新拠点
どうやらもう昼過ぎらしい。
バムから美味い朝食を食べさせて貰いながら
「料理大会って、あと四日だっけ?」
「そのくらいですね。明日にでもエントリーします?」
「そうだな。それがいいかもしれない。
宿から荷物は持ってきた?」
バムは頷いて朗らかに
「初めての、私たちの土地と建物ですね!」
「う、うん……いや、でもいいのかなぁ」
役人は来ないにしても、魔法ギルドを追われた魔法使いたちが
逆襲に来たりしないだろうか。
「大丈夫ですよ!悪人への報いです!」
迷いなくそう言ってきたバムに
若干おびえつつ、とにかく考えないことにして
朝食を食べ終わる。
二人で一階奥の大広間に設置された
マクネルファーの料理機械を見に行くことにする。
大きな扉を開けて入ると
何やら怪しげな機械だらけの中では
マクネルファーがさっそく実験をしていた。
「おお、起きたか。プラグナ二ウムのお陰で
機械の調子が良いぞい」
「爆発しなさそう?」
「今度こそは大丈夫じゃろう」
「何の実験をしているの?」
「うむ。さっそく狂人どもの味覚と
我々常識人の味覚の境界を探っておる」
マクネルファーは何やら謎の液体を機械に注入しながら言う。
「よ、よく分からないけど、頑張って」
とにかく、この広い建物を貰ったのだから
使わなければいけないのは確かだ。彼に使って貰おう。
「ファイナさんは?」
「三階のお部屋で寝ていますよ。
ずっと興奮して朝まで、助け出されたときの感動を
喋ってましたから」
バムが少し呆れた顔で言う。俺は苦笑いしながら
「仕方ないよ。トラウマにならなくて良かった」
部屋から二人で出て、廊下から外の様子を見ると
確かにバムが言ったように、人だかりが外の道には出来ている。
今日は出ない方が良さそうである。
なんか、よく分からないうちに拠点が出来てしまった。
とりあえず、先ほどの二階の部屋へと戻る。
「あ、私、寝てないの今、思い出しました……。
あの、そこのベッド使わせてください」
申し訳なさそうに言ってきたバムに頷くと
俺が先ほどまで寝ていたベッドに寝転がり
「……すいません。寝ます」
すぐに目を閉じて寝てしまった。
まあ、色々あったから、大変だったよな。
とバムのあどけない寝顔を眺めていると
恐ろしいキレ具合に、驚いたけど
こうして静かに寝ていると、やっぱりかわいいよな。
た、多分、俺たち両思いだし、き、キスくらいしても
い、いや、やはり、それは……しかし……。
十五分くらい、頭の中が堂々巡りになりながら迷って
最終的には、よし、やろう!ここはやらねばなるまい!
と邪な結論に達した俺は
唇をバムの柔らかな頬に近づける。
あと数ミリという所で、マクネルファーが部屋の
扉をいきなり開けて駆け込んできた。
「ゴルダブル君!ミルバス市議会から派遣された調査員が来たぞ!
今回の騒動の説明を求めてきておる!」
一瞬、頭が真っ白になる。
やっぱり役人がきたああああああああああ……。
バムは今寝たばかりである。騒動についての説明とか
言われても俺には何も説明できない。
「とにかく!わしとともに、同席して貰いたい!
一階の応接間で待たせておる!」
マクネルファーに引っ張られるように
一階への階段を下りていく。




