ピグナポイント
「ところでピグナポイントってなんなんだにゃ?」
「知りたいですわ」
「えっとね、千ポイント貯まったら
中級天使に引き上げるって約束したんだ」
「残り、九百八十ポイントですか……」
「道は長く険しいにゃ……しかしあのポンコツ天使に
その計算はできるのかにゃ……」
「たぶん、無理じゃないかな……」
小学一年レベルの計算でミスるとは
数字に極度に弱いようだ。
サリは完食して
「すいませんが、少し眠ってもよろしいですか?」
俺たちに尋ねてきた。
パシーが顔をあげて嬉しそうに
「そうそう。睡眠も大事ですよ。
あと服喪とはいえ、一日数回は太陽の光を浴びてください。
筋トレも大事ですよ!」
「忝い。では……」
サリは筵に横たわって寝てしまった。
パシーは無言でピグナに近寄って
上目づかいで見てくる。
「わ、わかったよ。一ポイント返して
二十一ピグナポイントね!」
「やった!また中級天使に近づきました!」
喜ぶパシーを尻目に
「誤差だにゃ……」
「そうですわね……他の貢献を考えた方が……」
「かわいそうな子なんだよ……」
「喜ばせといてやろう……」
サリに食事は食べさせたので
目的達成ということで、お盆に箸と空になった皿を乗せて
骸骨に再び案内されながら外へと出て行く。
外ではキクカとマクネルファーが
先ほどの黒竜が乗せてきた食材を使って
骸骨たちと共に大量の料理を作っていた。
肉と野菜を幾つもの大鍋に鍋に放り込んで
調味料を混ぜ合わせている。
「あにゃ?お夕飯には早い気がするけどにゃ?」
俺たちが近寄って尋ねると
キクカは黙って空を指さした。
マクネルファーが苦笑いしながら
「ほら子連れの竜にここまで運んでもらったじゃろ?
キクカさんの話だと、結構な怒っていたそうじゃ。
きちんと子竜に食べさせてほしいとな。
専属契約はどうなったんじゃと」
「そうだったんですか……」
「堪えてたのかにゃ」
「それで、さっき運搬していた黒竜に
キクカさんが呼びにいかせてな。
この領内に待機していたらしいわ」
俺たちも慌てて、料理に加わって
骸骨たちと共に調理していると
空から大きな青い竜と虹色に輝く子竜が降りてきた。
連れてきた黒竜も草原の近くに距離を置いて
着地する。
俺たちを見下ろした機嫌の悪そうな親竜が何か口を開く前に
キクカがサッと右手を掲げて骸骨たちに指示をすると
大鍋に入れられた大量の料理が
虹色に輝く子竜の前へと次々に
運ばれていく。
そしてピグナがパシーを引き連れて
わざとらしく背中に四枚の羽根を出しながら
「迷惑料だよ。どうぞ」
親竜への頭を下げた。
子竜は目の色を変えて大鍋に頭を突っ込んで食べ始め
それを見た親竜は大きく息を吐き
「キクカ殿、安定した食料供給が我が子には
必要なのだが、どうにもうちの専属コックたちは
忙しいようなのだ」
キクカを見下ろして言ってくる。
キクカは進み出て深く頷き
「良いだろう。専属コックの任は私が引き継ごう。
味覚も両方知っている。適任だ」
「い、いいのかにゃ?」
「結構食べますわよ?」
キクカは少し恥ずかしそうに顔をそらして
「友達のためだ。それ以上の理由があるか?」
と小さな声で言ってきた。
ペップとファイナから同時に抱き着かれて
キクカはどうしたらいいのか分からずに固まっていた。
子竜は腹いっぱい食べて満足そうに
その場に伏せて眠ってしまい、親竜もその周りを
守るように丸まって寝たので
俺たち全員と、骸骨たちで今度は
近くにずっととどまっていた搬送役の黒竜の背に
調理器具や余った食材の積み込み作業をした。
それが終わって、自分たち用に残した
軽食や、ジュースなどを飲みながら
草原から墳墓を眺めて、休憩することにする。
「次はどんなお墓に行きますの?」
「……マクネルファーと話したが
モルズピック南の機械たちの墓へと
行こうと思う」
「き、機械にもお墓を作ってあげてるのかにゃ?」
「主に帝国から搬送されてくる。
一定期間、祭ってそれから帝国から派遣された
業者が解体して金属は再利用されるな」
「話だけ聞いても、よくわかんないね」
「な、面白そうじゃろ?」
「行ってみようか」
みんな了解して、次の目的地はそこに決まった。