見学へ
結局、監視という名の名目で
ピグナとファイナから両脇を挟まれて
ベッドの中で寝る。
もちろん手は出せない。
絶好の機会だと思うのだが
二人が変に意固地になっていて
ダメだと言ってきた。
……確かに見境なかった俺も悪いんだが。
でも、さすがにけっこう長旅をしてきたのに
男女関係的なのが殆ど、何にもなさ過ぎて悲しいだろ。
男としては……。
人生最大と言っても過言ではないモテ期が
到来しているような気がするのに
殆ど中学生レベルのやり取りにとどまっているのもな……。
男女関係って、やってからがむしろ本番じゃないのか。
そこで別れるようならそれまでだし、
それでもお互いに興味があるなら、その後も続くわけだ。
大学時代に俺はそう学んだのだが……。
二人の柔らかい身体が左右から少し当たっていて
なんとなく得した気分だが
昼間のと、さっきのどっちか成立してれば
もっと良かったんだよな……。
月夜に照らされた小屋の中
ボーっと考えていると
いつの間にか寝入っていた。
起きると、ファイナが窓際で朝の光に当たりながら
ティーカップを口につけていた。
「おはようございます」
微笑んできたその笑顔は綺麗だなと思いながら
挨拶を返して、そして起き上がる。
「今日はモルズピックを見学に行くそうですよ」
「見つからないのか?」
「食王には、私たちによく似た身寄りのない遺体を
キクカさんが選んで、バムさんが運び
食べさせたそうです」
「……そ、そう……一応、誤魔化せているんだな」
「とはいえ、モルズピックの外に出ると危ないとは聞いています」
なんで昨夜
冥王がファイナたちを手伝ったのかとか
色々と聞きたいことはあるが
とりあえず、用意されていた朝食を食べてしまう。
そして出かける準備をして
小屋の外へと出ると、外には
昨日マリアンヌ帝が乗っていったものと同じ
プロペラを持つ空飛ぶバイクが、一台置かれていた。
「これに乗っていくの?」
「操縦はわたくしがしますわ!」
「大丈夫?」
「もちろん。もう習熟しましたのよ」
ファイナを信用することにして後ろにまたがると
ファイナは鍵を回して、足元のアクセルを
何度か蹴って、そしてエンジンを回しだして
「行きますわよ!」
と操縦桿を上に傾けて
アクセルを思いっきり踏み込んだ。
その瞬間に飛行バイクは思いっきり宙へと舞い上がる。
青空をぶっ飛んでいくバイクから振り落とされないように
ファイナの腰元に手を回していると
いきなり飛行バイクが急ブレーキで止まり
そして他の方向から、三機の似たようなバイクが飛んできて
近くに集まった。
「おはよう!今日はマリーはおらんようじゃ」
嬉しそうなマクネルファーが手を挙げて挨拶してくる。
「面白いにゃ!あとでファイナちゃん競争するにゃ!」
「羽根で飛ぶより面白いね!」
「あのー私、なんでここに乗らされてるんですか……」
ピグナとパシーが相乗りしている。
「じゃあ行きましょう!」
ファイナが掛け声をかけると
空中バイクは一斉に北の青空へと駆けていく。
確かに気持ちいい。朝の風と景色もいい。