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状況説明

次に起きたときは俺は暖炉の火が

パチパチと音を出す、小屋の中で

ゆっくりと揺れていた。

まさか天井から吊るされているのか……?

唯一動く眼をキョロキョロと見回して、

カンテラの灯火に照らされた小屋の中を眺めると

近くの安楽椅子で揺れながら

ウトウトしていたマクネルファーが

目を覚ました俺を見た。


「ああ、すまんな。パシー君が

 夕食の酒やミルクを盛大にゴルダブル君に

 ぶちまけてしまってな。それでわしが洗って

 乾くまで干しとるんじゃ」

マクネルファーをジッと見ると

「……説明がまだじゃったな」

と言いながら、近くのテーブルに立ちあがり行って

置かれた酒瓶からコップに酒を注いで、

それを持ち、再び安楽椅子に座った。


チビチビと酒を飲みながらマクネルファーは

「……どこから話そうかのぅ……」

しばらく悩んだ後に

何度か軽く頷いて

「ゴルダブル君とわしらが別れたところから

 説明しようか」

と微かに揺れている俺を見ながら言った。


「あのマーズラーヴァによって

 消し炭になった世界からわしらが飛ばされたのは

 真黒な空間じゃった。そこでわしらは

 一切体が動かぜに、ずっと固まっておったのよ。

 だが頭は働くから、不安なまま一時間ほど固まっておるとな」


「光り輝く八枚の翼を背中に持つバムさんが飛んできてな。

 そしてわしらを全員動けるようにしてくれて

 暗黒の世界から外へと導いてくれたのじゃ。

 外へと出ると、そこは夕暮れのワールドイートタワーを

 取り囲む嵐の外じゃったよ。帝国軍は引き上げたらしく

 一兵もおらんかったわ」


そこでマクネルファーはコップの中身を全て飲み干して

テーブルへとまた向かい、なみなみとコップに注ぐと

安楽椅子へと戻り、大きくため息を吐く。

「要するに……全部、茶番でわしらは騙されとったのよ。

 ……まあ、それを語るにはまだ説明が足らんか……」

ブツブツとそう言うと


「外に出たわしらに、バムさんが説明するところによるとな。

 "今まで本当のことを言えずにごめんなさい"

 "ゴルダブル様の中にずっと前食王が入っていたので

  私が彼に敵意を持っていることを、聞かれるわけにはいかなかった"

 "今は意味が分からないかもしれないけれど

  私の言葉を覚えていて欲しい。それから、これから

  いつもの竜の親子に迎えに来させている。彼らに乗って

  安全な上空で待機していてもらいたい"」


マクネルファーは干されて揺れている俺を見て

「いきなり言われても、わけがわからんじゃろ?

 わしらも当然そう思って、バムさんに一斉に問いただしたのよ。

 するとな。バムさんはこう言った」



「"私は天界を統べるサナマンダー・バムスェルです。

 とにかく今は私を信用して、私の言う通りに動いてほしい"とな」



マクネルファーは大きくため息を吐いて、酒に口をつけると

「次の瞬間、パシーさんがいきなりその場に倒れて気絶したから

 みんなで一斉にそちらを見ると、バムさんは

 "パシーには皆さんから離れないように私が命令をしていたと

 言っておいてください"

 と背後から伝言を残して、全員で振り向くともうおらんかったわ」


「パシーさんを介抱しているとな。

 バムさんが言ったとおりに、空から竜の親子が降りてきて

 専属シェフ契約をしたのに勝手にどこに行っていたのかと

 散々文句を言われたので、わしたちの手持ちの

 竜の子が食べられる食材や作り置きを全て与えると

 ようやく、機嫌を直してくれてな。

 そして親竜の方の背に乗せてもらい、上空でゴルダブル君を待っていたのじゃ」


マクネルファーはまたコップの中の酒を一気に飲んで

安楽椅子から立ち上がろうとすると

足が滑って、椅子にまた座り込んでしまう。

「ふ、飲み過ぎじゃな。まだ死ねんからな。

 ここらにするかの」

椅子の脇にコップを置くと、マクネルファーは

俺をまた眺めて


「……そして竜の背で待っていると、

 ペラペラの皮だけになって丁寧に畳まれた君を

 バムさんが空から持ってきたというわけじゃ。

 それからは、モルズピックという地の名を覚えておるか?

 キクカさんの治める自治国家のような地域じゃよ。

 その地の奥深く峡谷にある、この小屋に我々は

 竜たちから連れてこられて、今は匿われておる」


「ペップさんたちはもう寝たぞい。

 そして眠れない年寄りが、ここで

 君のために番をしているというわけじゃな。

 ふぅ、歳かな……今ならマリーですら居てくれたら

 心強いかもしれんと

 思ってしまったわい」

マクネルファーがそう呟いた瞬間に

小屋の扉が開いて、真っ白な長髪と赤いマントをなびかせながら

なんと、マリアンヌ帝が入ってきた。


「ま、マリー……なぜここが……」

「……」

無言でマリアンヌ帝は愕然とした顔の

マクネルファーに歩み寄って

そしてしゃがむと、その身体を抱きしめた。

「お、おい……ちょ、ちょっときついぞい……」

「もう離さない。絶対に二度と離さない……」

「そ、それは困る……ご、ゴルダブル君何とかしてくれ……」

いや、そんなこと言われても

俺、今、皮ですし……動けませんし、と目をそらす。

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