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閃光

「ど、どこで見つかったんだ?」

「ロカルナーラ共和国という小国東の山中らしいにゃ。

 地元の人が近寄らない聖域と呼ばれた場所があって

 半分ぐらい埋まった、木に絡みつかれた機械の船が

 そこに横たわってたそうだにゃ」

「みんなは?」

「もう準備してるにゃ。ゴルダブルもこれ食ったらいくにゃ」

ペップはサッと、サンドイッチを出してくる。

上半身を起こし、受け取って口の中に入れる。


食べ終わると、ベッドから立ち上がって

ペップが差し出してきた上着を着る。

「今度こそ、本当に最後だよな?」

「だと思うにゃ。むしろ私たちが最後にするにゃ。

 食王を滅ぼして、バムちゃんを救出するにゃ」

「ああ、そうしよう」

ペップの案内で、灯火に照らされながら

宮殿の後部へと行くと

広大なスペースに、灯火に照らされた飛行船が停まっていた。

入り口のタラップの前には、仲間たちが待っている。

二人で近寄ると、ファイナが

「来られましたわ。さあ、行きましょうか!」

ファイナがそう言って、全員でタラップを登り

そして飛行船へと入っていく。


ピグナが操縦席に座って

「操縦はあたしたちがやるよ。

 上級天使の力でさっきむりやり習得した。

 見送りも断ったからね。

 これはあたしたち全員でカタをつける戦いだ」

副操縦席に座らされたパシーは

ピグナに細かく指示されたとおりに

必死にツマミとレバーを操作している。


飛行船が飛び立つ直前に

マクネルファーがタラップに駆けこんで

閉まった扉を叩いてきた。

慌てて開けると、貴族服を着たマクネルファーは

必死に扉を閉めて、浮き上がった飛行船の下で

その名を叫んでいるマリアンヌ帝を見て

そのまま扉をズルズルと滑りながら

座り込んだ。


「来ないかと思ってけどにゃ」

「い、いや……マリーと居るくらいなら

 死地に赴いた方がマシじゃわ」

「じいさん、戦力ににゃるのか?」

「ふっ、年寄りを舐めるなよ」

マクネルファーは懐からダイナマイトの束を

取り出してきて

「これで食王を粉砕してやるわ!」

「……危ないだけだにゃ」


俺は無言でファイナに手を引かれて

後部の座席に二人で並んで座る。

「あの、ゴルダブル様、今度こそ、この戦いが終わったら

 あの……第二夫人でも良いので……あの……」

顔を真っ赤にしたファイナに

「生き残ったら考えよう」

「それでは駄目ですわ。今、ここで……」

操縦席からピグナが振り返って

「ファイナちゃーん!聞こえてるよ!」

と注意してきて、ファイナは苦笑いすると

「考えていてくださいな」

俺が頷くと、ファイナは別の席へと行った。


窓の外は暗闇だ。暗闇の中を飛行船は進んでいく。

前回とは心構えが違う。

砲弾でなく、人として食王を倒しに行くのである。

それに今度こそ、本当に終わりそうな気配がある。

きっとバムを救って、そして……。

俺は不意に意識を失った。





「ゴルダブル様!」

バムと手を繋いで、レンガで造られた通路を逃げている。

天使の羽根は無い。いつもの皮パンと皮ブラ姿である。

「あ、あれ……?飛行船で……」


「ここは食王に支配された精神領域の中です!

 ゴルダブル様が何度も、食王の意識を弱らせたので

 逃げることができました!」


「なんかやったっけ?」

「今、食王の意識は、ゴルダブル様から逆浸食されて

 野球とスイカのことで頭が一杯です。

 今なら、私もここから脱出できます!」

「まったく身に覚えが無いけど……」

とにかくバムの手を握って

ずっと同じような景色が続く、

曲がりくねり、枝分かれする迷宮の中を

延々と走り続ける。


いつまでも変わらないように見えた景色が

外へとの光を遥か先に出現させて

一瞬、俺がホッとして、気を緩ますと

バムの身体を真っ黒い巨大な手が鷲掴みにして

そして元来た道へと一気に引きずり込んでいった。

「バム!」

「ゴルダブル様!」

二人の名前を呼び合うがもう遅い。

黒い手について行こうとした俺を

背後の光が一気に吸い込んでいく。


「バム!!!!!!!!!!!!」






次に目を開けると

まだ飛行船の中だった。窓の外は朝焼けである。

辺りの座席では仲間たちが寝ている。

先頭の操縦席から、ピグナがこちらへと

歩いてきて

「大丈夫だった?」

「あ、ああ……操縦は?」

「かなり前から自動に切り替えてた。

 バムちゃんの名前を叫んでたけど……」

今、見た夢の内容を説明すると

ピグナは腕を組んで、何度も頷く。

「今がチャンスかもしれないね」

「とにかく、宇宙船にはもう着くから

 心配しないで」

ピグナの言葉と共に、いきなり足元から

何発も砲撃音が響いて

窓の外を砲弾らしき光が上へと通り過ぎていく。

ピグナは慌てて、操縦席に戻って

隣の副操縦席で寝ているピグナを叩き起こし

「下から攻撃を受けてる!

 ゴルダブルもみんなを起こして!」

俺は焦って、仲間たちを起こそうと

立ちあがると、その瞬間に凄まじい衝撃と共に

辺りが爆発音と閃光に包まれた。

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