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料理に興味が一切ない俺が、味覚が狂った異世界に転生した  作者: 弐屋 中二
ミチャンポ王国、漁師連合国の諍い

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55/200

紛争一応解決

マサカの街に入った途端に衛兵に担ぎ上げられるように

俺たちは、ヌーングサーの屋敷へと連れていかれる。

「娘が、娘のムーンが良くなったんだ!」

玄関で俺たちを迎えたヌーングサーは

喜びを爆発させて、その筋骨隆々とした体で

俺たちを一人ずつ、熱く抱擁してきた。


「は、はは……良かったですね」

「ここまでしてもらってお礼もできないとは

 男が廃る!何でも言ってくれ!お礼をしたい!」

「首長の座を……」

と言いかけたピグナの口を塞いで

俺は意を決すると、ヌーングサーの両目をまっすぐに見て


「ミチャンポと同盟はできませんか?」

と尋ねてみた。

ヌーングサーは顔を歪めて

「あっちの王がうんと言えばな。無いだろうが」

不快そうに吐き捨てると去って行った。


「あーあ、せっかくの乗っ取りのチャンスをー」

がっくりと肩を落としたピグナに

「いや、今こそ同盟チャンスだろ。ペップに伝えて連れてきてくれ」

あいつが代理王の間の今こそである。

「えーいや、今帰ってきたばかりでしょー?」

「お前ならできるだろ?お前を信頼してるから言ってるんだよ」

そう言って、控えめに両肩を叩くと

「……う、うん。行ってくる」

ピグナはいきなり素直に屋敷を出ていった。


俺はヌーングサーを探して

本気で同盟してもらいたいと再び告げると

彼はギラギラした眼でこちらを見つめてきて

「まあ、ゴルダブルたちがやる気なら

 任せる。ただし向こうの王がこっちに来るとかあればな」


そこからは話が異様に早かった。

ダルそうに王冠を被ったペップが、数人の護衛と共に到着した。

ざわめく街の中を、ピグナに連れられて

漁師たちに囲まれながら、屋敷までついたペップは

「同盟するにゃ。争いは終わりだにゃー」

とやる気なく言って、盟約書にあっさりとサインして

ヌーングサーも目を丸くして、それにサインをする。


「じゃ、私は帰るからにゃ」

ペップはそう言うと、さっさとミチャンポまで帰ってしまった。

ヌーングサーは信じられないと言った顔で

同席している俺を見る。

その夜は、長い争いが終わったと街中が

不味い料理と酒で、大宴会みたいになった。


しかし、まだこれで終わりではない。

相変わらず、この街では毒のような魚を食べているし

根本的な解決にはなっていない。恐らく世界中でこのような光景が

繰り返されていると思うと、心が痛い。

そのためには、何としてでも新たな食王になり

世界の味覚を正さねばならない。


はっきり目標が出来た俺は、翌朝

ヌーングサーに、世界料理連盟にミチャンポ王と

連名で加盟申請と、俺たちを国の代表と認めて

ワールド料理カップへと、出場させるようにしてくれと

頼んだ。


ヌーングサーは喜んで、ミチャンポへと使者を送り

そして、連盟の申請書類がその日の内には

海の向こうの世界料理連盟事務局へと送られた。

最短でも、それが帰ってくるのは一か月後らしいので

その間に俺たちは、漁師連合の人間たちの

健康を蝕む、毒魚料理を何とかしようと思い立つ。


バムや、味覚があっち側のファイナの協力も得ながら

何とかクソ不味いが、人間が食べれるレベルの

魚料理を数種類考案して、ヌーングサーに食べさせると

「な、なんと、世の中にはこんなに旨いものがあったとは……」

と直ちに部下たちを呼び寄せて、食べさせだした。


今まで料理大会を二回も良い所まで勝ち抜いてきているので

この世界の人間たちの好みは、何となく知っているのが

功を奏したようだ。

そこまでで半月が経ち、手持ち無沙汰になり始めた俺たちは

一度、バルナングス共和国に戻って、

マクネルファーの様子を見ようということで一致する。


ペップは代理王なので動けないが、いずれ動けるようになったら

世界を旅させると不満顔の彼女を宥めて

俺たちは再び、ミチャンポから北上し始めた。

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