空中レース
昼食を存分に楽しむとキクカが
「……良かったら、モルズピックを案内させてほしい」
と言ってきた。全員で喜んで了承すると
「死や葬列に関わることが大半だがいいか?」
気を使ってもう一度尋ねてくる。
「友達の職場だにゃ。異論はないにゃ」
「わたくし、興味がありますわ」
「あたしも、見てみたいよ」
と言いながら、ピグナはパシーの肩を叩く。
「もっ、もちろん私もいきますよぉ……」
「わしの葬儀、ここに頼もうかのぅ。
……マリーに盛大なのをやられたらたまらんし」
「俺も問題ない、バムは行くのか?」
バムは首を横に振って
「もう行かなければ。あとで片付けに来るので
皆さんは、そのままゆっくりと見学をしてください」
そう言うと、スッと消えた。
キクカが
「どうしてもここに居たかったんだと思う」
ボソッと呟く。ペップがキクカの肩を叩いて
「今度は私の飛行機に乗るにゃ。
ファイナちゃん、次の目的地まで競争だにゃ!」
「いいですわ!」
「あの、俺はマクネルファーさんのバイクじゃなくて、飛行機に乗っても……」
「ダメですわ!二体二じゃないと公平じゃないですから」
「そ、そんなことないんじゃない?」
ファイナは頑なに首を横に振る。
五分後。
めちゃくちゃに飛ばす、ファイナの後ろで俺は
泡を吹いていた。
何となく座席が熱い。エンジンがオーバーヒート
してるんじゃないかとかなり不安になっていると
後部から煙が上がり始めた。
「お、おい……やばくないか……」
「いけますわ!一位でフィニッシュするのです!」
ペップが猛追してきているが
かなり距離がある。
さすがにアクセルベタ踏みで飛ばすことは
やばいんじゃないかと向こうは武術家としての勘で
気付いたとかじゃないよな……悪い予感がしていると
いよいよ煙が大量に上がりだした。
プロペラの旋回が緩くなって
そして高度とスピードも落ちていく。
あっさりとペップ、そしてピグナにも抜かれて
レースに参加していないマクネルファーにも抜かれていく。
「くー!バムさんの策略ですわ!」
空に向かって、関係ないバムのせいにするファイナに
「前!前見て!あとちょっとで目標地点だろ!?」
黒く塗られた大きな教会の前に次々に
着陸していく仲間たちの飛行パイクを指さす。
ファイナの奮闘虚しく、俺たちの飛行バイクは
教会の周囲を取り囲む墓地の中へと落ちていく。
「と、とまってください!とまりなさい!」
ファイナが必死にブレーキを踏み込んで
煙を上げた飛行バイクは何とか墓石を交わして
近くの芝生の上に着地した。
俺は慌ててファイナを抱え、煙を噴き上げでいる飛行バイクから距離を取る。
爆発するかもと思ったが
飛行バイクは煙を上げたままで、燃え上がりまではしなかった。
「……ゴルダブル様……」
抱えたままでいるファイナが
頬を赤らめてこちらを見てきたので
一瞬、チャンスかと思ったが近くにペップも居るし
バムも見ているかもしれないので
煩悩を振り払い、ファイナを立たせて
黒い教会から駆けてくる仲間たちに合流する。
「大丈夫だったにゃ?」
「ケガはないけど、機体が……」
マクネルファーが苦笑いしながら
「気にしないで良いぞい。マリーが手下を使って喜んで直すじゃろ」
キクカも頷いて
「放っといていい。あとで帝国兵に取りに来させる」
「黒い教会に行こうよ」
「あ、あの私も行かないと?」
「当たり前でしょ!大天使の言うことを聞きなさい」
「はっ、はい……」
パシーはピグナに押されて、教会へと向かわされる。
俺たちも墓地に囲まれた黒い教会へと向かう。