生前葬
また同じメンバーで分乗して
エレベーターに乗って
一気に屋上まで移動していく。
「なんで空中で葬儀する必要があるんじゃ?」
マクネルファーがキクカに尋ねると
「溶かせぬものを、吸い込むためだ」
「機械の駆動系に混ざる毒物とかかの?」
「そうだな。廃棄物を片付ける」
「空から吸い込むとかか?」
「大体合ってる。まあ、見ておけ」
エレベーターの扉が開くと
夕暮れに照らされた広い屋上には
大量のガラクタが山のように積まれていた。
それらがゆっくりと、上空に開いた大穴に
吸い込まれていく。
「一定の重量の金属しか
吸い込まれない。安心して見回ってくれ」
キクカは俺たちと、別のエレベーターから出てきた
ペップたちに言ってくる。
「あれは、どこに続く大穴だにゃ?」
「冥界の処理場だ。毒と金属を分離して
冥界内で再利用する」
「葬儀はどこで行われていますの?」
「こっちだ」
キクカはガラクタの山の反対側へと
俺たちを連れていく。
そこには古びた人型のロボットが一体立っていて
大穴を、その四角い頭で見上げていた。
小柄な身体は所々錆びている。
キクカはロボットの方を向いて
「彼がここの神官だ」
「葬儀はもう終わったのかのう?」
マクネルファーが尋ねると
「いや、まさに今、葬儀中だ」
「突っ立っているようにしか見えにゃいが」
「彼は、ガラクタたちの動いていた姿を
全て記憶していて、それらをずっと
思い出している。それが葬儀だ」
「電子データを、頭にかき込んでいるとかかの?」
「そういうことだ。彼は容量が特別大きい
だから神官をやれる」
不思議なロボットによる葬儀を
全員で見つめる。
すぐに日が暮れて。屋上には
電気の照明が点いて明るく照らされたが
上空の大穴は闇に紛れて見えなくなった。
「帰るか」
キクカは俺たちをエレベーターに乗せて
一階まで戻ると、ビルのロビーの兵士たちから
大きめのハンドライトを貰うと俺たちとビルを出て
それを点けて、来た道を帰っていく。
背後の工場群やビルは街灯に照らされて
煌々と光っている中、狭い道をまた通って
そして盆地へと戻っていき
停めていた飛行バイクに、乗り込み
そしてキクカの事務所の小城へと
飛行しながら戻っていく。
その夜は
城の大食堂で、幽霊たちによる
大歓迎パーティーが開かれて
舞踏会のような舞い踊る大量の
透けた人々を見ながら
料理を食べることになった。
不気味なものは一通り見たので
全員、ふつうに楽しんで
食事していると、バムが八枚の翼を羽ばたかせながら
いきなり、幽霊たちが踊っている中心へと姿を現した。
そして俺たちのテーブルへと近寄ってくると
「食王が、帝国への侵攻を開始しました!
明日の朝には、決戦を開始します!」
と言ってスッと消えた。
いきなりだったが、俺たちはすぐに理解して
目を合わせて頷き合う。
マクネルファーがポツリと
「そうか、今日はわしたちの生前葬じゃったのか……」
と呟いた。