光の玉
「ど、どうする?」
「いや、どうするって、ペップを助けに行くしかないだろ……」
「で、でもさ、よく考えたらね……」
ピグナはいきなり俺の身体を掴んできた。
「い、今なら、なんでもできるよね?」
要するに注意するペップが居なくなって
キスでも男女の営みでも、なんでもし放題と言いたいらしい。
さすが悪魔、自身の快楽に忠実だ。
呆れながら
「すぐに探しに……い、いやちょっと待てよ……」
俺は名案を思い付いてしまう。
「な、なあ、もしかしてここで
ペップがブチ切れるようなことをすれば……」
「そ、そうか!向こうから戻ってくるかもしれない」
どこにでも現れるのがペップである。
ピグナはすぐにファイナを揺り起こして
寝ぼけ眼の彼女に状況を説明する。
「おお……そ、それは一石二鳥ですわね!」
さっきまで完全にやる気が無かった
ファイナが頬を赤らめてスッと立ち上がった。
「で、ど、どうすれば……」
「ペップちゃんが激怒しそうなことを
全部やればいいんだよ!」
ピグナは服を脱ぎだした。ファイナも負けじと
脱ぎ捨て始める。
お、おおおお……まさか、こんな陰気なところで
いよいよ、来たのか?
フィーバーが、人生の絶頂の瞬間が。
ピグナはどうでもいいので、
浮気を脱いでいるファイナをジッと見ていると
「は、恥ずかしいですわ……」
身体を背けた
「ちょ、ちょっとゴルダブルこっち見てよ!」
ピグナが俺の顔を下着姿の自分に向けてくる。
お、おおおお……なんかいい!
なんかいいぞおおおおおお!
ピグナには興味ないけど、いい!
女子と女子のような何かが俺のために脱いでいる!
よ、よし、相手にしてやろう!
ここは俺の全力をかけて!
恥ずかし気に近寄ってきたファイナとピグナを
両腕で抱き寄せて
完全にやる気になったのと同じ瞬間に
大木のウロというウロから黄金の光が漏れ出てきて
同時に大地を揺らすような低い音で
「エッチなのはいけないにゃあ……」
恐ろしい響きの声が聞こえてきた。
「まだ何もしていませんのに!?」
「ま、まさかもう、帰ってきたの!?」
ピグナが俺の腕の中で頭上を見あげると
先ほどペップが連れ去られた一番下のウロの中から
光り輝く金色の透明な龍が出てくる。
透明な輝く龍は何十メートルもあるような身体を
窮屈そうにウロの中から出しながら
厳めしく横に長い顔についた
燃えるような真っ赤な両眼で睨みつけながら
「エッチなのは貴様らかにゃ……?」
抱き合っている俺たちに問いかけてくる。
全員で必死に横に首を振って
二人はすばやく服を着始める。
黄金の龍はしばらく、俺たちの様子を
いかめしい顔で見つめ続けると
急にふっと消えた。
同時にペップがゆっくりと下へと落ちてくる。
ペップを俺が受け止めて
しばらく唖然と固まる。
服を着終えた二人も近寄ってきて
「す、すごいね……ペップちゃんの
武術の才能の片鱗を見たよ。
あれたぶん、闘気で作った龍でしょ……」
「わたくしに並ぶくらいの攻撃の天才かもしれませんわ……」
「と、とにかく、ペップは取り戻した。
ちょっとここで休憩して、作戦を練り直そう」
テントを設営して
その中でペップを寝かし
大木のふもとで昼食を作り始める。
「ペップが起きたら、ウロの内部のことが訊けるな」
「そうだね。あーでも惜しかったなぁ」
「まっことそうですわ!」
二人が頷き合っていると、テントの中から
一瞬、凄まじい気配が飛んできて
全員で固まる。
ピグナが恐る恐るテントの入り口を開けて
「起きてないよ……無意識であれか……」
料理が出来たので、モソモソと三人で
シートの上に座り、黙って食べていると
俺の目の前に、フッと光の玉が横切る。
「……?」
見間違いか?と思うと
「今の見ましたか?」
ピグナが俺とピグナを見回してくる。
ピグナは少し考えてから
「霊魂とかの類だね。冥界にはよく飛んでるよ」
気にしない顔でまた食べ始めた。
「れ、霊魂……」
「つまり幽霊ですの……?」
ピグナはめんどくさそうに頷いてそして
「なんで驚いてるの?さっきのペップちゃんのが
よっぽど怖いよ?」
不思議そうに俺たちを見てくる。
辺りにはさらに光の玉が増え始めた。