行方不明
「天界でも大騒動になってるみたいで
あたしの知らない大天使たちが
さっきからずっと、頭の中で現地に何か
変化がないか、聞いてきてる」
「……バムが……なあ、それと関係あるのか
わからないけど」
食王に衝突したあとに見た二度の
遊園地と、水族館の夢について話すと
ピグナは青い顔をし始める。
「あのさ、あたしの推測でしかないんだけど
最初の遊園地の時にもしかすると食王は
ゴルダブルと一時的に融合してたんじゃないかな……」
「そっ、そうなのか?」
「推測だよ?でも、その後にゴルダブルそっくり
黒い巨大な体になって現れたでしょ?」
「確かに……」
「で、今度は、その出口に真黒なバムちゃんが
居たということは……」
ピグナはそこで辛そうに一旦、口を閉じて考え込んで
「たぶん、パシーとかオーガ女たちを
遠隔操作しているところから感覚に入られて
乗っ取られたんじゃ……」
「うわぁ……」
ヤバいということは俺にも分かる。
「なあ、俺たち二度も食王を倒したよな?」
「そうだよ。そしてそれは再現可能だからね。
あたしたちの連携の破壊力は、もはや食王を凌駕してる。
でも……」
「バムと食王の能力が組み合わさったら……」
ピグナはまた眉間にしわを寄せて考え込み
「きっと、バムちゃんも抵抗してると思うんだよ。
あれだけの力を持ったバムちやんがあっさり
融合されるわけがない。
だから、食王は融合が完成するまで姿を消した」
「さ、探さないと……」
だが俺は皮である。口と目は辛うじて使えるが
何もできない。
「ねぇ、ゴルダブル、食王がピンチになったら
行きそうな場所の見当がつかない?」
「ちょ、ちょっと待て。考えてみる」
両目を閉じて、今まで起きたことを
高速で頭の中で辿ってみる。
ないないないないないない、くそっ……
どこにもそんな話は聞いて……いや……。
「あっ、バムが確か……」
「うん。なんでも言って」
「確か、食王は……この世界に来たときに
機械に囲まれていたと……そして
この星の生き物じゃないと……」
ピグナがあっと口を開けて
「そうか!宇宙船か!それを探せば!」
「なあ、ワールドイートタワーの可能性もないか?」
「そっちは、嵐が消えてるからもう天界と冥界の
大探索チームが入ってるけど、まだ何も……」
「そうか、ならこの星の隅々まで
宇宙船を探さないと……」
「ちょっと、頭の中でうるさい大天使どもに
今のことを話してみる」
「ああ、頼む……」
何もできないので、空を見上げていると
ファイナが走ってきた。
「やっと巨大オーガさんたちを冥界へと帰らせましたわ。
ところで、なにやらマズイことに
なっていると、トレーナーパイセンさんたちから
お聞きしましたが……」
今までの話をするとファイナはキッと空を見上げ
「やはり、世界はまだ危険なままなのですね。
わかりました。宇宙船探索の事、冥王様に伝えるように
トレーナーパイセンさんに言ってみます」
ファイナは来た方向へと駆けて行った。
入れ替わりでマクネルファーがやってくる。
「ふぃーやっと、マリーから逃げおおせたわい。
ありゃ、どうしたんじゃ?二人とも怖い顔して。
食王は死んだんじゃろ?ロボットで自爆せんでよかったわ」
目を閉じて一人でブツブツと通信しているピグナの代わり
俺が、また先ほどの話をすると
マクネルファーは
「……世界の危機なら仕方ないのぉ。
マリーに帝国兵を使って宇宙船の探索と
それから世界各国へと、連絡をするように
言ってみるわい」
ニヒルに笑って、去って行く。
皮のわりによく頑張ったと思う。
ちょっと休むか、と空を見上げるのをやめて
両目を閉じると、いきなり意識が落ちた。
「パパーあのさーママがねー」
見覚えがあるアパートの一室だ。
確か、俺の部屋じゃないか……ここ。
ちゃぶ台を囲んで、小さな黒いバムと
大きな黒いバムが俺を見ている。