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塔内へ

ペップに背負われたまま、皆と嵐が渦巻く塔へと急ぐ。

数万人たちの兵士たちは後方で

さらに大混乱を極めている。

ピグナが走りながら

「そろそろ嵐に近づくよ!ファイナちゃん!」

「お任せください!予備詠唱しておきました!

 冥界の水よ!かのものをマクネルファーを変質せよ!

 ヴァイ・ウォータヌン・ヴァ!」

ファイナが隣で走っているマクネルファーを指さすと

どす黒い水の塊が彼を水浸しにした。


「うわっ、きたなっ……くさっ……なんじゃこりゃ」

汚くなった以外に特に様子の変わらない

マクネルファーにピグナが

「それで嵐から飛ばされないよ!

 じいさんの身体を一時的に金属化して重くしたんだ」

「いま、き、金属なのか?わしが?」

「とにかく走って!」


俺たちは嵐の近くまで来て

一度立ち止まる。あと百メートルも進めば

視界の遮られた風に吹かれた猛烈な雨、そして

その中をかなりの頻度で縦に縦断していく雷の中である。

「よし、じいさんはあたしと手を繋いでよ。

 でも、重くてあたしじゃ引っ張っていけないから

 とにかく自分で歩いてね?あたしは進む方向を

 じいさんに手を引いて教えるだけだから」


「わたくしたちは気にせずにまっすぐ

 いけばいいのですね?」

「うん。塔を登る資格のあるあたしたちは

 今、嵐を素通りできるはずだよ」

「いくにゃ!ゴルダブルは私が背負ったままでいいにゃ!」

まずはファイナが走って嵐の中に突入していって

そしてすぐに無傷で戻ってきた。


「だいじょうぶでしたわ!行きましょう皆さん!」

「じゃあ、マクネルファー行くよ!」

「お、おう……」

ピグナは手を引いて、マクネルファーと共に

嵐の中へと入っていった。

俺を背負ったペップとさらにファイナも

再び嵐の中へと進んでいく。


嵐の中へと入ってみて驚いた。

吹きすさぶ風も雨も、雷さえも俺たちを避けている。

そしてさらにピグナに手を繋がれている

マクネルファーを見て驚く。

既に服が全て吹き飛んでいる。

「う、うおおおお……なんじゃこりあああああ!!!!」

身体は確かに重いらしく、風から飛ばされることだけはないようだが

一人だけ、雨や風に徹底的に痛めつけられている

ほぼ裸のマクネルファーを見て

「じいさんの枯れた尻肉と背中を見ながら

 ワールド・イート・タワーに行くことになるとはにゃ……」

「ゴルダブル様だったらよかったのに……」

俺はほぼ全裸で行くのはごめんである。

「ファイナちゃん……エッチなのはいけないにゃ……」

ペップは注意する気力も失せているようだ。


しばらく進むと、塔の周囲にある大穴に差し掛かり

そこにかけられた綺麗な銀色の金属製の幅の広い橋を

その数百メートル先にある塔の入り口らしき場所を

目指して渡り始める。

「あああああああああああああ!!!!」

一人だけ嵐の影響を全力で受けて叫んでいる

全裸のマクネルファーがシュールだ。

既に服は跡形もなく飛ばされてしまった。

ピグナは振り返らずに、手を引いている。


「しかし、じいさんのあの様子を見ると

 キーも魔法もなくて嵐に入ったら、吹き飛ばされて

 死ぬだけみたいだにゃ」

「そうですわね。マクネルファーさんは大丈夫でしょうか?」

「じいさん悪運だけは強いからにゃ。心配いらないにゃ」

俺はペップの背中で聞くだけである。


マクネルファー以外は何事も無く

橋を渡り切り、そして俺たちは遥か上へと伸びる

入口へとたどり着いた。

十メートルほどある、天使や悪魔の争っている模様の彫られた

真黒な門は閉まっている。

「あああああああああああああ!!!!!」

全裸でひたすら耐えているマクネルファーが

このままだと死にそうなので、俺はフラフラと

ペップの背中から降りて

「ピグナ、どうしたらいいんだ?」

尋ねると

「えっとキーを鍵穴に入れて回せば開くはずなんだけど

 肝心な鍵穴がないんだよ……おっかしいなぁ」


「ああああああああああああああああああうわああああ!!!」

全裸のマクネルファーがひたすら叫んでいる中を

全員で必死に鍵穴を探し回る。

無い。やばい。急がないという焦りだけが

ひたすら募っていき、全員の焦燥感が頂点に達したころ


「……はい、これマクネルファーさんの分のカギです」


仕方なさそうなバムの声がして

スッと俺の左手にカギが手渡される。

後ろを振り向くと誰も居なかった。

同時に、門に小さな鍵穴がいくつも現れ始める。

わけがわからないが、とにかく回すしかなさそうなので

それぞれ持っている鍵を鍵穴に居れて

何度も回すと、門が内側へとゆっくり開き始めた。


全員で塔の内部へと駆けこんで、マクネルファーがその場に

うつぶせに倒れ込む。同時に背後では

門が静かに閉まり始めた。

「これで後戻りできないよ」

ピグナがそう言いながら、荷物の中からタオルを出して

マクネルファーの身体を拭き始める。

俺たちもマクネルファーの介抱を始めた。

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