方向修正
ピグナがさりげなく貰ってきていた
ロータムのダイコンを使って、バムはスープを作ってくる。
当然ファイナ用のものが入った皿もある。
起きてベッドの上で上半身を起こしたファイナに
献身的にそれを食べさせるバムは偉いなと思う。
臭いが酷いので、俺には無理である。
ピグナと離れたテーブルでスープを啜り、切られた具のダイコンを
食べていると、ファイナにスープを飲ませたバムが
こちらの輪に入ってくる。ファイナはまた寝てしまったようだ。
スープを啜りだしたバムに
ピグナとさらに詳しく今の状況を説明して
今後の対策を立てる。
「乗っ取らずに、何とか料理選手権に出られる方法は……あっ……」
バムが思いついた顔で俺たちを見て
「連邦のように同盟を結ばせて、二か国の代表と言う形で
出させてもらえば良いのでは?」
ピグナは嫌そうであるが、俺は即座に賛成した。
「えー中途半端でしょー?」
文句を言いだしたピグナに
「お前の悪魔パワーで世界料理連盟を操れないのか?」
「それできたらやってますってー。そういう世界的な団体には
色んな強力な神や悪魔がバックについてるんだよー」
「そっか、前にも聞いたな……」
そんな話はどこかでしていた。
「じゃあ、ということで同盟に向けて頑張ってくれ」
「乗っ取ろうよー。あと少しなんだけどー?」
「ピグナさん、宜しくお願いします」
バムから頭を下げられて、ピグナは仕方なさそうに頷いた。
その日はその宿に泊まり
翌日は、回復したファイナも連れて、ペップの実家を訪ねてみることにした。
ヌーングサーの娘が回復するまで、あと一日なので
時間つぶしの見学だ。
地図を見ながらその広大な田園地帯までたどり着く。
平坦な農地から、段々畑まで多様である。
農地を分け入って、その中心にドンと建っている大きな
屋敷を尋ねると、ちょうど朝の農作業を追えて
休憩中の父親のロータムが出迎えてくれた。
応接間に招かれて、俺たちはお茶を出されて
嬉しそうなロータムから
「いやー本当にバカ娘もどうにかなりそうでよかったですよ」
「そんなにおバカだったんですの?」
バムから謎の粘り気の出る粉をお茶に混ぜられたファイナが
それを美味しそうに飲みながら尋ねると
「バカもバカ。身体が健康なだけのバカでねー。
親としては心配続きだったんですが、今や代理王だ」
「そもそもなんで代理王になったんですか?」
「物怖じしないからでしょうなぁ。王によると器は大きいらしいです」
その後、俺たちはロータムに連れられて農地を見学して
野菜や果物のお土産を大量に持たれて帰途についた。
宿屋へと戻るころには昼前になっていて、ピグナが
「じゃ、そろそろ帰るから。同盟に向けて
がんばるから、バムちゃんも頼むね」
「はい。頼みますね」
俺たちはそうして、再びマサカの街へと向かいだした。
意外と簡単に丸め込まれたピグナに
「同盟でいいんだよな?」
帰りの道中で念を押しておく。
「……まあ、バルナングスの時みたいに棄権されたら
困るし、仕方ないかなぁと」
「ヌーングサーは娘が治ったら、態度がまた変わるのか?」
ピグナはニヤリと笑って
「まあ、見ててよ。これからが面白いから」
と自信ありげに言ってきた。
ホントかなと首を傾げて、海沿いの街へと二人並んで戻っていく。
とりあえず方向修正はできそうである。
ひどいことにならなければいいが。




