表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
149/200

あからさまな場所

小雨をテントでしのぎながら

俺は三人から中で介抱される。

「ねぇ、ゴルダブル、すんなり行かないって

 どういうこと?」

ピグナが尋ねてきて、俺は寝たまま

「……あんなにあからさまな場所は

 今まで、殆ど罠じゃなかったか?」

「うーん、言われてみればそうですわね……」

「確かににゃ……」

良かった三人とも気づいてくれたようだ。


「つまり他に行くべき場所があると?」

「そうじゃないかと思う」

「とは言えヒントは他にないにゃ」

「とりあえず階段の所まで行ってみようよ」

「そうですわね。登らずに様子を見ましょう」

二時間ほどして俺の体力が回復するのと同時に

四人で階段まで歩いていく。


さらに一時間ほどかけて

草原のど真ん中から、延々と空へと伸びている

階段の下へと歩いていった。

俺たちがたどり着くと階段が伸びている先の

空だけがパアッと晴れて、虹が幾重にもかかった。


「な……怪しすぎるだろ?」

「た、確かに最初のテンションのままだったら

 喜んで登ってたよこれ……」

「どう見ても罠ですわね」

「んーこれは、トレーナーパイセンに

 また頼んで試しに登ってもらうかにゃ?」

「いや、それは止めよう……俺の分もまだ終わってない……」

俺の担当はまだまだやる気のようである。

「大丈夫だにゃ。今度は私がトレーニングを引き受けるにゃ」

ペップはニカッと笑った。


ファイナの召喚魔法から出てきた

大柄なトレーナーパイセンは俺たちの頼みと

ペップがその代償としてトレーニングを引き受けると話すと

「よかたい。この階段に登ればいいんね?」

と尋ねてきたので、全員で頷いて

罠があるかもしれないと一応説明する。

「問題なか。この身体は仮初たい。行ってくるたい」

トレーニングパイセンは軽やかなステップで

天まで伸びる階段を走って登り始めた。


固唾を飲んでそれを見守っていると

まずは下から階段が崩れだした。

「やっぱり来たね……」

「たぶん序の口だにゃ……」

「だろうな……」

トレーナーパイセンは後ろを振り返らずに

階段を駆け上っていくので崩れには追い付かれそうにない。

さらに見上げていると

今度は登っていくトレーナーパイセンの左右から

強風が吹き始める。

「風で落とすのか……」

「あの高さから落下したら死にますわね……」

「登らないで良かったな……」


上手くバランスをとって階段を駆け上っていく

トレーナーパイセンが豆粒ほどの大きさになるまで

離れると、今度はいきなり空中に

真っ白な髭と横わけの真っ白な長髪をした

後光が差す神々しい老人の顔と上半身が

大写してで出てきて

「よくここまで、来ましたね。

 では、天国へとお連れしましょう」

と老人はその巨大な口を開けると

いきなりすさまじい勢いの炎を吐き出した。


米粒状のトレーナーパイセンはどうやら避けきったようで

そのままさらに駆け上っていく。

「悪意しかないな……」

「殺す。以外の意志を感じないにゃ……」

「あれ、天界とか冥界の生き物じゃないよ。

 ただの巨大な映像や音声と、空中召喚された炎の組み合わせだね」

さらに見上げている、今度はいきなり曇った空から

激しい雷が何本も降り注ぎ始めて

そして上の方の階段からいきなり

派手な音を立てて爆散しはじめる。


さすがにトレーナーパイセンも避けきれずに

爆風に巻き込まれて消えた。

そしてスッと俺たちの背後に再び姿を現す。

「身体を再構成したたい。あれ以上は進めんかったけど

 よかね?」

「十分だにゃ。じゃあ私がトレーニング

 するから好きなメニューを言ってくれにゃ」

ペップはさっそく片足立ちのスクワット言い渡されて

小雨が降る中、筋トレをしはじめた。


「で、どうする?」

「階段は完全に爆散して無くなったね」

「うーん、わたくしは、階段のさらに先に

 まっすぐ進むしかない気がしていますが……」

ファイナの勘にピグナが同意して

「今までも完全ノーヒントってわけじゃなかったからね。

 確かに外れの罠の先に、何かある可能性はあるね」

俺は空を見回してみる。さっきまで晴れていた一部も

すべて曇り空に戻り、小雨が延々と降りしきっている。

どの方角も代わり映えはしていない。

「空にはヒントはないな」

「じゃあ、ファイナちゃんの案で」

三人で頷いて、ペップがトレーニングを終わるのを待ち

また先へと進み始めた。


ペップは後ろからトレーナーパイセンに

指導されながら逆立ち歩きでついてくる。

彼女のことは放っておいてあげつつ

「そう言えば、じいさんはどこに行ったんだろうね」

「そうですわね。心配する必要はないでしょうけど」

「確かにな」

俺ももう気にしていない。

またどこかで何か良い目に遭っているだろう。


草原をまっすぐに歩き続けると

なんと、大きな街が見えてきた。

驚いて進んでいくと、それが街に見えた

まったく違うものであるのがわかる。

巨大な墓地である。家々に似せるように

色とりどりに塗られた巨大な墓石が

街のように大量に立ち並んでいる。

「異様な光景は慣れたと思ったけど……」

「そうだね……」

「進みましょう。今度は罠ではないと思いますわ」

逆立ち歩きしているペップと共に

墓石の街へと入っていく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ