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カンテラで先を照らしながら降りていく。
カツカツと足元は靴に金属が当たっている。
先行しているペップたちは
ずいぶん遠くに明かりが見えるので
その辺りを歩いているのだろう。
「長い階段じゃな……」
「そうだね……」
「今度はマシな世界だといいけどな」
「あっ、ゴルダブルさ、大木から出てきた
白い手があったでしょ?」
「そういえば、あったな」
マクネルファー再登場と、ポンコツ天使降臨で
完全に頭から吹っ飛んでいた。
「あれって、今思い出したんだけど、冥界に生息する
アストラルゴーレムの手によく似てる気がする」
「なんじゃそれは?」
「つまり、私が言いたいのはね
あの大木のウロの中は
冥界に通じていたんじゃないかなって
ことなんだよ」
「……危なかったな……」
ペップを送り込もうとしていた。
「ふむー。ということはじゃよ。
さっきの世界は、冥界と現世の間にある世界なのかの?」
「その可能性は高いね。最初の夕暮れの廃墟群からして
何かずっと変でしょ?現実感が狂ったかのような……」
「な、なあ、いまさらだけど
全部ワールドイートタワーの一部だよな?」
「だと思う。でも、あたしが冥界で聞いていた話じゃ
ワールドイートタワーって
ここまで無茶苦茶じゃなかったんだよね……
普通に塔を登っていって、高層階で前食王と対決みたいな……」
「今の食王が作り変えたんかのう?」
「わかんないけど、もしそうだったら嫌だなぁ」
「だな……たまたまおかしくなってるとか
そう言う感じで頼みたいわ」
雑談していると、遥か下方から明かりが射してきた。
少し急いで、階段を下りていく。
たどり着いた光の先は
辺り一面、燃え盛っている大地だった。
空は一面黒い雲が覆っていて、太陽や星は見えない。
「うわー冥界の温泉地帯みたいだね……」
ピグナがそう呟く。
「熱くはないな」
「不思議じゃのう……」
見た目に反して、熱くも寒くもない。
先についていたペップとファイナは
パシーに左右の肩を組みながら
「ふむふむ……で、どうだったんですの?」
「そうかにゃあ、人にいや、天使に歴史ありだにゃ」
などと話しかけている。
近寄っていくと
「あ、あの……この人たちが私のプライバシーを
根掘り葉掘り聞いてきて……」
またパシーは涙目になっている。
「ふっ、甘いにゃ。貴様が敵の間者かどうか
深く確かめているだけだにゃ」
「その結果、以下のようなことがわかりましたわ」
嬉しそうなファイナが喋ろうとすると
パシーが慌てて、口をふさごうとして
軽くペップから手を取られて止められた。
「ではいきますわよ。
大天使長の超絶美形マカエラが好きでたまらない。
でも上司の大天使のシャーマスは嫌いである。
生真面目なおばさんだそうです。
何とかして、大天使長の直属になるために
頑張っているが、能力が足りないので難しいそうですわ」
「あとは私が言うにゃ。
初恋の人は、天使養成学校の上級天使だった担任で
天界での住所は、セイントモリアーストリートの
2-342-……」
そこで真っ赤になったパシーはペップの口をふさいで
ペップから反撃で、軽く首筋を叩かれて気絶した。
「ふーん……そうか、やっぱり能力の低い下級天使だね。
煩悩に溢れてるし、その住所は
たしか天界のアパートみたいな集合住宅が
大量に立ち並んでる場所だよ」
「わたくしも、話を聞いていて人間臭いと思いましたわ」
「そうじゃな。天使には向いとらんわ」
「寝てる間に堕天させてみる?なんか面白そうだし」
ピグナがパシーを見ながら言う。
「それ知っていますわ。天使を悪魔に変える儀式でしたわね?」
「いや、そこまでしなくてもいいんじゃないか?
起きたら悪魔になってたとか、おかしくなるだろ……」
「そうかなー楽しいよ?悪魔ライフ」
「私もゴルダブルに賛成だにゃ。
それにこの見ているだけで、暑苦しい世界を
早く抜けたいにゃ」
とりあえず進もうということになり
パシーは俺が背負うことにした。
見た目だけ燃え盛っている大地を歩いていく。
道端の燃えている木片などを手に取って
触ってみるが、まったく熱くないし
火も服などに燃え移らない。
「なんなんだここ……」
「わかんないな……」
歩き続けると、真っ赤な大地のど真ん中で
燃え盛る小屋が見えてきた。