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墳墓

飛行バイクが向かった先は

木々のない草に覆われた、なだらかで巨大な丸い山の上だった。

辺りは草原でさわやかな風が吹いている。

空中で静止したバイクが三台と天使が二人集まると

キクカが眼下の山を指さしてペップに何かを告げる。

「墳墓だって言ってるにゃ!あの山頂に着陸するって!」


なだらかで大きな丸山に次々に着陸していき

バイクから降りていく。

「この山全体がお墓なんですのね?」

ファイナが尋ねると

「そうだ。この下にチャ・ソヤ国の非主流の貴人たち

 たくさん眠っている」

「非主流なの?」

ピグナが背中の翼を消しながら尋ねる。

「うむ。主流派は国内に埋葬されている」

「中は見れるんかのう?」

キクカは頷いて、墳墓の端の土階段を降りていく。

俺たちもそれに静かに続く。


墳墓の麓には二メートル四方ほどの四角い金属の扉があった。

入ろうとすると中から開けられて

骸骨が顔を出してくる。

「どうした」

キクカが尋ねると骸骨は申し訳なさそうに

「中の料理が腐ってて、作り替えようにも

 料理人が居ないので……」

「ああ、サリ殿が、喪に服していたな」

「喪に服す?誰か死者を中で弔っているのか?」

キクカは入るのをやめて

俺たちを扉の外へと集め

「あとで説明するから、料理を頼んでいいか?」

といきなり言ってきた。


了解すると、キクカは扉の中から

次々に出てきた骸骨たちに

食材をここに持ってくるように指示していく。

骸骨たちは、全速力で草原を西へと走って行った。

キクカはフッと息を吐くと

「では、待つ間に説明しようか」

と言ってきた。


「チャ・ソヤ国は長年、主流派と反主流派が

 争い続けている国だ。もう二百年ほどになる。

 政治的に手を結んで、決裂してを延々と繰り返している」

「複雑な国なんだにゃ」

「うむ。それで反主流派はうちと契約して

 墳墓をこの地域へと作った。国内だと

 主流派の盗掘などが酷い」

「どっちが悪い方ですの?」

キクカは腕を組んでしばらく考えて

「どっちも正しいし、どっちも悪い。

 考え方のどちらをとるかというだけだ」

「むー……単純ではないですね」

「それで、そのサリさんというのはどんな人なんじゃ?」

「反主流派の次期指導者だ。

 一代前の自分の祖父が一年前に暗殺されたので

 新指導者として忙しい父に代わって、ここで喪に服している」

「……喪には何年服すんだ?」

「三年だ」

キクカはそう言って、空を飛んできた

真黒な体長二十メートルほどの飛竜を見上げた。


大量の食材を満載に積んできた黒竜が着陸すると

同乗していた骸骨たちが次々に降ろし始める。

瞬く間に俺たちの前に料理器具が並べられて

そしてキクカがピグナを指さし

「チャ・ソヤ国の伝統料理を調べて作ってくれ」

と言った。


「うーん……悪魔センサー無くなって

 天使センサーはあるんだけど

 いまいち、まだ使い方がつかみ切れてなくて。

 パシーちゃん、やってもらっていい?」

「わ、私ですか?」

「うん。ほら、私の信頼ポイント貯めたら

 いつか、中級天使にしてあげるって

 さっき話したよね?」

いきなりパシーは発奮して

「が、がんばります!」

両目を瞑って、両手を天に掲げる。


早くも不安になってきたので

「なあ、バムに頼んだ方が……」

「しっ、黙ってて、バムちゃんはきっと

 パシーちゃんを鍛えたいんだよ」

ピグナはウインクしてくる。


パシーはまだ動かないので

俺たちは調理器具の点検をしていると

「わっ、わかりました!

 チャ国の喪に服すときの食べ物を

 教えられます!」

パシーが頬を紅潮させて、こちらへと駆けてきた。

「大丈夫かにゃ……」

ピグナがニコニコしながら

「信じてやろうよ。たぶん大丈夫」

「そうですわ」

俺たちはパシーの指示に従って

大量の食材を選んで、調理を始める。

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