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料理に興味が一切ない俺が、味覚が狂った異世界に転生した  作者: 弐屋 中二
脱走~バルナングス共和国編

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妨害

朝早く起きて、起きだしてきたバム達と共に

朝食を食べた後に決勝戦へと出かける準備をする。

ピグナはウキウキした顔で

「あー楽しみだなーどうしてやろうかなー」

一人でブツブツ呟きながら、部屋を歩き回っている。


一時間ほどで準備が済んで

ちょうど起きだしてきたマクネルファーに

出かけると告げて、四人で競技場へと向かう。


「決勝戦の相手はどんな方達ですの?」

ファイナが、バムに尋ねて

「覆面の三人だそうです。名前も調べましたが

 まったくの無名の新人で、料理も様々なレパートリーが

 あるようです」


透明になってついてきているピグナが

「くくく。知ったら驚くと思うよ」

一人で後ろで笑っているが、俺たちは

いつものようにスルーをする。


競技場へと向かい、控室で試合を待つ間に

どのような料理をつくるか

綿密に打ち合わせる。

ファイナが黒焦げの料理が良いと

言ってきたので、俺とバムで話し合い

不味く造ったパンを、黒焦げにして

それを濡らすことにした。

「ひどいねーこの世の地獄だねー」

ピグナはニヤニヤとしていた。 


二時間ほどすると、決勝戦が始まったので

俺たちは半分に分けられた舞台の右側へと上がり

審判員たちの笛の合図と共に、料理を始める。

パンの生地をこねる所までは良かったが

どうにも用意された窯に火がつかない。


透明なピグナが俺たちの後ろでため息を吐いて

「ちょっとそこどいて」

俺たちを窯の前からどかすと

ボコッ、バキッと何かを殴る音が

窯の前の何もない空間からしばらく聞こえて

「終わり。じゃ、仕事してくる」

そう言うと、ピグナの気配が消えた。


俺たちは首を傾げながらも

とにかく料理を続ける。

二時間ほどかけて、無事に

食べ物とは思えない、真黒に焼け焦げた上から

水に浸された何かを造り出した。


ファイナに試食してもらうと

涙目で頷きながら

「いけますわ!優勝間違いないですわ!」

感動した顔をしてくれたので、バムと俺は

安堵する。


その後、まだある持ち時間を

ダラダラと雑談などして過ごしていると

向こうのチームの様子がおかしいのに気づく。

ローブのフードで顔を隠した三人が

必死に料理をしようとしているのだが

まったく進んでいる様子が無いのだ。


「大丈夫なのかな?」

「ピグナさんが、妨害しているのかもしれませんね……」

バムも心配そうだが、ファイナは気にせずに

「良いのではないですか?契約したでしょう?」

「ま、まあ確かにそうだけど……」

不正して勝ったとなると後味が悪い。


そんなこんなで制限時間は過ぎていき

審査タイムになった。五名ほどの威厳のある審査員たちが

俺たちの料理を食べに来て、全員喜びの涙を

流して帰っていく。ファイナは胸を張り

俺とバムは何となく居心地が悪い。


向こうのチームは何とか料理は出来たらしく

審査員たちに食べさせるが

全員即座にその場で、嘔吐して、中には

そのまま倒れて気を失い、搬送されていく人も居るのが見える。

本気で心配になっていると、いきなり

向こうのフードの男の一人が、服を脱ぎだした。


赤毛の髪が曝け出されて

「あっ……ラスネル……」

バムが口を抑えて驚く。ラスネルと言えば

元魔法ギルドの長である。

「また、邪魔しに来たんですの!?」

呪文を詠唱しようとしたファイナをバムが

手で押しとどめて


「何か、様子がおかしいですよ?」

ラスネルはフードとコートを脱ぐだけでなく

その下の洋服とさらに下着まで全て脱いで

何かを意味不明なことを叫び始めた。

即座に衛兵たちが、駆け付けてきて

退場させられていく。


「……」

俺たちは唖然としていると

背後からピグナの声がして

「才能あったから、露出狂にしてみた。

 どうだった?」

「……」


唖然としていると

向こうの残りの二人のチーム員も

何かを恐れるように悲鳴を上げて舞台から

逃げ出して、競技場の観客が

どよめいたまま、審査員たちが俺たちの

方へと歩いてきて、毅然とした顔で


「チームゴルダブル優勝!」


と大きな声で告げた。

ファイナは飛び上がって、手を叩いて喜びだしたが

俺とバムは、目を合わせる。

何とも言えない、嫌な感触が残った。

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