表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
181/200

遊園地

うわーもう無理だろー!

やっぱりやめた!出よう!

今更、恐怖心に負けた俺が

砲身から出ようとした瞬間に

足元が、凄まじい力で押し出されて

グニャグニャに曲がっていくのが分かる。


痛みはキクカの注射のせいか

一切感じないが

衝撃が足元から臓器へと伝わってきて

あ、何か取り返しがつかないくらい

身体が歪んだと気づいたときには

脳まで衝撃が達して

妙な恍惚感と共に、俺は

砲身の外へと打ち出されて行った。


完全に景色はスローモーションである。

ああ、これが命の危険を感じたときに

脳が高速回転して、何とか助かろうとするあれか……。

ああ、でも無理だよね。

と思うのと同時に、背後に現れたピグナが俺を下から

叩いて軌道を変えて

さらにスローで良く晴れた空へと上がっていくと

背後から凄まじい衝撃を感じる。

ああ、ペップが蹴ったんだなと思いながら


さらに勢いよく打ち出された俺はゆっくりと

眼下の巨大ロボットたちを越えて

そして、その遠巻きな輪の中心で

砲撃に塗れている真黒な物体目掛けて

突っ込んでいく。


だがあくまでスローである。

俺が突っ込んでいく衝撃波で

砲撃による粉塵が晴れて

その中に居る二メートルほどの背丈の

真黒な人型の物体と目が合ってしまう。

縦長の毛のない黒い頭についた醜悪な顔は

眼が四つついていて、どれもギラギラと

殺気と共に俺を見つめてくる

鼻は無く、半開きの大きな口からは

鋭い牙がいくつも伸びている。

少なくとも、人間ではない。

これが食王の顔か……

スローモーションで恍惚感に包まれながら

俺はその異形を見つめる。


食王はゆっくりと口を開けると

威嚇するためか咆哮を放ってきた。

だがもう遅い、俺の身体はいきなり激しく虹色に

発光し始めて、そのまま食王の口へと突っ込んだ。

スローで食王の黒い固そうな皮膚で

包まれた身体が、衝撃に耐えられずにひしゃげて

次第に崩れていく。


そうか、よかった。

成功したんだ。よかったな。

俺は次第に薄れていく視界と

衝撃で歪んでいく食王の身体を見ながら

意識を失った。







「パパ、パパー。僕、観覧車に乗りたい」

「……?」

気付くと俺は小さな誰かと手を繋いでいた。

パッと右斜め下を見て、驚く

今見たばかりの食王だ。

しかも体が半分ほどで、子供くらいのサイズしかない。

「どうしたの?パパ?」

食王は不安そうに俺を見上げてくる。

辺りを見回すと、家族連れやカップルで賑わっている

俺の地元の遊園地だ。

空は青い、季節は夏ごろらしい。

「俺、君のパパ?」

「うん。僕のパパだよーあ、ジェットコースターでもいいなー」

小さな食王は、俺の手を引っ張っていく。

ヘロヘロになりながら二人で

ジェットコースターに乗って

何か食べようという話になり、近くの売店で

アイスクリームを買い、近くのベンチに座って食べる。

「パパはこれが美味しいのー?」

「ああ、パパも子供のころに親からここに

 連れてきてもらって、食べたんだ」

「そっかーこれが、パパの美味しさなら

 僕もそうしよっと」

それからもまったく疑問を持たずに

二人で遊園地で遊びつくして、夕方に帰ろうということになり

食王と似たような黒い異形の生物が

遊園地のゲートの前に迎えに来た。

「あ、ママだーママー。パパがねー」

駆け寄ると子供食王を見ながら微笑んでいると

いきなり世界が揺れだして

意識が薄れていく。





「おっきろにゃああああああ!」

「ぶぼはああああああ!」

横っ面を思いっきり叩かれて、俺は衝撃で目を覚ます。

「こ、ここは……」

辺りにはまだ火薬の臭いや爆発音が響いている。

「作戦は半分成功したにゃ!

 食王の身体を半分ふっ飛ばせたけど

 にゃんとそれから……」

「それから?」


「いきなり残った食王の身体が全裸の巨大ゴルダブルに変化したにゃ!

 それで今は巨大ロボットたちと格闘してるにゃ!」


「……それマジ?」

見ようとするが身体が動かない。

「ゴルダブルは皮以外は、ぐちゃぐちゃになったから

 私が捨てたにゃ。グロかったにゃ」

「……また皮だけか……」

「あと安心しろにゃ。食王の変化した巨大ゴルダブルは

 全裸とは言え全身が黒くて

 それから股には何もついてないにゃ」

「……そこ重要?」

「エッチじゃないのは大事だにゃ。

 それはともかく、このままじゃ不味いにゃ!

 にゃんか作戦寄こせにゃ!」

「いや、作戦と言われましても……」

俺はもう、やるべきことはやった気がする。

「巨大ロボットがもう十体くらいしか

 残りが無いにゃ!このままじゃやられるにゃ!」

「あっ……」

俺は一瞬、凄い作戦を思いついてしまった。

しかし、これは正直、命懸けだ。

話そうか迷っていると、ファイナが駆け寄ってきた。

「お、おおお……良かった。無事だったのですね」

「回収して、洗ったにゃ」

「あの、マクネルファーさんがロボットに爆弾を積んで特攻すると

 聞かないのです。ペップさん、止めてくださいませんか?」

「じいさん!カッコつけようとしたらダメだにゃあああ

 無駄死にするにゃあああ!」

ペップは走って行った。

心配そうに皮だけになった俺を抱き寄せるファイナに

「あの……」

と俺は思いついた作戦を話す。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ