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セメカ

次に気づいたら、どこかの森の中だった。

ジャージ姿で立ち上がる。

電気ショックで死んだような気がしたが

気のせいだったようだな。


ポケットを探るが、スマホも財布も無い。

どうやら失くしたらしい。

ボーっとした頭で周りを見回す。

静かな森の中だ。


拉致されたのか?

いや、もう別にどうでもいいけど。

会社も辞めるつもりだったし

ほんとどうでもいい。


フラフラと近くの獣道を歩いていくと

いきなり背中に悪寒が走る。

ゆっくりと振り向くと

背後には、三メートルはありそうな熊が

恐ろしい形相で立っていた。


ゆっくりと後ろへと後ずさりすると

その分だけ殺気だった熊も前へと前進してくる。

お、おい……ギャグ漫画かよ。

このままだと俺、死ぬよな……。


焦りながら後退していくと

急に頭上から

「あちょー!」

という元気の良い声がして

皮のビキニ姿の浅黒い肌の女の子が木の上から飛び出してきて

持っていた硬そうなハンマーで

熊の頭を思いっきりぶっ叩く。


熊はそのままうめき声をあげて

沈み込むように、倒れてそのまま動かなくなった。

ビキニの女の子はしゃがむとパンツに差していたナイフを

鞘から取り出すと、刃を出して

倒れている熊の頭に何度も突き刺し始めた。


グロ……いや、本気でグロいだろ。

何なんだよ一体。顔をそむけつつも

女の子から目は離せない。

鮮血で血まみれになった女の子が

クルッとその顔をこちらに向けて


「ありがとね。こいつ、うちらの村の作物

 荒らしてたやつで、ずっと探してたんだ。

 良かったら、私と一緒に村まで引っ張って行ってくれない?」

そう言いながら近くの木の蔓や蔦を使って器用に縄を造り始めた。

いや待て、死体とは言え、数百キロくらい体重ありそうなんだが。

と戸惑っていると


女の子は俺を見つめて「あっ」と気づいた顔をする。

「私がセメカだからか……」

手は素早く動かしつつも、いきなり沈んだ顔になった女の子に

「セメカ……?」

と尋ねると、ちょっと嬉しそうに

「知らない?不味いものしか食べない原住民って

 私たち言われてるの」


「知らないな」

そう言うと、女の子は蔦と蔓で造った頑丈そうな縄を渡してきて

「じゃ、これを熊の首に巻くから

 二人で村まで引っ張って行こう?」

顔の鮮血を手で拭きながら、ニッコリ笑ってくる。

行く当てもないので、言われたとおりにすることにする。

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