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転生と皮

視界が真っ暗になって

目を開けると

次に立っていたのは、ワールドイートタワーの

一階とよく似た広い何もないフロアだった。

他の仲間たちは居ない。

俺一人だけのようだ。見回す。

外を眺めるための窓も、帰るべき階段もない。

フロアの反対側の端に、上に登る階段があるだけだ。

「おーい!みんなー!」

呼びかけてみても反応はない。

仕方なく、俺は上へと登る階段へと向けて

歩き出した。

またもや、食王の罠だろうか。

だが、とにかく俺に、選択肢が一切なさそうなのも確かだ。


階段を登り、次のフロアへと出ると

また階段以外何もない同じような景色が広がる。

また階段を登っていく。

その様な感じで、数時間かけて百階近く登っていくと

大きな紫色の金属製の扉が

中ほどから遮っているフロアにたどり着いた。

呆然と見上げていると

扉がゆっくりと開いていく。


赤の下地に金色に輝く刺繍がふんだんに施された

カーペットが百メートルほど敷かれた

その先には空っぽな光り輝く玉座があり

まるで俺を誘っているようだ。

ゆっくりと、俺はカーペットの上を歩いていく。


「ようやく辿り着いたわ」


頭の中で誰かの声がする。


「悪い"皮"ではなかったぞ。褒めてつかわす」


皮……?何のことを言ってるんだ?

ゆっくりと玉座へと歩き続けていくと

俺の視界が横へとずれていく。

な、なんだ……いったい何が……。

頭では慌てているが、声が出ない。

足はその間も玉座に向けて進み続けて

俺の視界はどんどん横にずれていく。

まるで、俺が脱ぎ捨てられていっているような……。


気色悪い違和感に苦悶していると

真白いローブ姿のバムによく似た

背中から左右に四枚ずつの羽根を生やした

まるで、バムが天使になったかのような

女性がずれていく視界の左側へと現れて


「食王様、ご帰還をお待ちしておりました」


と深く頭を下げる。


「うむ……この"皮"を剥いでくれぬか。

 もう良い。我の"転生"は為った」


バムによく似た天使は微笑むと

俺の頭に手をかけて

ズルっ、ズルズルズル!

とまるで何かの液体で滑っていくような

感触と共に、"俺"を一気に身体から取り払った。


唖然としてキョロキョロと周りを見回すと

真黒な人型の生き物が全身から派手に体液を噴き出しながら

カーペットを濡らして、歩いていくのが見える。

そしてその生き物は尻尾が生え、頭が膨張して

次第に、醜悪な形へと

変わっていき……気を失いかけている俺の耳に

「"皮"は処分しておけ。捕えてあるその者の仲間たちは

 我が喰って糧にする。良いな?」

「ははっ……食王様の命ずるがままに……」

バムによく似た声を聞きながら

俺は気を失った。







次に目を覚ました時、頭上には空が見えていた。

「あ、ペラペラのゴルタプル起きたにゃ」

近くでペップの声が聞こえる。

「間一髪でしたわね」

「ごめん……あたしが無能なばかりに

 獄炎王様が出て来た時点で、気づくべきだった……です……」

「いやいや、あんな遠回しなメッセージに

 気づけるものなど居らんよ」

「……あ、あの……私、もしかしてとんでもないことに

 巻き込まれつつあるんじゃ……」

パシーも居るようだが、身体が動かないので

首を回せない。

キョロキョロしていると、いきなりペップが

俺を持ち上げて

「うーん……シュールだにゃ……ペラペラ……ペラダブルかにゃ……」

「ちょっと、ペップさん、遊んでは駄目ですわ。

 バムさんは大事に扱えとおっしゃっていましたよ」

何が起こっているのか尋ねたいが口も動かないので

何も言えない。次第に視界も霞んできた。

「わかってるにゃ。あっ、何か目が不安そうだにゃ。じゃあ誰か

 ペラダブルに、説明してくれるかにゃ?」

「はい。無能な私がやります。ペップ様」

感情を消したピグナの声が聞こえて

「ちょっと、ピグナちゃん!元のままで良いっていったにゃ!」

「そうですわよ!自信喪失しすぎですわ。

 わたくしたち、公平な仲間ですのに……」

「でもあたし、ファイナ様のような天才じゃありませんし……」

「重傷じゃのう……ゴルダブル君ほどではないが」

「あ、あの……そろそろ帰っても……?」

「ダメだにゃ。あんたんとこの会長から

 離れるにゃって、言われたにゃ?解雇されるにゃよ?」

「ひっ、かっ、解雇……天使じゃなくなったら私……

 な、何になるんでしょうか……」

「たぶん虫とかかかにゃ?」

「むっ、虫ですか……」

結局、状況の説明はきけずに

パシーが真剣に悩み始めた声を聞きながら

俺はまた意識を失った。

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