破裂
意識が戻って目を開けると
紫の液体まみれになったピグナが
「よ、よかった。目を覚まさないかと思った」
と俺を抱きしめてくる。
グチョリとした感触に抱きしめられて
液体まみれに俺もなりながら
辺りを見回すと
呆然としているマクネルファーや
ファイナ、そしてペップも
そして透明な床も荷物も
調理器具もすべて、紫色に染まっていた。
巨竜の檻はどうなったんだと
と首を回してみると
ぐちゃぐちゃに折れ曲がっていて
そして全て紫色に染まっていた。
「……なにこれ……」
ピグナは何か言おうとして、悲しそうな顔をする。
「詳しくはマクネルファーじいさんに……」
そう言って、俺から離れたピグナの背中を見ながら
立ち上がって、ゆっくりとマクネルファーに近づく。
「何が起こったんだ?」
「お、おお。起きたのか……最悪の事態は
避けられたようじゃな」
首をかしげていると
マクネルファーは説明し始めた。
俺が気を失って半日経っても起きないので
あとで対処しようということにして
まずは魔界から召喚した大量のヘルファイアクラッカーを
出来上がった野菜炒めに混ぜ
そして、姿を現した巨竜に食べさせたらしい。
そこまでは良かったのだが
食べた瞬間に巨竜が口から火を噴きだして
そしてその大きな頭が
風船が割れたような音を出して紫色の体液をまき散らしながら
はじけ飛んだらしい。
頭を失った体は
まるで風船がしぼむように、シュルシュルと
小さくなって下へと落ちて行ったそうだ。
そこでようやく俺が起きたのが今らしい。
「つまり、ヘルファイアクラッカーのせいで
巨竜は割れ飛んだのか?」
「そういうことになるはずじゃが
何かおかしいんじゃよ。まるで
張りぼての様でのう……これも体液のはずじゃが
生臭さがまったくせんし……」
マクネルファーは腕を組んで考え込み始めた。
その後
とりあえず、俺たちは一度
廃墟の階へと戻ろうということになり
紫色に染まった荷物をまとめて
トボトボと階段を上がり
調理場へと戻っていく。
食糧庫の瓶詰の水を集めて
まずは身体を洗うことにする。
「エッチなのはいけないにゃ。
つまり、男女で別れるにゃ!」
ペップがファイナとピグナを連れて
水の瓶を抱え、外へと出て行った。
俺とマクネルファーは苦笑いしながら
それぞれ身体を洗う。
「しかし、これからどうするんかのう」
後ろを向きながらマクネルファーが言ってくる。
「……もう一回、下の階を探索するしかない気がする」
巨竜が破裂したということは、
恐らくやり方が間違っていたのだろう。
「じゃなあ……食料の心配だけはないのが
救いかもしれんな」
「確かに」
身体を洗い終わって、新しい下着を着て
さらに紫色に染まった荷物から
着替えを出して取り出していると
「えっ、エッチなのはしていいにゃあ……」
明らかに様子がおかしい何も身に着けていないペップが
真っ赤に発情した顔で横からタックルしてきて
俺を押し倒してきた。
「はっ!?えっ?」
訳が分からないまま、押し倒されて
慌てていると、ペップの頭がガクンとうな垂れて
そのまま気絶する。
「大丈夫ですか!?」
「水だと思ってた瓶の中に強いお酒が混ざってたみたいで……
ペップちゃん、飲んじゃって」
タオルを体に巻いたファイナとピグナが
必死な顔でペップを俺から引き離して、
そしてペップを調理室の外へと引きずっていった。
「ふーむ青春じゃのう」
「……いや、青春なんだろうか」
「ドタバタとお色気は青春じゃろう?」
「……」
俺は黙って服を着る。
明日からまた探索のし直しである。