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水族館

かなりの高さまで上昇すると

ピタッとバムは止まった。

八枚の翼がバサバサと羽ばたいている。

「待つのかにゃ?」

「そうですね。今、向こうで囮が突入する隙を伺っています」

「囮も居るにゃ?どんな作戦だにゃ?」

「囮によって引き付けて、そこに上空より

 勢いをつけて飛び込んだペップさんが

 一撃を浴びせ、食王を粉砕する計画です」

「……いまいちイメージがわかないにゃ……。

 私は、このゴルダブルを被ったまま突撃すれば

 いいのかにゃ?全ての力を使って?」

「そういうことです」

「ふーむ……バムちゃんを信じるしかないにゃい……」

俺も発言すると、せっかく上手くいっている状況が

こじれそうなので、今は皮に徹して黙って聞くことにする。


そこからさらに十分ほど浮かび続けて

いい加減、だれてきたころに

ペップに変化が現れる。

「……う……下で、何かとても

 いけないオーラが渦巻き始めたにゃ……」

バムと、着られている皮である俺は

息をのんで見守る。

次第にペップの発する雰囲気が

恐ろしいものへと変化していく。

虹色の噴煙が、俺の開かれた口の中から

激しく漏れ出してきて、思わず声をあげそうになる。


「ぐっ……ぐぎが……えっ、えっえっ……」

俺を着ているペップはまるで

今まではまったく違う声で唸り始めた。

「んぐっ……がるるるる……ぬぎぐ……」

な、なんか今までのより

もっとヤバい何かにペップが変化していくような

気配が周囲を包み込み始めたころに

バムがパッとペップを抱えていた両手を離す。


一直線に真下の戦場へと俺たちは落ちていく。

「ば、ばばばはははばばばはばん……バンするにゃ……。

 お、おおおお前らのその不埒な欲望を見せたがる

 邪悪な意志そのものを

 え、ええええ永久に停止させるにゃ……」

ペップは意味不明なことを呟きながら

両手をグッと握って、空中をクルクルと周り始めた。


「わ、わわわれこそは、宇宙の代執行者

 ……不埒で淫媚なものすべてを

 人目から避けさせるもの……世界をフラットに

 耕すためにダークマターの底から送り込まれた者……」

もう怖い。俺はすでにペップに着られていること自体が

とてつもなく怖い。ペップは回転をやめて空中でピタッと止まると

両手両足を広げて



「ごぶらああああああああああああああ!!!

 エッチなのはいけないにゃああああああああああ!!!!!!」



天地を揺らすような声で辺りへと叫び

虹色のオーラを近くの空に一挙に拡散した。

そして真下へと頭を下にして、手足を折りたたみ

辺りに虹色の闘気をまき散らしながら

まるでミサイルのように、一直線に突っ込んでいく。


あ……大砲で飛ばされた時より

これ、怖いかもしれない……と気づいたときにはもう遅かった。

また辺りがスローモーションで見え始める。

虹色の光が辺りにまき散らされて

眼下には、巨大な真黒な人型……いや、俺

そっくり髪型の黒い巨大生物……あれが変化した食王だろう

……がいて

その辺りを……やはりというか予想通りと言うか

殆ど紐でできたビキニを着た

真っ赤やまっ黄色の肌をした頭に角の生えた

女性たちが盾を構えて取り囲んでいる。

そして、真黒な巨大生物に抱き着いて

ゆっくりと身体を上下に振っているのは

巨大な二枚の真っ白な羽根を持った女性は

ああ……やはりパシーだ。ここからは良く見えないが

ピンクの透明なネグリジェのようなものを

身に着けている……。

全員、身長百メートル近くありそうである……。

なんという、訳の分からないエロ空間……まさに

誰が得するんだという状況だ。

いや、確か、巨大女萌えみたいな性癖もあった気が……

などと俺のパニックを起こした頭が

高速で必要のないことを考え続けていると

ペップはさらに速度を上げて

「このエッチの螺旋の中心に居る貴様を排除する!!」

とまた天地を揺らすような声で叫んで

パシーが抱きついている真っ黒い身体をした

巨大食王の頭を勝ち割りながら突っ込んだ。

その瞬間、俺は意識が途切れる。







「パパーパパー。お魚さん凄いねー」

気が付くと俺は薄暗い水族館に居た。

手を繋いでいるのは、小さな真黒な身体をした

……裸の俺だ。

「パパ?俺が君のパパ?」

「うん、そうだよー。パパーあれが亀さん?」

目の前の大きな水槽には、悠々と大きな亀が泳いでいる。

「そうだな。長生きなんだよ。

 百年生きる種もいるんだ」

「ふーん、人間と同じくらいかなー?」

「そうだね、人間も長生きだね」

俺たちは、その後も、あまり客の居ない水族館を

二人でゆったりと周り続け

イルカのショーを見たり、シャチを間近で見たりして

疲れたので、水族館の最上階にある

海の見える食堂でカレーを食べることにした。

「美味しいねーこの間連れて行ってくれた

 遊園地のソフトクリームも美味しかったけどー」

二人で並んで、海を見ながら

カレーを食べる。

「ここ、パパが高校のときに彼女と来たんだ。

 パパ、初デートでね。緊張してて

 あまり、色々と覚えてないよ」

「そうなんだーママとは違う人?」

「半年くらいで別れたんだ。それからは

 とくに関係は無かったなー」

「人に歴史ありだねー」

「ふふふ、難しい言葉を知ってるね。

 でもこのカレーの味はよく覚えてるんだ」

「美味しいもんねー」

「そうだね」

二人でそのまま和やかにカレーを食べ

もう帰ろうということになり、水族館の出入り口から

出ると、バムにそっくり真っ黒い裸の女性が

出迎えてくれて、俺たち三人で

水族館から出ていく。

そこで意識が揺らいで、消えた。








「おっきろにゃああああああああああ!」

「ぶぼはあああああああ」

ペップからビンタされて俺は起きる。

ブラブラと揺れているのは

ペップが右手で俺を持って吊っているからのようだ。

「しょ、食王は倒したのか!?」

ペップは難しい顔をする。

「よくわからんにゃ……私が起きたら

 エッチな格好をした巨人たちから囲まれていて

 それで見上げていると

 ファイナちゃんとピグナちゃんが駆け寄ってきたにゃ」

横から顔を出したピグナが

「あとはあたしが説明するよ!ペップちゃんは

 休んでて!」

「うむ……よくわかんにゃいが

 全身筋肉痛だにゃ。眠気もす、ごいにゃ……」

ペップが倒れ込んで、ピグナはその身体を支えて

俺をサッと自分の手に取ると

ペップを寝かし、俺の顔を見て


「ペップちゃんが確かに食王は倒したんだけど

 同時にバムちゃんが消えた!」


とわけのわからないことを言ってくる。

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