墓石の街
巨大な墓石が整然と立ち並ぶ街へと入っていくと
真っ黒いローブのフードを目深に被った
数人の男女が街の中心を棺のようなものを神輿のように
担いでゆっくり静かに進んでいく。
神輿の背後には綺麗に整列した
真白いローブを着た人々が数十人並んでついていっている。
ピグナがその葬列を見た瞬間に
「意思のある生き物じゃないよ。
プログラムされた行動を繰り返す人形みたいなもんだね」
「……一体、捕獲するにゃ?」
「そうだね。ちょっと最後列の女の人形を
捕まえてみて」
ペップが最後列へと走って行くと
白いローブを着た女性の姿をした人形を
脇に抱えて戻ってくる。
「中身がどんなになってるか、調べるにゃ?」
ぐったりと動かなくなった白いローブを着た
まるで人間のような人形をペップを寝かせながら言う。
「そうだね。脱がしてみようか」
「ゴルダブル様は、向こうを向いていてくださいね」
「えっ、いや、人形だろ……」
ファイナから有無を言わさずに反対を向かせられる。
「ふーむ……よくできてるにゃ……」
「肌も柔らかいね。しかし毛は一切ないか」
「本当に人形なのですか?」
「有機体で作られた人形だよ。作ったやつは
相当な技術者だと思う」
俺は三人の話を聞くしかない。
「よし、調べ終わったにゃ」
俺が振り向くとペップが服を着せ終わった人形を
横の墓石の壁に寄せて寝かせていた。
「この人形からは微かにエッチの波動を感じるにゃ。
作ったものはまだ悟りきってないにゃ」
「つまり、寂しさに負けて人形を人間そっくり作ったと?」
「そうだと思うにゃ」
「ふむー謎が深まりましたわね」
俺がしゃがんで人形の胸元を捲って見てみようとすると
すぐにペップが飛んできて
「エッチなのはいけないにゃあ……」
肩を掴まれ、耳元で怖い声で囁かれた。
俺たちは向こうをまだゆっくりと進んでいる
人形たちの葬儀の列を追ってみることにする。
四人で別れて、人形たちを別々の角度から観察する。
俺は最後尾で、背中を軽く叩いてみたり
呼びかけてみるが、反応は帰ってこない。
やはり用意された行動を繰り返しているだけのようだ。
一時間ほど、葬儀の列と並んで歩いていくと。
大量の墓石を組み合わせて作られたらしき
巨大な教会へとたどり着いた。
人形たちの列は、異様なその教会へと入っていき
そして聖堂の中で棺を下すと
その棺を丁寧で良く連携の取れた動きで
聖堂の奥の祭壇の前に安置して
そして棺の蓋を開ける。
中に入っていたものを全員で見た瞬間に
驚愕した。
そこには白髭で顔一面が覆われている。
白いローブ姿のマクネルファーが寝ていた。
「じ、じいさん、何してるにゃ!?」
マクネルファーは微かに瞳を開けると
「う、うーん……懐かしい声がするのう……」
とこちらを見てきて、ガバッと起き上がる。
しばらく全員で唖然として顔を見つめていると
マクネルファーがゆっくりと棺から起き上がり
「お前ら、終わりじゃ終わり。家に帰りなさい」
人形たちに向かって呼びかけた。
次の瞬間には、白いローブと黒いローブの人形たちは
後ろを向いて、キビキビした動きで聖堂から出て行った。
「久しぶりじゃのう……」
マクネルファーは涙目で語り掛けてくるが
まだ目の前で何が起こっているのか
俺たちには理解できていない。
聖堂の並べられた長椅子に並んで座って
マクネルファーから話を聞くことにする。