陰気な場所
小雨の中立ち上がる。
わりと全身ずぶ濡れである。
かなりの量の雨を浴びていたようだ。
「青空から落ちてて、途中で気絶したみたいなんだけど
その間に何が起こってたか、見てた人居る?」
仲間たちに尋ねてみると
「私は着地の瞬間まで、意識を保ってたにゃ」
「あたしとファイナちゃんは、寝てたみたい。
ペップちゃんに起こされた」
「途中まで青空で、急に空の下一面が曇り空になって
それから、雨雲の中を落ちて行って
着地する寸前に、ゆっくりになったにゃ。
大地に降りてからは、バラバラに落ちたみんなを
こうして集めてまわったにゃよ?」
「ありがたい。恩に着る」
感謝すると、ペップはニカッと笑った。
「しかし陰気な場所ですわ……」
「そうだね。ここが次のフロアだと思うんだけど……」
確かに足元は黒く湿っていて
頭上は暗雲が垂れ込め、そして小雨が降っている。
俺はペップから折りたたみ傘を渡してもらって
それを差す。
「どこかで着替えたいんだけど……」
「あっちに森がありますわね。」
ファイナが真黒な木々が生える
怪しげな森を指さした。
とりあえず、小雨を遮れそうなので
森の中へと非難する。
少し離れた所で服を脱いで
着替えていると、目の前にスッと
光の玉が通り過ぎていく。
気のせいかなと着替え終わって
雨に濡れた服を絞ったりして
皆のところへと戻る。
ペップが
テントを既に張っていて
ファイナとピグナは食事を作っていた。
いつものことだが、しっかり二種類である。
ファイナ用の小鍋と、俺たち用の鍋を
両手から魔法の炎を出しているファイナが
それぞれ沸かしている。
俺は近くの枝に服を干してから
料理に加わる。
完成して、四人で
湿っぽい土の上に水をはじく油が塗られた
皮シートを敷いて
食べ始めると
「今日は休む?」
とピグナが言い出す。
「マクネルファーは……?」
「あのじいさん強運だにゃ。生きてるにゃ」
「そうですわね。どこかで楽しんでる気がしますわ」
「気にしないでいいよ。大丈夫だって」
「……そうだろうか」
心配しているのは俺だけのようなので
とりあえず、飯を食べて
皆で、休むことにする。
やっぱりテントの外だった。
何がって寝る場所がである。
寝袋をそのまま敷くと
湿りそうなので、下に皮シートを敷いて
そして包んで、中へと入る。
木々の下なので濡れはしないが
小雨が、葉っぱをポツポツと打つ音が
延々と続く。
寝られない。
寝袋の中から目を開けて
俺たちを覆う木々を眺めていると
フッと、光の玉がまた過ぎった。
眼の調子が悪いのかなと瞬きしていると
また光の玉が寝ている俺の上を
通り過ぎていき、さらにその数が増えていく。
数十の白い光の玉に俺の寝袋は囲まれて
恐怖心とパニックが極限に達し
そのまま俺は気を失った。