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料理に興味が一切ない俺が、味覚が狂った異世界に転生した  作者: 弐屋 中二
脱走~バルナングス共和国編

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35/200

決勝戦へ

翌朝、俺たちと、透明になったピグナは

競技場の舞台に立っていた。

料理大会の四回戦が開始されて

用意された食材で、三人で不味い料理を作っていく。

「あーそうかーしょうもないねー」

ピグナは料理を見ているようで背後から

声をかけてくる。


「ちょっと黙っていてくださらない?」

「そこに塩をスプーン一杯と、ついでにそこの黄色い

 香辛料を入れたら、もっと不味くなるよ?」

バムは無視して、腐った卵で練ったパン粉に砂糖を振りまいて

赤い香辛料を、その上から振りかける。

「まあ、それでもいいけどねー、

 でも、そんな調子でこの先、大丈夫?」


ピグナは透明なのをいいことに言いたい放題である。

「護衛に専念してくれないですか?」

バムが毅然と言うと、しばらく黙るが

それからまた余計なことを言い出す。

いい加減イライラしてきた時に、

ようやく料理が完成した。


抹茶色で所々紫や黄色の突起が浮き出ている

謎のパンケーキ状の物体である。

ファイナが一口食べて、感動で泣きそうな顔をしていたので

俺とバムは試食するのは控える。

「うげっ……そんな悪魔でも作らないような

 地獄の料理か……あんたたちのカルマやばいよ?」


ピグナの言うことは無視して

とりあえず審査員に食べさせ、俺たちは無事に

四回戦を突破した。これで今日は終わりである。

まだ先は長いらしい。

競技場から出ると、バムは食材の買い出しに行って

俺とファイナは、新マクネルファー研究所に戻る。


建物内に入ると、身体を現したピグナが

「地上ヤバいわ……呪われてるあんたにちょっと同情する」

とファイナの肩を叩いて、廊下の奥へと歩いて行った。

「なんのことですの?」

「さあ?」

恐らく味覚が狂っていることだろうが

言っても仕方ないので、誤魔化して、俺たちも

それぞれの部屋へと戻った。


その後、翌日の五回戦も、翌々日の六回戦も

ピグナの誘惑には負けずに

どうにか不味い料理を自力で作って

勝ち抜いて、俺たちは明日いよいよ

決勝戦に出場するということになった。


新マクネルファー研究所に戻って

夕食を食べた後に、応接間でバムと

明日の話などをしながら寛いでいると

ピグナが入ってきて

「ねぇ、明日の相手やばいよ。

 あたしが必要なのわかってる?」

といきなり言ってくる。


訝し気に二人でピグナを見つめていると

「だから、相手も悪魔と契約してるって言ってんの。

 いよいよあたしの出番でしょ?」

「それは本当ですか?」

「こんなつまらないことで、ウソついて何が面白いの?

 で、妨害してもいいよね?」


俺は少し考えて

「本当なら、頼むわ。嘘だったら

 とっとと冥界に帰れよ」

「だーかーらー本当だって、相手の召喚してる悪魔は

 三下だから、試合始まったら私が適当に小突けばいいよ」

ピグナを無視して、バムが風呂に入りに行ったので

俺も寝室へ向かう。


ベッドに入ろうとすると、何故か先にピグナが

入っていて

「あのさー。お風呂覗きたいんでしょ?」

上目づかいで尋ねてくる。こいつに嘘は吐けないと

思って頷くと、ニヤリと笑って


「見せてあげようか?」

十秒ほど固まってどうするか本気で考えたが

俺は首を横に振った。

「つまんないなー溜まってるでしょ。抜いたげようか?」

それは即座に首を横に振る。ご免だ。


「ファイナちゃんもさー頭固いんだよねー。

 もっと融通利かせた方がよくない?

 世の中、ズルい方が勝つようになってるけどねー」

「……ルールを踏まえた上だろ?」

何も知らない俺たちが抜け道を使っても、

しょうもないことになる気がする。


「まーいっか。明日見ててよ。

 悪魔の力見せてあげるからねー」

ピグナはニヤリとそう言うと、部屋から出ていった。

俺はホッとして、部屋の照明を消し、眠りにつく。

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