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公式試合

ペップに抱えられながら

宮殿の煌びやかな廊下を進んで

扉が開きっぱなしの、会議室へと入っていく。

ペップに抱えられている脇から見た

円卓には、最も奥にマリアンヌ帝、そしてその左右からグルっと

いかめしい顔の要人たちが囲んでいる。

知っている顔を見つけた、髭もじゃで巨漢のエルディーン王だ。

もちろんキクカも黙って座っている。

そして何とペップは俺を膝に置いて

その並んでいる席のひとつに座った。


マリアンヌ帝が立ちあがり

「ミチャンポ王国の代理王が来られたので

 これより会議を開始する」

すると要人たちは一斉に拍手し始めた。

「では、今回の議題に時間が無いので入らせてもらう」

マリアンヌ帝はそう言うと

大きな板を背後へと兵士たちに持ってこさせた。

どうやら世界地図が描かれている地図らしい。


「ここが我が国の領土で、これから全兵士を使って

 食王が乗ってきた機械船を探索する

 他の国々の方々も

 自国領土をくまなく探索して欲しい。

 その際に注意していただきたいのは

 発見した場合には、刺激をしないことだ。

 我が国の飛行伝令部隊を、各国に非武装で

 五十人ずつ派遣するので、直ちに彼らに報告を」

マリアンヌ帝は全て言い終わると

頭を深く下げて

「よろしくお願いします」

と代表たちに頼み込んだ。


全員が頷き返すと

「では、御意見が無ければ解散とするが……」

エルディーン王が手を挙げて、指名される。

「陛下におかれましては、我が不肖の娘を……」

マリアンヌ帝は再び立ち上がって

「やめてくれ。彼女が特級の魔術師なのは

 もはや、世界が知っている。

 名誉を追認する表彰は戦後にしたい」

エルディーン王は満足した顔で引き下がった。

ペップが小声で

「ファイナちゃんを公の場で自慢したかっただけのようだにゃ」

そして会議はそのまま解散となり

ガラガラになった会議室で

俺たちは残ったマリアンヌ帝から呼ばれる。


「ゴルダブルは皮だにゃ」

ペップがペラペラの俺の頭を見せてくる。

マリアンヌ帝は真面目な顔で頷き

「できる手はすべて打った。あとは

 見つかるのを祈るのみだ」

「私たちは何をしてればいいにゃ?」

「休んで、英気を養ってくれ」

「分かったにゃ。あと悪いけど

 ミチャンポ王国にに私の手紙を届けておいて

 くれにゃいか?王は怠惰だから、

 手紙で探索やるように脅しとくにゃ」

そう言ってペップは直接、マリアンヌ帝に手紙を渡す。

「飛空艇で今日中に届けさせよう」


俺は特に発言することもなく

またペップに持たれて

会議場を出ていく。

「ふぅ。終わったにゃ。

 ファイナちゃんは、お父さんと会食するって言ってたし

 ピグナちゃんは、天使のお仕事してるにゃ」

「そうなのか」

「パシーはピグナちゃんの補佐だにゃ。

 じいさんは、たぶん……どっかに軟禁されてるにゃ」

「ああ、皇帝がな……」

「ということで、ゴルダブルは私と居るといいにゃ」

「そうするわ……」


部屋に戻ると、ペップは窓際に俺を

折りたたんで置いて、風呂へ行くために出て行った。

外の景色が絶妙に見えないので

仕方なく天井でも眺める。

ああ、バムは大丈夫だろうか。

しばらくそうしているとボーっとなり

眠り込んでしまう。




起きると、中学の時の公式試合の会場だった。

俺は打席に立っている

ピッチャーは全身真黒なバムだ。

両目から血の涙を流しながら

微笑んでいる。

俺はバットを構えた。

キャッチャーが背後から

「ホームランだよ。打っちゃえば全部終わる。

 最悪ツーベースでもいいな。

 今、ストレートでど真ん中のサインを出したから

 迷わずに振るといい」

チラッと横目で見ると、キャッチーは何も被っていない

真黒なバムだ。グラブを構えてしゃがみこみながら

こちらをチラッと見てくる。


俺は迷わずに第一球目掛けて

振り回した。球は下へと曲がった。

フォークだったようだ。

「チッ。まだ、意識が残ってたか。

 次こそ、ストレートだ」

俺は頷いて、第二球も思いっきり振った。

斜めに曲がった球がバットをカスって

ファールになった。

「クソッ。しつこいな」

キャッチャーの黒いバムは立ち上がって

マウンドへと駆けて行き、

ピッチャーの黒いバムに

何かを耳打ちする。

そして、素早く戻ってきた。


「これでもう大丈夫。ど真ん中ストレートだ」

俺は頷いて、大三球を思いっきり見逃した。

なぜかそうすべきだと思ったからだ。

「おい……振れと言っただろ」

キャッチャーが立ちあがって俺の胸倉をつかんできた。

しかし、それと同時にベンチから

当時の仲間たちが駆けてきて

いきなり乱闘になる。


「くっ……強い絆の思い出かぁ……侵入経路をまちが……」

俺も仲間たちと共に、キャッチャーのバムを

ボコボコにしていると

辺りの景色がぼやけてきた。

遠くでは、三番の奴を応援していた彼女の

「やっちゃえータジ……!」

という声が響いて、嫉妬でむかついた俺は

バットでボコボコに黒いキャッチャーのバムを殴りまくっていると

いきなり



「おっきろにゃあああああ!」



と空からペップの声が響いて

辺りの景色が崩れていく。

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