身体の復活
耳元の大声に驚いて起きると
ピグナとファイナとパシーとペップと
あとは王冠を被った骸骨……冥界の死神長と
さらにキクカに囲まれていた。
「どうしたんだ?」
「ノルノルがゴルダブルに中身の身体をくれる。
ありがたく思え」
キクカが真剣に言ってくる。
「あのなぁ、キクカちゃん、ちゃうで?
お友達やろ?もっと優しく」
死神長はカタカタと顎骨を揺らして笑いながら
俺の額に骨だけの右手を当ててきた。
「よし。採寸ばっちりやったわ。
じゃ、ゴルダブルさん行くでー」
軽い調子で死神長はそう言うと
「冥王の肉片よ。強き皮に宿り給え
その尊貴で汚濁に塗れた血液よ。
彼の者の身体を駆け巡り給え。はっ!」
スラスラと呪文のようなものを唱えて
少し力を入れた。
すると、いきなり何か皮になり折りたたまれた
俺の身体がモリモリと膨らんでいき
そして次第に全身に感覚が戻ってくる。
「うっ、ああああああああああ!」
思わず雄たけびを上げてしまうと
ベッドの上で、完全に俺の身体は元に戻った。
真っ赤な顔をしたピグナがサッと
下半身にバスタオルをかけてくる。
たしかに裸である。
「あ、ごめん」
「まず謝るんかい。まあええか。
でな、その身体、冥王様の肉片を多少頂いて
造ってるから、強いで。以上や。
じゃ、忙しいからまたな」
死神長はそういうと、あっさりと消えた。
キクカは頷いて
「これで、こちらの準備は整った。
あとは発見を待つだけだ。
風呂に行くぞ。私おすすめの秘湯だ」
とパシーとペップの手を繋いで
外へと連れだしてしまう。
残ったピグナとファイナが何か
顔を真っ赤にして、こちらを見てくる。
二人は俺ににじり寄って
「あ、あのさ……バムちゃん
食王と融合してるから……」
「そ、そうなんですわ。それにキクカさんに頼んで
ペップさんも帝都遠くの山奥にある秘湯に
パシーさんの翼で連れて行ってもらうことに
しました……もう飛んでいるはずです」
「え。つまり……」
「ひ、卑怯かもしれないけど
こんな機会じゃないと、ゴルダブル絶対に
フリーにならないでしょ?」
「だからわたくしたちで相談致しまして……」
「……」
真剣に考え込んでしまう。
実現すると三人同時プレイである。
人生でこれから一度もないかもしれない機会だ。
しかし、人として、バムが苦しんでいる
この機会を利用するのは良いものか。
しばらく眼を閉じて悩んで
やはり断ろうと目を開けると
下着姿になった二人が、左右から
俺を押し倒すところだった。
めちゃくちゃ柔らかい。いい匂いもする。
顔に近づいた二人の唇から甘い吐息がかかる。
あ……もういいや……やっちゃお……。
完全に性欲に負けた瞬間に
「たーすけてくれええええええ!!」
ときなり部屋の扉が開いて
褌一丁のマクネルファーが駆け込んできた。
体中に口紅のキスマークがついている。
ベッドで抱き合っている俺たち三人を見て
「よ、よかった……やはりここじゃったか……」
マクネルファーはその場に崩れ落ちた。
ファイナとピグナは一瞬唖然としてから
仕方なさそうに、服を素早く着こんで
そしてマクネルファーを介抱しはじめた。
あれ……あれぇ……あれ?
俺は今、二人の女子から押し倒されて
至福の時間を味わおうとしていたら
褌一丁のじいさんが駆け込んできて
そして気づいたらベッドに一人取り残されていた……。
な、何を言っているのか……わからねぇと……
いや分かるか!分かるはずがない!
マクネルファーは気を取り直して
フラフラと立ちあがる。
そして俺が呆然としてベッドに近寄って
「最中にすまんかった……でも
見てくれ……この老人虐待の数々を」
と自分の身体中についたキスマークを見せてくる。
ファイナとピグナが呆れた顔で近寄ってきて
「また、自逆風自慢ですわ……」
「じいさん、さっさと皇帝と結婚しちゃいなよ……」
「い、嫌じゃ!あんなのと付き合ってたら
身体が幾つあってもたらんわい!
……ということで、今日はこの部屋に匿ってくれ」
マクネルファーが土下座してきたので
もう見捨てるわけにはいかない。
彼も冒険を共にした大切な仲間の一人である。
十分後。
俺は寝袋で床で一人で寝ることになり。
褌一丁で身体が冷えたらしく震えだした
マクネルファーは、ファイナとピグナに
囲まれて寝ることになる。
何かがおかしい。
やはり、どう考えても何かがおかしい。
俺は身体を取り戻して、女子二人から
押し倒されて……あれぇ?なぜ、見慣れた寝袋で?
普通ならば、今頃仲間たちが身体の復活を祝ってくれて
冥王がどうたら、言ってたから
この身体の由来とかも説明されているはずなのに
なぜ、一人で床の上で寝袋で?
そして柔らかい女子たちは、マクネルファーと?
何度考えても、答えが出ないので
俺は、もう考えるのを止めた。
そして、寝袋で寝入ることにする。