様々な葬地
黒い教会へと皆で入ると、
中では大量の透き通った幽霊が参列した
葬儀が行われていた。
一番後ろの長椅子に全員で並んで座る。
聖堂のある奥で忙しなく、働いているのは
なんと人ではなく骸骨たちだ。
「あれは?冥界の生物みたいに見えますが」
ファイナがキクカに質問すると
「うむ。冥界から派遣で来てもらっている。
そして参列者が居ない場合は成仏できない霊たちに
頼むようにしている」
「やっぱり死神長の伝手なのかにゃ?」
「それもあるし、ここ、冥王とも縁が深い。
死に近い場所だから」
皆で納得する。それで俺たちを匿う場所に
この地域を選んだのもありそうだ。
神父役の骸骨が長々と
死者への追悼の言葉を言い終えると
素早く棺が骸骨たちから外へと持っていかれて
入れ替わりに今度はトレーナーパイセン数体が
忙しなく、別の棺を運んできて
教会最奥の聖堂へともっていく。
「ひっきりなしなんだにゃ」
キクカは頷いて
「一年中、夜もフル稼働だ。各国から
昼夜問わずに遺体が搬送されてきている」
「なんで自分の所で葬儀しないんだにゃ?」
「死を遠ざけたいようだ。紛争地域から
馬車に満載でくる遺体も多い」
「平和なうちの国だとわからん話だにゃ」
「教会はここだけですの?」
「他にもある。行くか?」
全員で同意して立ち上がり、
次の葬儀が始まった教会を出ていく。
三台しか飛行バイクが使えなくなったので
天使の二人は飛ぶことにして
次の場所へと移動することになった。
俺は今度はマクネルファーの後部座席である。
ファイナはピグナからバイクを譲られて
「今度は、大事にしますわ……」
恥ずかしそうに誓っていた。
黒い教会から西へと三十分ほど空を飛ばすと
今度は、大砂丘地帯が広がっている。
その中心にある緑豊かな
オアシスへと飛行バイクは次々に降り立つ。
「ここも葬地なんだにゃ?」
ペップがキクカに尋ねると頷いて
遠くを指さす。そこには砂から出て
そしてまた入っていく、巨大な黄色の地龍のような
生き物が蠢いていた。
「なんだあれ……」
「ここ、南の民専用の墓場。
あのドラゴン、ヴィールムスウォールと言う。
掃除屋だ。専属契約してる」
「つまり……ここに遺体を運んできて」
「そう。食べさせる。腐肉専門なので
我々には危害を加えない。心配するな」
「せっ、世界は広いですわね……」
「うーむ……清掃員として地龍を雇っておるのか」
オアシスから砂漠を眺めながら
皆で唸っていると、いきなり近くの砂漠の砂から
巨大な睫の長い黄龍の十数メートルはある
巨大な顔がゆっくりと砂を落としながら出てきて
「キクカさん、北西の二十四地点に生きた肉が混ざっています。
排除願います」
俺たちを見下ろして言ってくる。
キクカは舌打ちをして
「またか。ヴィーちゃん、ちょっと近くに移動して待ってろ。
今からこの人たちと排除に行く」
黄龍はウインクしてまた砂の中へと潜っていった。
「どういうことなんじゃ?」
「行けば分かる。紛争が多い国は仕事が雑だ」
俺たちは飛行バイクに乗り込み、天使たちは自分の羽根で
砂漠を北西へと飛んでいく。