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警告

光の玉が頭上を大量に飛んでいる中

飯を食べているが

もはや気が気ではない。

「お、襲ってはきませんの?」

「うん。ないない。実体はもってないから」

「とりあえず食べてしまおう」

ファイナと俺はすばやく食事をかき込んで

そして片づけを始めた。

ピグナはのん気に

「あー綺麗だなーいいなー」

などと見上げながら、ゆっくり食事している。


「な、なあ、霊魂が飛んでいるということは……」

シートに再び座ってピグナに尋ねると

「沢山死んだのかもね。ただ人かどうかは分からないよ。

 中身は動物や虫や、草木や花かもしれない」

「そ、そうか」

「お花の幽霊なんてありますの?」

「レアだけどあるね。意志を持った草木の

 主体が花だったら、枯れた後に

 その花が霊魂になるよ」

「なんか、物悲しいですわね」

「そうかな?死んじゃえばみんな一緒って

 あたしにとってはロマンティックだけどね」

死生観の話をしている二人を眺めていると

大木の幾つも開いたウロの中へと

光の玉が少しずつ吸い込まれていく。


「入っていってるな」

「そうだね。ペップちゃん起きたら尋ねてみよう」

ピグナがようやく食べ終わり片付けだすと

テントの中からペップがフラフラと出てくる。

「……酷い目にあったにゃ……」

「あ、ペップちゃん、木の穴の中どうだったの?」

「……なんか飲み物を」

ペップに水を渡すと、一気に飲み干して

「……旨いにゃ」

まだ光の玉がさ迷っている頭上を

ペップは見上げて

「真っ白な手に掴まれて、とても深いところへと

 延々と引き込まれてたにゃ……」

「それでそれで?」

ピグナが食いつくと

「……そこで激しいエッチの波動を感じたにゃ……」

「……その後は無意識で全力を出して脱出したと……?」

ペップは無言で頷く。


ピグナは残念そうに肩を落として

「あまり、目ぼしい情報はないっぽいね」

「すまんにゃ」

「いや、いいのですわ。お気になさらずに

 どうぞ、食べてください」

ファイナがペップ用に残していた食事を

勧める。皆で光の玉を見上げる。


食べているペップも交えて四人で話し合って

もう一度ウロの中へと入ることにした。

今度はファイナが魔界からツタの植物を召喚して

それをペップに巻き付けて

ウロの中へと単独で潜ってもらうことにする。


「問題は何か起こったときの対処法だよね……。

 危機が分かったら、引っ張り出すのは

 簡単だけど……」

「そうですわね。わたくしとピグナさんが

 脱いで、ゴルダブル様に思いっきりキスをして

 押し倒したら良いだけですわ!」

「エッチなのはいけにゃいけど、今は助かるにゃ……」


俺は黙って、何か起こればいいけど

何か起こったらペップが危ないよな……。

いや、しかし何か起これば、俺は得をする。

いやしかしペップが危険にさらされるのは……。

あああああああああああああああどうしたらいいんだああああ……。

堂々巡りで一人で平静を装いながらも悶絶していた。


そんな俺を置いて話は進んでいき

最終的には、ペップにトレーナーパイセンを一体

召喚してもらって、抱き着かせて

何かあったら、こちらへと移動してもらうことにした。

「そんなことできるにゃ?」

「うん。ペップちゃん以外の誰かが契約して

 あとはトレーナーパイセンに

 手伝ってもらったら、好きなだけ

 トレーニングさせてやるって誓うだけだね」

「……?どういうことですの?」

「トレーナーパイセンの幸せは召喚した人にトレーニング

 させることだから、好きなだけって

 誓えば、代わりに何でもやってくれると思うよ。

 それでね、彼らは一度召喚して、契約すると

 その契約が終了するまで

 冥界とこっちを自由に行き来できるから

 それを利用しようと思って」

「自由に移動できるのですの?」

「無害だからこそ、やれる技だよね。

 世界間の移動に殆どエネルギーを使わないからね」

「つまり、連絡役として、いいように使うってことだにゃ」

「そういうこと。で、トレーニングさせられる役は……」

三人が、まだ悩んで一人悶絶している俺を

一斉に見てくる。


三十分後。


「そうね。私が好きにあんたをトレーニングしていいんね?」

「うん……」

俺はファイナによって召喚された

一体の背の低いトレーナーパイセンと無茶な契約していた。

「代わりに私に抱き着いて、あのウロの中に一緒に潜るにゃ」

「わかったばい。何かあったら、このお兄ちゃんのところへ

 移動して教えるばい」

「頼みますわ」

「悪いね。じゃあ、ペップちゃんお願い」

大木の根元近くの地面に描かれた

発光している魔法陣の中心部からから

伸びている太い赤黒いツタを体中に

巻き付けたペップの背中にトレーナーパイセンが掴まる。


ペップは次の瞬間には大木にスルスルと登り始め

まだ光の玉が吸い込まれて行っている

一番下のウロの中へと迷わずに入っていった。

魔法陣の中心部から伸びている赤黒いツタは

伸び続けていく。

俺たちはしばらく固唾を飲んで見守っていたが

三十分くらいして、何も起こらないので

飽き始めて、さらに三十分してシートを敷いて

ダラダラしだして、その一時間後には

テントに入って、ファイナとピグナは仮眠をとっていた。

俺は眠くないので、ボケッと

ウロに光の玉を吸い込んでいく大木を見上げる。


さらに二時間ほど何も起こらなかった。

魔法陣から伸びているツタは延々と伸びていく。

相変わらず小雨が木々の葉を打つ音が聞こえていて

眠くなっていき、俺もそろそろ仮眠をとるかと

寝袋の用意をしようとすると、いきなり横に

バムが立っていた。


「おお、なんかあった?」

もうバムがいきなり現れるのも慣れたものである。

「……あまり、良い判断ではないと思います」

困った顔でバムは言ってくる。

「詳しく聞かせてもらえる?」

「ウロの中へと入るのは、よくありません。

 この大木は違う目的のためにあります」

バムはそれだけ言うと、フッと消えた。


「……」

俺はすぐにテントの中で寝ている二人を

起こして、今バムから警告されたことを説明した。

「……今すぐ、ペップちゃんを戻さないと」

「そうですわね……」

二人はまったく躊躇なく脱ぎ始めて

俺をシートの上に押し倒した。

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