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甘いもの

菓子パンを作りたいと告げると

バムは両手を掲げて、何かを呟く。

すると周囲の調理器具がすべて

新品のものへと入れ替わり

冷蔵庫や、棚も大量に出現した。


「で、では……あとはよろしくお願いします。

 できたら来ますので……」


バムは逃げるように消えた。

「むーもうちょっとで、バムのちゃんの身体を使って

 エッチとエッチじゃない境目が

 見えるはずだったのに、逃げられたにゃ……」

「惜しかったですわね。

 もう少しで我らに極意が降りてきたところでしたのに」

「もういいから、手伝ってくれ……」

全員で菓子パンを作るための準備をし始める。


棚や冷蔵庫から探し出した

小麦粉とドライイーストと卵、砂糖などを

ピグナの指示で混ぜ合わせていく。

隣の台ではマクネルファーとペップが

生クリームを作り始めた。


そんなこんなでかなりの時間かけて

一から、甘くて丸いパンを作って、それに

冷蔵庫から取り出した甘い果物を切って

皆であーだこーだ言って

味が調和する分量を

生クリームを塗ったパンに挟んだ。

試食すると甘さが口に広がって旨い。

ピグナは難しい顔で

「味覚の絶頂とまではいかないだろうけど良い感じだね

 とりあえず、これでバムちゃんの反応を見ようか」

皿にそのパンを置いて

みんなで四方に向けて

バムに呼びかけると


今度はTシャツとショートパンツ姿の

バムが出てきた。すぐにペップと

ファイナが近寄って

「ちがうにゃ。そういうんじゃないにゃ。

 もっとこう、エッチなのに全然エッチじゃない

 ギリギリのラインを求めてるにゃ」

「そうですわよ!バムさんは才能があるのです!

 もっとギリギリを攻めてください!」

「……」

バムは二人を見ないようにして

テーブルの皿の上に置かれた

パンをとって幸せそうに頬張った。


そしてしばらく咀嚼して飲み込んで

「……方向性はいいと思います」

と言うと残りのパンを手に持ったままスッと消えた。

「逃げられたにゃ……」

「逃げられましたわね……」

肩を落とすペップとファイナは放っておいて

残り三人で今の反応について話し合う。


「残り持って帰っただろ?

 今頃、食べてるよな?」

「つまり、気に入ったということじゃな?」

「方向性はいいとも言ってたよね。

 甘いもの路線で攻めれば

 いけるってことだね」

方針が固まったので

真面目にどうすればバムを

味覚の絶頂とやらに導けるのか

五人で話し合い始めようとすると

「つまり、エッチにゃのはいけにゃい……ぐー」

いきなりペップが座ったまま寝た。


ピグナが気付いた顔をして

「あ、そうか、外の時間だと

 もうとっくに深夜だね」

「寝るか……」

「そうじゃな。睡眠不足は良いアイデアの敵じゃぞ」

調理場の中にテントを張って

その中に四人と、そしていつもと変わらずに

俺一人が寝袋で外で寝ることになる。


蚊はさすがに居ないので寝られそうだが

いつまでも沈まない夕日が

なんとなく気になって寝られない。

ちょっと気持ちを落ち着けようと

一度寝袋から出て、ストレッチなどをしていると


「ゴルダブル様」

バムの声が後ろからして振り返る。

先ほどと同じ格好をしたバムが居た。

「あの、本気でこのお題をするつもりですか?」

困った顔で言ってくるバムに

「どういうことだ?」

と尋ねると

「私は美味しいものが食べられて良いのですが

 取り組むには、時間がかかりすぎませんか?

 床下のバリアを私が解いても……」

いきなり言ってきた。


しばらく本気で考えてから

「それしか手が無いならいいけど

 一応クリアできるようになってるんだろ?

 なら、やり通すよ」

できるだけ、ズルはしないでいきたい。

それで今までも結果的に助けられてきた。


バムは真面目な顔で頷くと消えた。

バムが消えた後に

なんとなく眠気が襲ってきて

すぐに寝袋に入ると、深く眠ってしまえた。

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