い上がっていった。
空を飛んでいく竜の背で
買ってきた服を着ていき、さらに
コートの下に鎖帷子を着込む。
当然俺はその間、常に後ろを向かせられていた。
背後には楽園が広がっているのにである。
ちょっとくらい、いいじゃないか!
心の中で叫ぶと、ようやく起きてきたピグナが
「あーようやく回復した。痛覚って面倒だね……」
コートを着た俺の背中に腕を回してきた。
「私も着替えるけど……見る……?いいよ?」
と言った瞬間に、背後へと引きずり込まれて
キャーキャー言っている女子たちに
無理やり着替えさせられていく。
さりげなく振り返って見ようとすると、バムから遮られて
「ダメです!神聖なる修行の最中ですよ!」
「はい……」
何か久しぶりに聞いたな……と思いながら
北への地平線と青空をボーっと見つめる。
危険だったら嫌だな……。




